焦点:空前の「LNGブーム」到来か シェルの投資決定が号砲

[ロンドン 2日 ロイター] – 英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル<RDSa.AS>がカナダでの大規模液化天然ガス(LNG)プロジェクトの正式決定を発表した。LNG業界はシェルの巨額投資決定で開発への自信を深めており、今後大型プロジェクト向けの投資が相次いで決まる見通しだ。

シェルが主導する「LNGカナダ」は総開発費140億ドルで、2025年に輸出を開始する予定。またカタールの国営石油会社カタール・ペトロリアムも先週、LNG生産能力の増強計画を発表した。

昨年の世界のLNG生産量は2億9000万トン。今回発表された2件のプロジェクトで生産量は年3700万トン増える計算だが、これはLNG開発プロジェクト承認ラッシュのほんの手始めにすぎない。

コンサルタント会社ウッド・マッケンジーの北米ガス担当部長のデュレス・ワン氏は「LNGプロジェクトの最終投資決定(FID)は来年が過去最高の件数になる」と予測する。

LNGは2015─17年にかけて価格が下がったが、需要が急速に伸びる一方で新規の輸出プロジェクトが不足し、2020年以降は世界的に供給不足が発生するとの懸念が以前から根強かった。

LNGカナダなどいくつかのプロジェクトは何年も前から検討段階に上りながら、棚上げされてきた。

しかしLNGは中国が石炭からの切り替えを進めた影響で、昨年冬に価格が上昇し始め、その後は4年ぶりの水準に高止まりしている。

シェルのジェシカ・ウール最高財務責任者(CFO)は2日、記者団に対して「需要の伸び具合と今後の供給見通しに目を向ければ、投資決定済みもしくは建設中のプロジェクトは2023─24年の需要を満たすのに十分ではない」と話した。

シェルがこうした市況の変化にお墨付きを与えたことで、市場には楽観ムードが広まっており、来年末までに投資決定されるプロジェクトの生産能力は年1億7500万トンに達する見通しだ。こうしたプロジェクトの大半は2024年に生産を開始する見込み。

さらに米国では年5100万トン分のプロジェクトが既に投資決定済みで、2021年末までに稼働するとみられる。

LNGの需要は予想にばらつきがあるが、国際エネルギー機関(IEA)は2023年までに年3億6000万トン前後に急増すると予測。ウッド・マッケンジーは年4億5000万トンとみている。

バーンスタインのアナリストチームは顧客向けノートで「将来の需要を満たすには2025年までに年2億トン分のプロジェクトが決まる必要がある。LNGの生産能力全体は1962年から足踏み状態が続いてきたが、42%急増して空前のブームを迎える」と予想。「ついに大規模なLNG投資の波が押し寄せる」と見通した。

(Sabina Zawadzki記者)

 10月2日、英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルがカナダでの大規模液化天然ガス(LNG)プロジェクトの正式決定を発表したことで、今後大型プロジェクト向け投資が相次いで決まる見通しだ。写真は2017年12月、中国河北省のLNG貯蔵設備(2018年 ロイター/Thomas Peter)
関連記事
先週、ショルツ首相が中国訪問を行った直後の4月22日が、ドイツの検察当局3名の市民を逮捕した。
4月22日、アメリカとフィリピンは合同軍事演習「バリカタン(肩を並べる)24」を開始した。演習は、台湾海峡の近くで初めて行われ、中国の脅威に対する明確な対抗措置と位置づけられている。これまでにない大規模なものとなった。
自民党の麻生太郎副総裁が2024年4月23日にニューヨークのトランプタワーでトランプ前米大統領と約1時間にわたる会談を行った。この会談は、トランプ氏が再選された場合に備え、両者の良好な関係構築を図るものとみられる。
北朝鮮のアニメスタジオが、制裁下にもかかわらず日本や米国の人気アニメーション制作に関与していることが、朝鮮半島の情報分析を行うシンクタンク「38ノース」が22日発表した報告で明らかになった。日本政府は先月、北朝鮮のIT技術者の関与について警告を発したばかり。北朝鮮が制裁を逃れ、日本市場に関与している実態が浮き彫りとなった。
オーストラリア政府が2030年までに再生可能エネルギーを82%まで増やす目標を達成するため、過去最大規模の再生可能エネルギー入札が発表された。全国電力供給網(NEM)向けに6ギガワット(GW)の新規再生可能エネルギー・プロジェクトが展開され、各州で多くの再生可能エネルギープロジェクトが進む予定だ。 西オーストラリア州では、500メガワットの再生可能エネルギー貯蔵発電の入札が始まり、国家エネルギー市場で注目を集めている。