【医学古今】

目の病気に肝を治す

現代医学の理論では、臓には繋がりがあると考えられていません。一方、漢方医学の理論では、目は肝に属する器官であり、目の状態は肝臓と密接に関係していると考えられています。漢方医学の古典『黄帝内経』には「肝受血而能視」という論説があり、つまり、肝臓に十分な血液を蓄えれば、目の視力が維持できるという意味です。逆に言えば、もし肝臓の血液の蓄えが不十分であれば、視力に問題が生じやすくなります。

 故に、目の病気を治療する場合、常に肝臓の情況を考えて行います。例えば、夜盲症は肝血虚による症状だと考えられ、肝臓の血液を補うために、動物の肝臓を食べて治療することができます。古代の書物にある「羊肝丸」とは、羊の肝臓を主薬として他の生薬を合わせて肝臓の機能を調節し、緑内障、白内障、目の乾燥やカスミなどさまざまな目の病気を治療する処方です。現在、中国では「明目羊肝丸」という薬がまだ使用されています。

 鍼灸療法も同じ原理で、目の症状に対してはよく肝に関係するツボを取って治療します。例えば、背中の肝兪(かんゆ)や足背部の太衝(たいしょう・肝経のツボ)などのツボを使って、眼精疲労、急性結膜炎、麦粒腫、カスミ目などを治療することができます。

(漢方医師・甄 立学)