2003年7月1日、香港の街角で、中国共産党による基本法23条の立法推進に抗議するため、多数の市民がデモ行進を展開した。

「法が悪用される恐れ」国連、香港の国家安全条例法案の採択を非難

国連人権高等弁務官のフォルカー・テュルク氏は19日、同日可決した香港における国家安全条例法案の性急な審議と採択を強く非難した。「スパイ活動」の定義をめぐり透明性を欠く同法は、国際人権法に則らないとして、国連はかねて懸念を示していた。

テュルク氏は、「多くの条項が国際人権法と両立しないことについて深刻な懸念が示されたにもかかわらず、このような重大な法律が性急に立法府を通過したことを危惧する」と声明で述べた。

今回採択された国家安全保障法案は、中国共産党が2020年に成立させた国家安全維持法を拡大するものだ。これにより、香港で適用される国家安全法の範囲がさらに広がり、▽反逆罪、▽反乱罪、▽国家機密およびスパイ活動に関連する犯罪、▽破壊活動および国家安全を危険にさらす行為、▽外部干渉の5つの追加犯罪カテゴリーが導入された。違反すれば最高で終身刑を科すとしている。

国家安全条例の制定をめぐっては、1997年の中国返還時に導入された香港憲法にあたる基本法の23条で定められていた。しかし、自由への侵害を懸念する香港市民の強い反発を受け、見送られてきた経緯がある。

中国共産党政府は香港への締め付けをますます強めている。2020年に制定した香港国家安全維持法(国安法)を皮切りに、民主活動を強く抑え込み、選挙制度の変更して、親中派議員で議席を埋めた。

こうした背景から、香港立法会(議会に相当)は国家安全条例を19日、全会一致で可決。27年間もの積年の政治課題をわずか11日間の審議で可決させた。23日に施行する。

テュルク氏は、国家安全条例の広範かつ曖昧な規定により、表現の自由、平和的集会の自由、情報を受け取り伝える権利など、国際人権法の下で保護されている幅広い行為が犯罪化される可能性があると強調した。

国連人権高等弁務官事務所の報道官ジェレミー・ローレンス氏は、「この曖昧さは、反対意見、ジャーナリスト、研究者、市民社会の活動家、人権擁護者を標的にするなど、悪用や恣意的な運用の可能性があるため、非常に問題だ」とビデオメッセージで懸念を示した。

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