最先端の人工知能ツールにより、脳スキャンを分析するだけで、人が見ている画像を再構築できるようになりました。
この技術は、人の視野を驚くほど正確に再現できるほか、人がリアルタイムで何を見ているかを分析することで、脳活動を予測することもできます。
ワイツマン科学研究所のミハル・イラニ教授は、「心を読む」AIモデル「Brain-IT」を開発しました。このモデルは、参加者が一連の画像を見ているときの脳活動を記録した機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のスキャンデータを解析します。
イラニ氏と研究チームは、9月14日に研究成果を発表しました。チームには、ワイツマン科学研究所のコンピュータサイエンス・応用数学部門に所属するローマン・ベリイ、アミット・ザルチャー、ジョナサン・コグマン、ナヴェ・ワッサーマン各氏が含まれています。
今回の研究では静止画像を使用しましたが、イラニ氏の研究室では、こうしたいわゆる「心を読む」技術を参加者の聴覚にも応用し、最終的には動画を対象に検証する予定です。
「特に難しい課題として残っているのが、動画の解読です。例えば、夢を見ているときの映像を解読することです」と、イラニ氏は声明で述べました。
「動画では毎秒数十枚の画像が切り替わりますが、fMRIのスキャンには約2秒かかります。こうした課題をすべて克服できれば、将来的には夢を読み取ることさえ可能になるかもしれません」
研究では、8人の参加者が30~40回のスキャンセッションを通じて数千枚の画像を見た際のfMRIデータを分析しました。参加者は約10分間のセッションで約40枚の画像を見て、研究者たちは各参加者の脳を6回スキャンしました。これにより、AIモデルが分析するための約7万3,000組の画像とfMRIデータのペアが得られました。
イラニ氏によると、ほかのモデルも脳活動から画像を「印象的な精度で再構築」できますが、画像の基本的な構成や色を正確に再現できないことがよくあります。
「私たちが開発した新しいモデルは、画像の内容だけでなく、細部の再構築においても従来のモデルを上回っています」と、彼女は述べました。
「さらに、ほかのモデルでは、新しい人の脳活動を『読み取る』ために数十時間分の脳スキャンが必要ですが、私たちのモデルでは1時間分だけで済みます」と、イラニ氏は述べました。
科学者たちは、こうした技術の開発に長年取り組んできました。2017年に『Journal of Law and the Biosciences』に掲載された論文では、神経画像技術によって「脳に基づく心の読み取り」が実現する可能性について論じられました。
同論文では、こうした技術を嘘発見にどのように活用できるか、また、裁判において被告人や囚人、将来の陪審員を評価することで、法制度の改善に役立てられる可能性について説明しています。一方で、脳に基づく心の読み取り技術が、倫理的に問題のある強制的な利用につながる可能性も指摘しています。
プリンストン大学で心理学と神経科学の教授を務めるケネス・ノーマン氏によると、近年、fMRI装置が生成する信号データの質が向上し、人間がそのデータを分析する方法も改善されたことが、この技術の実現を後押ししました。
2022年にアメリカ心理学会との議論に参加したノーマン氏は、この技術がうつ病や不安を抱える人々の助けになる可能性があると述べました。
彼によると、セラピストはニューロフィードバックを活用し、参加者が自分の思考が否定的な思考のループに陥ったことに気づけるよう支援できます。そのうえで、そうした思考パターンをコントロールするための方法を身につけるよう促すことができます。
一部の神経科学者は、Brain-ITのAIモデルが持つ能力を高く評価し、神経学的な症状や疾患に苦しむ人々を治療面で支援する可能性に注目しています。一方で、この技術が悪用され、人の心から本人の意思に反して情報を引き出すために使われる可能性について、懸念を示す人々もいます。
(翻訳編集 日比野真吾)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。