東シナ海を航行する中国海軍空母「遼寧」の編隊。1月2日撮影(STR/AFP/Getty Images)

ASEAN、中国が南シナ海行動規範の交渉を長引かせる中、連帯をアピール

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は、南シナ海の安定を支えるパートナーシップを強化している。 最近の外交努力は、ますます攻勢を強める中国が、重要な水路である南シナ海の行動規範(COC)に関する数十年にわたる協議が「円滑に進んでいる」と主張する中で行われている。

インドネシアのジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領とフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領は2023年1月上旬にマニラで会談し、南シナ海の開発や東南アジア諸国間の関係強化を含むエネルギーや防衛面での協力について話し合った。

2016年に国際法廷が中国の主張には法的根拠がないとの判決を下したにもかかわらず、中国政府は、高収益をもたらす漁業と膨大な石油埋蔵量、そして年間444兆円(3兆ドル)を超える貿易のパイプラインである水路のほぼすべてを領有権を主張している 中国はここ数か月、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)において、フィリピン船への放水銃の発射、船舶への衝突、漁業を阻止するための障害物の設置など、敵対的な戦術を強化している。

ウィドド大統領は1月にハノイで行われた貿易・投資協議で、海上での緊張について再び言及した。 ベナール・ニュースによると、同大統領はベトナムのヴォ・ヴァン・トゥオン(Vo Van Thuong)大統領とともに、南シナ海における「平和、安定、安全、治安、航行の自由と領空通過権の重要性を再確認した」という。

ASEAN首脳陣はまた、2023年後半に声明を発表し、「地域の平和、安全、安定を損なう可能性のある南シナ海の動向」に懸念を示した。

首脳陣は「ASEAN外相が『我々の海洋領域』と表現するものにおいて、フィリピンとの『団結』と『連帯』を表明し、中国や他の大国が南シナ海流域を支配すべきだといういかなる提案もさりげなく拒否した」とアジア・タイムズ紙は報じた。

ASEANは1996年、領土問題を解決するための「南シナ海行動規範」について初めて中国に打診した。 正式な交渉は2002年に始まったが、アナリストらによれば、中国は膨大な海洋権益を押し付けようとする自国の試みを抑えうる協定に二の足を踏んでいるという。 1月11日の時点で、中国外務省の報道官は「協議は順調に進んでいる」と主張し、中国は「南シナ海行動規範の早期採択」を望んでいると述べた。

中国は1996年に、締約国が自然に形成された居住可能な領域の海岸線から200海里におよぶ排他的経済水域(EEZ)を主張することを認める国連海洋法条約(UNCLOS)を批准した。

しかし、南シナ海における中国の領有主張は、中国本土から800海里にまで及んでおり、国連海洋法条約(UNCLOS)やその規定を支持した国際法廷の判決に反している。 中国が領有権を行使しようとしている海洋領土は、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムの排他的経済水域にまで及んでいる。

2002年にASEANと中国が交わした「南シナ海における締約国の行動に関する宣言」という拘束力のない合意において、指導者たちは国家間関係を統治するために「国際法の認められた原則」を用いること、そして領土紛争を「武力による威嚇や行使に頼ることなく、平和的手段によって」解決することを約束した。

カリフォルニア州のスタンフォード大学で海洋透明化プロジェクト「シーライト(SeaLight)」のディレクターを務めるレイモンド・パウエル(Raymond Powell)氏は、ディプロマット誌に、20年以上経った今、南シナ海は 「持続的な脅威と時折の武力行使の下に存在している」と寄稿し、 「そこでは多くの紛争が平和的に解決されるのではなく、むしろ中国による暴力の行使や威嚇によって解決されている」と指摘している。

パウエル氏は、中国海警局がインドネシア、マレーシア、ベトナムのガス田の管轄権を主張しようとしていることに加え、フィリピン海域での封鎖やその他の攻撃的な行動を挙げた。

パウエル氏は、中国が政治的な隠れ蓑として南シナ海行動規範の協議を長引かせ、その間に自国が主張する広大な地域の支配権を獲得しようとしている可能性があると警告した。

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