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ロンドンで過ごす24時間

目を閉じて、ロンドンを思い浮かべてみてください。何が見えますか?きっと、多くの象徴的な光景が思い浮かぶことでしょう。世界でもトップクラスの認知度を誇る場所、それがイギリスの首都ロンドンかもしれません。

そのため、24時間ですべてを見て回るのはなかなか難しいことです。
とはいえ、ロンドンには効率的な公共交通機関が整備されており、徒歩でアクセスできる場所も多く、観光スポットが密集しています。知られざる名所も含め、たっぷり楽しむことができるでしょう。

では、靴ひもをしっかり結んで、さっそく出発しましょう。こちらが、1日でロンドンを堪能するためのガイドです。
 

到着

世界中の都市の中でも、イギリスの首都ロンドンほど空港の選択肢が豊富な場所はありません。

実際、飛行機に搭乗する前に、自分のフライトがどの空港に到着するのかを確認しておくのが賢明です。ロンドンには主要空港が6つありますが、北米からのフライトの大半は、ヒースロー空港(LHR)またはガトウィック空港(LGW)に到着します。

いずれの空港からでも、市内中心部へのアクセスは簡単で、最も便利なのは鉄道の利用です。

ヒースロー空港は、現地で「ザ・チューブ」と親しまれているロンドン地下鉄の広範なネットワークに直結しています。第2・第3・第4・第5ターミナルのいずれからもピカデリー線(Piccadilly Line)に乗車可能で、所要時間は約50分、運賃は5.50ポンド(約7ドル)です。

一方、ガトウィック空港では南ターミナルから複数の鉄道会社が運行しており、ロンドン中心部までの所要時間はおよそ30分です。運賃は利用条件によって異なりますが、12ポンド(約15ドル)からとなっています。
 

まずは、まるで時をさかのぼるような場所から旅を始めましょう。ロンドン塔(ロンドン・タワー)は本物のお城で、テムズ川のほとり、まさにロンドン中心部に位置しています。建設は1070年代ごろで、ノルマン朝初代イングランド王である征服王ウィリアムによって築かれました。この場所は、宮殿、牢獄、要塞として使用されてきました。

かつて王室の住居であったロンドンのホワイトタワーは、今でも世界で最も有名な城郭の一つです。(Maremagnum/Getty Images)
ロンドン塔のホワイト・タワー(白塔)は、かつて王族の住居であり、今なお世界でも有名な城郭の一つです。Maremagnum/Getty Images

 

この地には、さまざまな物語が詰まっています。丸一日かけても見尽くせないほどの見どころがあり、ガイ・フォークス(火薬陰謀事件の首謀者)からアン・ブーリン(ヘンリー8世の2番目の妻)まで、名だたる人物や不運な人々がこの塔に幽閉されました。かつてこの地では王国の硬貨すべてが鋳造され、王たちはここで暮らし、子を授かり、そして埋葬されていったのです。

とはいえ、今日はとても忙しい一日になりますので、長居はできません。クラウン・ジュエル(英国王室の宝物)を見学し、警備兵であるビーフィーター(ヨーマン・ウォーダーズ)を写真に収めましょう。彼らは今もなお、この敷地内に暮らしています。

私はこれまでにロンドンを十数回訪れています。その中には、乗り継ぎの長い待ち時間を利用し、夜行便で到着後に町へ出て数時間だけ観光し、再び空港へ戻ったという短い滞在もありました。

そうした旅を振り返ると、時差ボケの疲労や、機内で十分に眠れなかったことが思い出されます。目のかすみをこすりながら歩いた記憶があります。そんな時差ボケを和らげるのに最適なのが、テムズ川沿いの散歩です。塔橋(タワー・ブリッジ)の写真を撮ったら、西へ向かって歩き出しましょう。

タワーブリッジは1894年に完成し、長さは約800フィートです。(fazon1/Getty Images)
タワー・ブリッジは1894年に完成し、全長は約800フィート(約240メートル)あります。fazon1/Getty Images

川から吹く風はいつも爽やかで、濁った水面には貨物船、観光船、豪華ヨットなど、さまざまな船が行き交っており、見ていて飽きません。川の大きなカーブに沿って歩いていくと、ロンドン橋、シェイクスピアのグローブ座(再建された劇場)、巨大観覧車ロンドン・アイなど、次々に名所が現れます。

今日は昼食の時間が少し遅くなるので、途中で軽く食べておくのがおすすめです。おすすめの店はロンドン橋近くの「ビルズ・レストラン&バー」。イギリスのチェーン店ですが、味は十分満足できるレベルです。目玉焼き、豆の煮込み、ベーコン、パンケーキが一皿に盛られていて、価格も手頃です。

