【漢方の世界】カルテ(八)―「子午流注」が治療の鍵

【大紀元日本7月27日】今回のカルテの主人公は、ある未亡人だ。彼女はかつて、飛行機事故で夫と子どもを亡くしていた。それ以来、毎日その事故の発生時刻になると、決まって感情が抑えきれなくなり号泣してしまうという。

精神科医も彼女の症状にはお手上げだったので、今度は漢方医を受診することにした。この漢方医は彼女を問診する中である点に気づく。それは、「発作の起こる時刻は、ちょうど気血が心経に注ぐ時間(午の刻)」ということだった。漢方医は、心(しん)も発作の原因だと考えた。つまり心理面、精神面だけが原因ではないと考えたのだ。

そこで漢方医は、心(しん)に対して治療を施した。まずは、心(しん)に関するツボへの鍼灸。例えば、「膻中(だんちゅう)」「内関(ないかん)」「神門(しんもん)」など。そして漢方薬も処方した。温胆湯(うんたんとう)や天王補心丹(てんのうほしんたん)、導赤散(どうせきさん)といった薬である。このように、心に対して治療した結果、程なくして彼女の病状は改善した。

実は、気血は時刻に沿って人体を循環している。これを漢方では「子午流注(しごるちゅう)」と呼ぶ。すなわち、気血は一日十二の刻で、それに対応する十二の経絡をめぐるのだ。

漢方は陰陽五行説に基づいており、複雑かつ膨大な体系を築き上げている。先ほどの子午流注(しごるちゅう)は、そのうちのわずか一部に過ぎない。このほかにも、五行すなわち木、火、土、金、水、(もく、か、ど、ごん、すい)に対応する五臓――肝心脾肺腎がある。これらはみな、相生相克(そうじょうそうこく)の関係にある。

ちなみに、この相生相克の理論を用いた治療がある。古代には、これを十分に活用していた名医は少なくなかった。例えば、華佗(かだ)がそうである。

華佗はある時、狂喜する患者を診た。そして、直接「死期が間近だ、急いで帰郷しなさい」と告げた。これこそ狂喜を治す治療だったのだ。つまり、患者に驚きと恐怖を与えて、患者の狂喜を抑制する。すなわち、驚き・恐怖の腎で狂喜の心(しん)を抑えるのだ。

漢方は決して薬だけにとどまらない。心理療法、鍼灸などバラエティー豊かで奥も深い。そんな不思議な漢方の魅力をこれからもお楽しみに。

詳しくは新唐人テレビ局の『漢方の世界』でご覧下さい。

(翻訳・河合)