流行語で読み取る激変の中国(3)

【大紀元日本8月26日】

2、原語=很黄、很暴力。

和訳=とてもエッチ暴力的だ。

中国中央テレビ局(CCTV)は、07年12月27日、ニュース番組で、悪質な動画サイトは取り締まるべきだとして、被害者の北京市内の13歳の少女、張殊凡さんへのインタビューが流された。張さんは、「この間、資料を検索していたら、ある画面が不意に現れた。とてもエッチで暴力的だった。私は急いでサイトを閉じた…」と語った。

報道後、張さんの「とてもエッチで暴力的だ」は、ネットで迅速に広がり、一躍「08年の十大流行語」に選ばれた。09年8月24日現在、グーグルで「很黄、很暴力」を検索してみたら、約459万件が表示された。

諧謔で風刺的なこのセリフを踏襲し、「很~很~」(とても~とても~)という文型が流行り、同文型の新表現がどんどん派生してきた。

13歳なのに、おとなっぽく、専門的な社会用語を口にするのは、いかにも「ぶりっ子」であり、嘘つきと思われる。『月光ブログ』(08・1・6 )の書き込みでは、少女の張さんを容赦なく非難。「第一に、子供として嘘をついてはならない」、「第二に、人間としてCCTVになり過ぎてはならない」。「CCTVになる」とは、中共のために嘘をついて人を騙すことである。

こういった背景に、ネットでは「嘘つき」の張さんへのバッシングが殺到。書き込みだけでなく、イラストも急増した。おまけに、「人肉捜査」(身元の究明)も大々的に繰り広げられ、住所、学校、出生病院に至るまで、詳細なプライバシー情報が公開されていった。

一方、CCTVや「人民日報」と一線を画し、中国マスコミの良心とも言われる「南方都市新聞」は08年1月10日、「時事点評」欄で次のように指摘している。「善し悪しは明確だ。CCTVは未成年者を利用して押しつけ道徳批判のお膳立てをした。これはきわめて理不尽なことで、(張さんの話)を歪曲したおそれもあるし、未成年者の権益を無視した責任もある。しかし、ネット市民たちは暴力排斥の対象をはき違えて、憤りを被害者の少女に噴出させてしまった。…正義の立場は失われ、ネット上のバッシングとなってしまった。これにひきかえ、未成年者へのインタビューでCCTVの行った暴力は、かえって弱められた」。この評は鋭く的を射たものだと、支持者は圧倒的に多い。

これにひきかえ、「人民日報」の傘下にある「人民網」は、「ネットを適度に監視、管理することは必須不可欠」と言って、この乱れた反応に乗じて従来の主旨を仄めかした。しかし、これらのメディアの唱えた「ネット浄化」云々は、決して張さんのような子供たちのためではない、その立場は最初から明らかである。

筆者は、張さんのインタビュー動画をネットで検索、検証してみた。面白いことに、一般に言及されていない問題点を発見した。

張さんは、「この間、資料を検索していたら、ある画面が不意に現れた。」と「とてもエッチで暴力的だった。私は急いでサイトを閉じた…」との間に瞬時の躊躇がみられ、しかも「その後」という文句が挟まれているのである。すなわち、話の文脈や論理から、「その後」→「とてもエッチで暴力的」と続くのはきわめて不自然であり、むしろ「とてもエッチで暴力的」を省いて「その後」→「私は急いでサイトを閉じた…」の方が適切で順当である。換言すれば、一瞬の躊躇と不自然なつながりの二点から判断すれば、この「とてもエッチで暴力的」という文句は、自分の言葉というより大人から押し付けられた「やらせ」の可能性が大であると言える。

しかし、「とてもエッチで暴力的」は誰が言ったかは、もう問題ではない。この言葉が流行語の祭壇に持ち上げられたのは、中国の現状をうまく表現し、エッチと暴力の源も示唆されているからである。