スピードを追い求めるドライバーにとって、速度制限のない道路はまさに夢の場所です。警察に捕まる心配も、スピード違反で罰金を科される心配もありません。しかし、そんな道路が存在する場所は、世界にわずか2カ所しかありません。1つはイギリス、もう1つはドイツです。
 

イギリス・マン島

『Reader’s Digest』によると、現在、世界で主要な自動車道路に速度制限が設けられていない地域は2つだけです。もちろん明確な制限はないとはいえ、推奨速度が表示されていることもありますが、ほとんどの場合それは無視されています。また、一部区間には速度規制が設けられています。このような道路を走行する際は、重大な事故を防ぐために十分な注意が必要です。

その一つがマン島です。マン島は島国で、イギリス王室属領として自治権を持つ地域であり、グレートブリテン島とアイルランドの間のアイリッシュ海に位置しています。

マン島では、住宅地の道路においては時速50kmの制限が一般的ですが、制限のない道路では最高速度が定められていません。

中でも「マウンテンコース」は全長約60.7kmあり、スピードを求める人々にとって、思う存分走れる場所として知られています。このコースは世界的に有名なオートバイレースの舞台であり、車によっては時速210kmに達することもあります。

このコースは、標高621mのスネーフェル山を縫うように走り、200か所以上の急カーブや高低差の激しい地形が続くため、初心者向けとは言えません。

マン島に速度制限がないことについて、当時マン島警察・道路警務部門の責任者だったアラン・トムソン氏は、2015年に雑誌『Car and Driver』でこう語っています。「ここは唯一無二の存在です。船を降りてそのままマウンテンコースに向かえば、15分後には時速180マイル（約290km）で走っても違法ではない道路にたどり着けます」

一方で、警察による取り締まりは非常に困難です。トムソン氏は「時速160kmでサイレンを鳴らして走っていても、オートバイがまるで音速のような勢いで追い抜いていくこともあります」とも述べています。

そのため、マン島では交通事故、特にオートバイによる死亡事故が多く発生しています。人口は8万5千人未満ですが、毎年行われるオートバイレースの2週間で、3～4件の死亡事故が発生することも珍しくありません。

ドイツのアウトバーン

もう一つの「速度無制限地域」は、ドイツの高速道路「アウトバーン」です。アウトバーンの約30％には速度制限がありますが、残りの区間には速度制限がなく、時速130kmはあくまで推奨速度にすぎません。

自動車ニュースサイト「Autopian」の共同創設者で編集長のデイビッド・トレーシー氏は、以前CNBCに対し、「アウトバーンを走ることは、多くの人にとって『人生で一度はやってみたいこと”の一つだ」と語っています。

彼はさらに「クルマ好きにとって制限のない道路は、車の性能を本当の意味で引き出し、確かめられる究極の体験です」と述べています。

アウトバーンでは、条件が整えば時速400kmに達することも可能です。ドイツ出身のトレーシー氏も、特別にチューニングしたBMWスポーツセダンで時速280kmを出した経験があるといいます。

ただし、渋滞が速度に影響を与えることもあります。昨年のドイツでは約51万6,000件の渋滞が報告されており、年々渋滞時間が増加しています。区間によっては、一般道路と変わらない速度になることもあります。

それでも、アウトバーンは比較的安全な道路とされています。欧州委員会の2024年の報告では、ドイツはEUで唯一、高速道路に速度制限を設けていない国であると明記されています。

交通事故による死亡率を見ると、2021年のドイツでは人口100万人あたり31人と、EU平均の45人を大きく下回っており、2020年・2021年の2年間で死亡率は大きく減少し、EU全体の傾向とも一致しています。

世界で最も高い速度制限とは？

前述の2カ所以外、世界中のすべての道路には速度制限が設けられています。その中で最も高いのは、チェコのD3高速道路で、上限は時速150kmです。

次いで、アラブ首長国連邦のE11高速道路、ブルガリアのA1高速道路、ポーランドのAutostrada（高速道路）、サウジアラビアの40号線があり、いずれも時速140kmの制限となっています。

アメリカでは、テキサス州の州道130号線が最高速度を誇り、オースティンとサンアントニオを結ぶ約64kmの区間で、上限は時速約140kmに設定されています。

（翻訳編集　正道勇）