このごろ、中国では実に珍しい「ペットの遺産相続」の話題がネット上でホットな話題になっている。イメージ画像。(Madphotos / PIXTA)

「親不孝の子供に渡す遺産はない」 老婦人の財産4億円をペットが相続?=上海

「ペットが巨額な遺産相続した」とするニュースは時折耳にするが、大抵の場合は法的にペットの遺産相続が認められている米国であることが多い。

それがこのごろでは中国でも、この実に珍しい「ペットの遺産相続」の話題がネット上でホットな話題になっている。

このほど、上海のある老婦人が、我が子ではなく「ペットに2千万元(約4.1億円)の財産を遺した」という。

中国メディアによると、この老婦人には3人の子供がいる。数年前、遺産をめぐって子供たちが争わぬよう、事前に遺言を作成している。遺言の内容は「総額2千万元余りの価値のある上海の3つの不動産を、3人の子供で平等に分ける」というものだった。

このように公平な遺言を残したことで、安心して老後を過ごせると考えていた老婦人だった。

ところが、この遺言を子供たちに公開したところ、その反応は意外なものだった。子供たちは、母の死後に自分がもらえる遺産が確定したせいか、かえって母に対する気遣いをしなくなったのだ。母親である老婦人は、とても寂しい思いをすることになった。

「病気で入院した時も、誰一人、見舞いに来る子供はいなかった。退院しても、子供たちは何の関心も示さず、近くを通りかかっても会いに来てはくれなかった」

「私はいつも一人ぼっちで、そばにいてくれたのはペットの犬と猫だけだった」

たとえ子供たちに遺産を渡すと遺言しても、自分のことに関心を持ってくれないのだと悟った老婦人は、なんと全ての財産を、自分が飼っていた「ペット」に遺すことに決めたという。

しかし中国では、日本と同様、たとえ遺言書に「ペットへ財産を遺す」と記載しても、その遺言は効力をもたず、ペットに対して直接的に財産を相続させることはできない。

そこで老婦人は自分が亡くなった後に「ペットとそのペットの子供(次世代の犬や猫)たちの面倒を見てもらう」という条件のもと、地元のペット病院を遺産の管理者に任命した。

ちなみに日本では、ペットの面倒をみることを条件として、信頼できる人に財産を渡す内容で遺言を作成することは可能である。これを「負担付遺贈」といい、もし財産継承者が実際にペットの面倒をみようとしない場合は、家庭裁判所に負担付遺贈の取り消しを請求することもできる。

中国では昔から「孝は百行の基。一孝立ちて万全これに従う」と言われてきた。百行の基(もと)とは、さまざまな善い行ないの基礎になるということで、孝心なくして善い行ないはない、という意味である。

日本でも諺としてよく知られているこの言葉の原典は、後漢時代の儒教の解説書の一つ『白虎通義』である。日本の戦前の道徳教育である「修身」の教科書にも、必ず載っていた。

さて「遺産を、ペットの動物にわたす」という母親の心変わりを聞いた3人の子供たちは、さぞや驚き、遅まきながら母親のご機嫌をとろうと飛んで来たであろうが、その後のことについては伝えられていない。

これを受けて、ネット上ではいろいろな意見が飛び交った。

親不孝な子供たちが莫大な遺産を受け取れなくなったことを、痛快に思う多くの民衆の声がある。いっぽう、親の教育がわるくて、そんな親不孝な子供にしてしまった母親にも責任の一端はあるのでは、という見方もある。

いずれにせよ「遺産さえもらえれば、もう親のことなど気にもかけない」という道徳崩壊や極端な拝金主義がその背景にあるとすれば、中国共産党体制下の中国が、どれほど精神的に荒廃しているかが伺われる事例の一つであろう。

関連記事
武漢の感染状況を報道したことで投獄された中国の最初の市民ジャーナリスト・張展氏は2024年5月13日に出所する予定だが、現在の所在は不明である。
米国の超党派議員グループが、「中国共産党が主導する強制臓器摘出犯罪を根絶するために、米国政府が直接行動すべきだ」と呼びかけた。
通常、北京が日本を非難する場合、その文句は決まり文句である。 東京と米軍との緊密な関係や、第二次世界大戦における日本の振る舞いが主な不満である。 しかし、北京が東京で起きていることを懸念するには、もっと現実的で直接的な理由がある。 円の為替レートが約160円まで下落したことは、北京にとって大きな懸念要因である。
このほど、中国青海省の裁判所の開廷中に、上級裁判所の所長らがリアルタイムで裁判中の下級裁判所の裁判長に「遠隔指揮」をしていたことがわかった。