歩くスピードにもよりますが、ビッグ・ベンに着くまでには1時間ほどかかるでしょう。多くの人がこの建物を「時計塔」と思っていますが、「ビッグ・ベン」という名称は、実は塔の頂上にある一番大きな鐘を指しています。ロンドンを訪れたことがなくても、その鐘の音は世界中のドアベルなどで模倣されています。

ビッグベンの時鐘の重さは13トンを超えます。この塔はかつてセント・スティーブンス・タワーと呼ばれていましたが、2012年にエリザベス2世の即位60周年を記念してエリザベス・タワーに改名されました。(Alexey Fedorenko/Shutterstock)
ビッグ・ベンの鐘は重さ13トン以上あります。この塔は2012年まで「セント・スティーブン塔」と呼ばれていましたが、エリザベス2世の即位60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)を記念して「エリザベス塔」と改名されました。Alexey Fedorenko/Shutterstock

 

午後

曜日によって異なりますが(火曜から土曜は議会が休会中のため見学可能。土曜日は開会中でも見学可)、ウェストミンスター宮殿のガイド付きツアーに参加することができます。上院にあたる「貴族院(ハウス・オブ・ローズ)」と、下院にあたる「庶民院(ハウス・オブ・コモンズ)」の両方を見学可能です。庶民院ではしばしば混雑の中、650人の議員(首相を含む)が熱心に議論を交わし、イギリスの法律を制定・可決しています。

ウェストミンスター宮殿はネオゴシック建築の好例です。その大部分は1834年の壊滅的な火災後に再建されました。(Sergey-73/Shutterstock)
ウェストミンスター宮殿はネオ・ゴシック様式の建築で、1834年の火災によって大部分が再建されました。
Sergey-73/Shutterstock
ウェストミンスター宮殿のセント・スティーブンス・ホールにあるマンスフィールド卿の像。(3DF mediaStudio/Shutterstock)
ウェストミンスター宮殿のセント・スティーブンズ・ホールには、マンフィールド卿の銅像があります。
3DF mediaStudio/Shutterstock

 

その後は、広場を挟んだ向かい側にあるウェストミンスター寺院を訪れてみましょう。ここは由緒ある教会で、王室の結婚式が16回、戴冠式が39回も行われました。さらに徒歩5分ほどで、チャーチル・ウォー・ルームズ(チャーチル戦争博物館)に到着します。

ここは私のお気に入りの場所の一つです。バトル・オブ・ブリテン(イギリス本土空襲)と第二次世界大戦のもっとも厳しい時期、ドイツ軍による激しい空襲の中で、この極秘地下施設は英国政府の代替本部として機能していました。館内には、戦時内閣の会議室、戦況を把握した「マップ・ルーム(地図室)」、ウィンストン・チャーチル首相とその側近が夜を明かした部屋などが再現されています。(ちなみに、アメリカ大統領との電話会談に使われた“個人用化粧室”もあります)

クライヴ・ステップの隣にあるチャーチル内閣戦時執務室の入り口。(Uwe Aranas/Shutterstock)
チャーチル・ウォー・ルームズの入口は、クライヴ・ステップスの近くにあります。
Uwe Aranas/Shutterstock
第二次世界大戦における最も戦略的な決定のいくつかは、内閣戦争室の地図室で行われました。(Steve Travelguide/Shutterstock)
第二次世界大戦中の重要な戦略決定の多くが、このマップ・ルームで行われました。
Steve Travelguide/Shutterstock
チャーチル内閣戦時執務室の地図室にあった色分けされた電話機は「ビューティーコーラス」と呼ばれていました。海軍本部、陸軍省、航空省への連絡に使われていました。(Steve Travelguide/Shutterstock)
地図室にある色分けされた電話は「ビューティ・コーラス(美声合唱団)」と呼ばれ、海軍省、陸軍省、空軍省との連絡用に使われていました。
Steve Travelguide/Shutterstock

 

その後は、英国首相官邸があるダウニング街を通り、セント・ジェームズ・パークを抜けてバッキンガム宮殿へ向かいましょう。そのまま歩いてハロッズまで足を延ばせば、所要時間は30〜45分ほどです。

私は旅先でスーパーマーケットやデパートを訪れるのが好きで、地元の人々の買い物風景を観察するのが楽しみです。中でもハロッズは、人間観察に最適な場所です。ハロッズのモットーは「すべての人に、すべてのモノを、あらゆる場所で」。この巨大な百貨店は約5エーカー(約20,000㎡)の敷地に、100万平方フィート(約9万㎡)を超える売り場面積を誇ります。

