全粒粉は、野菜や果物を食べることよりも大腸がん予防に効果的であることが研究で明らかにされています。(Shutterstock)

野菜だけじゃなかった!?医師が明かす大腸がん予防で大切なものとは(1)

野菜や果物を食べ、食物繊維を補うことで、大腸がんを予防することができると昔から言われてきました。しかし、全粒粉を食べることは、野菜や果物よりもより大腸がんを予防する効果があると考えられています。

食物繊維には2種類あり、

大腸がんを予防する効果がある

大腸がんは、他のがんに比べて非常に発症率が高いがんで、2020年には、新規がん患者数の中で3番目に多く、がんによる死亡原因の2位となっています。

食事でがんの主な原因となるのは、果物や野菜摂取量の不足、油分やカロリーの高いもの、赤身肉や加工肉、アルコール飲料の摂りすぎなどです。食生活の乱れは、世界の大腸がん発生率に30%から50%の影響を与えると言われています。特に、食物繊維の摂取量が1日10g未満と少ないと、大腸がんのリスクが18%上昇すると言われています。

食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられ、それぞれ働きが異なります。不溶性食物繊維は、糞便の量を増やし、消化後に消費・生成される発がん物質や毒素と結合し、糞便の腸内滞在時間を短くし、発がん物質と腸内環境の接触を減少させます。

水溶性食物繊維は、腸内細菌によって発酵・分解され、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)に変化することがあります。SCFAは、免疫力の促進、炎症性疾患の予防、腸管バリア機能の向上などが知られています。中でも酪酸は抗腫瘍、抗炎症作用があり、腸管上皮細胞のエネルギー源として利用できます。

2021年のメタ分析では、どちらのタイプの食物繊維も大腸がんの予防に有効であり、ほぼ同等の予防効果があることがわかりました。

実は、植物性食品には、割合の差はありますが、両方の食物繊維が含まれています。したがって、野菜や果物、全粒粉、豆類、ナッツ類を摂取することで、この2つの腸内環境を守る栄養素を摂取することができるのです。

植物性食品には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれています。

(Shutterstock)

大腸がんの予防には、

野菜や果物よりも全粒粉の方が良いのか

食物繊維を含む食品の中で、大腸がんの予防に最も効果的なものはどれでしょうか。国立がん研究センターの大規模な研究によると、大腸がん、特に大腸の最後の部分である直腸の予防には、全粒穀物と穀物繊維が最も効果的であることがわかりました。

2020年に『アメリカ臨床栄養学雑誌』(The American Journal of Clinical Nutrition)に掲載された研究では、全粒粉の摂取量が最も多い人は、最も少ない人に比べて大腸がんのリスクが16%低いことが示されました。

さらに、全粒粉の摂取は、大腸がんのすべての部位(近位結腸、遠位結腸、直腸)のリスクを24%減少させることと関連していました。

また、シリアルに含まれる食物繊維は、大腸がんのリスクを11%減少させる効果があり、遠位結腸と直腸のがん予防に、より効果的です。

(つづく)

(翻訳編集:香原咲)

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