中国警察の存在を指摘したことで知られる国際人権NGO「セーフガードディフェンダーズ」は最新の報告書で、中国共産党の習近平は反腐敗を名目に世界中に監視の眼を広げ違法な“強制送還”を実施していると指摘した(safeguarddefenders.com)

習近平、「反腐敗」名目で世界中に監視網…中国警察を指摘した人権NGOが警鐘

世界に点在する中国警察の存在を指摘したことで知られる、スペインの人権NGO「保護衛士(セーフガード・ディフェンダーズ)」はこのほど、最新報告書を発表した。中国共産党の習近平は「反腐敗」を口実に、「キツネ狩り」や「天網」と呼ばれる作戦を通じて世界中に監視網を広げ、他国の主権を無視した違法な強制送還を行っているという。

中国警察、欧米などに50超の「海外派出所」を設置 東京にも=人権団体

中国当局は2014年以来、120か国以上から1万2千人以上の容疑者を強制的に送還したとされる。送還方法は多岐にわたり、家族への脅迫や集団的処罰を伴う「説得」、移民法を悪用した「本国送還」、「誘い出しや拉致」など、違法性の高い手段が横行している。特に「説得」が最も多用され、中国国内の家族や知人への圧力と、海外の中国当局者による直接的な監視・嫌がらせ・脅迫が組み合わされる。

このほか、滞在国の移民法などを利用する場合もある。中国当局が対象者の違法行為や偽造パスポートの情報を当該国に提供し、強制送還を図る。対象者には最低限の人権的保障や法的救済が認められない場合がほとんどだ。

報告書には「テロ資金供与の容疑者」としてタイに拘束されたウイグル人男性の事例も記されている。タイ当局に送還命令書が提示されたが容疑の詳細は不明で、国連難民機関への緊急連絡で送還は免れた。

中国の強制送還では容疑者は数日、数時間で本国送還され、法的抵抗の余地はない。中国当局は商用便を利用し、アディスアベバやドバイ、フランクフルトなどを経由して容疑者を連行することがある。

汚職容疑者の送還を名目にしているが、政治的な理由での弾圧が多い。中国の法制度は公正さを欠き、容疑の真偽は不明だ。2023年だけでも、ラオスから164人、ミャンマーから3万人以上が強制送還された。

また報告書では、中国当局による法輪功学習者への弾圧が海外にまで及んでいることも指摘された。ドイツでは2011年、中国人医師のジョー・周が在ドイツ法輪功学習者のスパイ行為で有罪判決を受けた。周は中国大使館員の唆しで法輪功学習者のメールを転送するなどし、300ページに及ぶ報告書を作成していたという。

さらに米国でも2023年6月、陳俊と林峰(それぞれ音訳)両容疑者が、中国共産党政府の指示で法輪功団体の非課税地位取り消しを図った疑いで起訴された。FBIのおとり捜査員に賄賂を贈り、法輪功団体の監査を促そうとしたとされる。米司法省は「中国政府の代理人として通知なく活動した」などの容疑を掲げている。

中国「海外警察署」運営で摘発の中共関係者、法輪功も標的に

セーフガード・ディフェンダーズは、中国が東南アジアなどで警察の協力関係を広げ、国連薬物犯罪事務所とも覚書を交わすなど、国際社会を巻き込みながらグローバルに不当な影響力を行使していると指摘。民主主義国に対し、法の支配に基づく毅然とした対応を呼びかけている。

関連記事
留学生の学費は見直しが進む。早稲田大が引き上げを検討し、東北大は2027年度から1.7倍の90万円へ。支援体制の負担増が背景にある。
中国の夜空でドローンが「謎の霧」を散布。十数省で相次ぎ報告され、焦げた臭いに住民が騒然。当局は沈黙したまま…何が起きているのか。
東京都中野区の中野区役所内1階「ナカノバ」で、12月4~5日の2日間、生体臓器収奪の闇をポスターというアートで暴き出したポスター展を開催し、4日には中国の臓器収奪の実態を暴露したドキュメンタリー映画「ヒューマン・ハーベスト」が公開された
宏福苑火災の発生後、警報システムや工事監督の在り方を問う声が強まっている。しかし、独立調査を求めた学生の拘束や大学内掲示の封鎖など、市民社会の活動に対する制限も目立ち始めた。火災対応を通じて、香港の統治や言論環境に変化が見られる
米政府監査院(GAO)の分析で、オバマケア補助金に社会保障番号の不正利用や死亡者の名義悪用が多数確認され、数十億ドル規模の損失が生じている可能性が明らかになった