今日の目的地は「フード・ホール」です。夜は観劇の予定があるため、ここで昼食兼夕食を済ませておきましょう。ハロッズは「世界最高の食品百貨店」と銘打っており、それは決して大げさではありません。ホール内には、チーズ、チョコレート、コーヒー、ワイン、精肉など、豊富な食材が並び、圧巻の光景です。

「ダイニング・ホール」には7つのレストランがあります。ミシュラン星付きシェフによるホットドッグ店をはじめ、ラーメン、寿司、自家製パスタ、点心、ロティサリーチキン、神戸牛のグリル、さらに地元で倫理的に漁獲された魚を使ったフィッシュ&チップスまで、豊富な選択肢が揃っています。

ハロッズはロンドンのナイツブリッジ地区にある7フロアに高級ブランドやデザイナーブランドの店舗が入っている。(andersphoto/Shutterstock)
ハロッズはロンドンのナイツブリッジ地区に位置する、7階建ての高級百貨店です。
andersphoto/Shutterstock

 

夕方

ハロッズでの豪華な食事の後、私がまずしたいことは、すぐ隣にあるハイド・パークで少し歩き、カロリーをいくらか消費することです。スピーカーズ・コーナーでは、自分の意見をはっきり述べる人が見られるかもしれません。ここでは19世紀半ばから、人々が立ち上がって自分の主張を述べてきました。キャリッジ・ドライブの向こう側にはケンジントン・ガーデンズとケンジントン宮殿があります。後者はかつてチャールズ皇太子とダイアナ妃が住んでいた場所で、ウィリアム王子とヘンリー王子もここで育てられました。

ハイドパークにあるサーペンタイン湖は、1730年に近隣の川から水を汲み上げて造られました。現在は、公園内の3つの井戸から水を汲み上げています。(エレナ・ディジュール/Shutterstock)
ハイドパークにあるサーペンタイン湖は、1730年に近隣の川から水を汲み上げて造られました。現在は、公園内の3つの井戸から水を汲み上げています。エレナ・ディジュール/Shutterstock

さて、地下鉄に再び乗り、出発地点の方向へ戻って1日の行程を締めくくりましょう。ハイ・ストリート・ケンジントン駅まで歩き、サークル線に乗ってエンバンクメント駅へ向かいます。そこから徒歩約10分でサヴォイ・ホテルに到着します。このホテルは本当に特別な存在です。私は数年前の特に寒いイギリスの冬に一度だけ宿泊しましたが、その時のことは決して忘れません。初代オーナーはギルバート&サリヴァンのオペラで得た利益を使い、1889年にホテルを開業しました。ここはイギリスで初めて、温水が出る水道、電気照明、エレベーターなど、さまざまな贅沢な設備を提供したホテルです。

もし(奇跡的に)フルディナーを楽しむ時間があれば、ミシュランの星を獲得したゴードン・ラムゼイのレストラン「Restaurant 1890」がおすすめです。しかし、たいていの場合は、ホテルのバー&レストラン「ギャラリー」でカクテルと軽食を楽しむのが良いでしょう。

サヴォイ初の女性ヘッドバーテンダー、エイダ・「コーリー」・コールマンは、20世紀初頭に甘いハンキーパンキーカクテルを発明した。(マーク・ビーバーズ/Shutterstock)
サヴォイ初の女性ヘッドバーテンダー、エイダ・「コーリー」・コールマンは、20世紀初頭に甘いハンキーパンキーカクテルを考案した。マーク・ビーバーズ/Shutterstock

そして最後に、再び歩きましょう。今度はほんの短い距離を進み、ウエストエンドにある数多くの劇場のひとつへ向かいます。一歩一歩を数えながら、リラックスして歩きましょう。あなたはもう十分にその権利を得ています。

ロンドンという英国の首都で、とても忙しい一日を過ごしました。最後は本格的なミュージカルで締めくくりましょう。私はロンドンで「ハミルトン」や「ウィキッド」、「ワンス」など数々の素晴らしい作品を観てきました。1日の終わりに音楽に包まれ、足を休め、そして心を高揚させる――それが本当に最高の締めくくり方です。

(翻訳編集 井田千景)

素晴らしいストーリーを求めて世界中を旅するトロント在住のライター。7大陸140カ国を訪れ、ボツワナでライオンを徒歩で追跡し、モンゴルで恐竜の骨を発掘し、サウスジョージア島で50万羽のペンギンの間を歩いた。CNNトラベル、ブルームバーグ、ザ・グローブ・アンド・メールなど、北米最大の出版物に寄稿。