米モンタナ州知事は17日、TikTok禁止法案に署名した (Olivier Douliery/AFP via Getty Images)

米モンタナ州でTikTok禁止法成立「中国共産党から州民を守る」

 米モンタナ州のジアンフォルテ知事は17日、中国動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の州内での提供を完全に禁止する法案に署名した。2024年1月1日に施行される。TikTok側は訴訟を示唆しており法廷闘争に発展する可能性がある。

ジアンフォルテ知事は声明で「モンタナ州の個人情報が中国共産党に収集されないように保護するため」と意義を強調した。

州法は中国との情報共有のほか、有害コンテンツを問題視している。移動中の自動車に物体を投げる、過剰な薬物摂取、酸素欠乏に陥らせ意識を失う、鶏肉を洗浄剤で調理するといった危険な行為が「おすすめ」として発信されている。

アップルやグーグルなどアプリストアを運営する企業から同州でダウンロードできないよう制限する。違反した場合1日当たり1万ドルの罰金を科す権限を州司法省に与える。個人ユーザーは罰則を受けることはない。

1億5000万人以上の米国人ユーザーを抱えるTikTokには重大なセキュリティ上のリスクがあるとして、複数の州は公的機関所有の機器での使用を禁止している。モンタナ州が成立させた禁止措置はこれを個人端末にまで拡大したもの。州内での提供や利用を全面的に禁止する初の州となった。

TikTok禁止法を作成したモンタナ州のオースティン・クヌッセン司法長官は4月、ツイッターで「モンタナ州の人々のプライバシーを確実に守るための重要なステップ」と述べた。

訴訟の可能性

いっぽう、TikTokはモンタナ州を訴える構えだ。

法案が州議会を通過した際、TikTokの広報担当者ブルーク・オーバーウェッター氏は、法案が成立すれば、合憲性をめぐって法的措置に出ると発言。17日には「モンタナ州の憲法修正第1条の権利を侵害する法案が成立した。ユーザーはTikTokを使い続けられるべきだ」と法廷闘争を示唆した。

米自由人権協会も、言論の自由侵害の疑いで訴訟を起こす意向を示している。

「この禁止令により、ジアンフォルテ知事とモンタナ州議会は、反中国感情の名の下に、アプリを使って自己表現、情報収集、中小企業の経営を行う数十万人のモンタナ州民の言論の自由を踏みにじった」と 同協会のポリシーディレクターのメドラノ氏は声明を発表した。

TikTokは、テキサス州に本社を置くハイテク企業オラクルが運営する米国のサーバーに、米国のユーザーデータを保存するための別法人を作る「プロジェクト・テキサス」という構想に取り組んでいる。

国家安全保障上の懸念

TikTokは、北京に本社を置く中国企業バイトダンスが所有・運営しているが、2020年に本社をシンガポールに移転した。

連邦捜査局(FBI)と連邦通信委員会は2022年、TikTokが米国の国家安全保障に与える脅威の可能性について警告を発し、アプリが取得した閲覧履歴や位置情報などのユーザーデータが、中国共産党と共有されている可能性があると指摘した。

2022年後半にはバイトダンスの社員がTikTokのユーザーデータへのアクセス権を利用して、米国人ジャーナリストを不正に追跡していたとの報道があり、懸念が高まった。

トランプ前大統領は2020年、中国政府への個人情報流出を防ぐため、TikTokと中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」の利用禁止命令を出したが、2021年にバイデン大統領によって撤回された。

サイバーセキュリティの専門家で、アドバイザリー会社ブラックオプス・パートナーズ(BlackOps Partners)のケイシー・フレミング最高経営責任者(CEO)は以前、エポックタイムズに対し「スマホのデータや行動がすべて国外に送られ悪用されることになる」と述べ、中国製アプリの背後には「悪意」が潜んでいると警鐘を鳴らしていた。

国家安全保障上の懸念に加え、TikTokのコンテンツが青少年の精神衛生に及ぼす害も問題視されている。昨年12月、インディアナ州は未成年へのアダルトコンテンツ提供と中国への情報無断送信をめぐり、バイトダンスを提訴した。

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