【佛家物語】釈迦如来の最初の弟子

ゴータマ・シッダルタ(釈迦)が出家した当初、父の浄飯王(シュッドーダナ王)は釈迦を追いかけ、王室に帰るように説得するため、警護を派遣しました。しかし、釈迦は父親の要求を断固として拒否し出家しようと決心しました。

そのため、浄飯王は釈迦の警護も兼ねて阿若・憍陳如(コンダンニャ)を含む五人を同行させました。

その後、スジャータから乳がゆの供養を受けた釈迦の様子を見て、この五人は釈迦が修行の意志を失ったとみて、失望のうちに釈迦のもとを去りました。

釈迦は菩提樹の下に坐して瞑想に入り、悟りに達して仏陀となりました。

釈迦は以前の警護であった五人が鹿野苑で苦行を続けているのを知ると、自分は仏のさとりを開いたのに、まだ迷いの中にいる彼らを哀れに思い、五人のいる鹿野苑へ赴いて、彼らへ最初の法を説くことにしました。

当初、鹿野苑で修行していたこの五人は、苦行を捨てた釈迦が遠くから来るのを見て、「向こうからやって来るのは、苦行を放棄して堕落したシッダルタではないか。こちらへ来ても見るのも汚らわしいから、私たちは彼に話しかけない。丁重に出迎えない。彼の荷物を預かる必要もない。ここに座布団を敷く準備だけして、彼が座りたければ座らせ、そうでなければ立たせればいい。彼のような意志の弱い人を歓迎しないで、無視しよう」と相談していました。

この五人は釈迦に対して、軽蔑の念を抱いていました。

ところが釈迦が近づいて来ると、ついこの間までとはまったく異なる威容を放っています。この五人は、その堂々とした姿を見て畏敬の念を抱き、さっきの話を忘れてしまいました。

一人は走ってひれ伏し、礼拝しました。一人は思わず後を追いかけて行ってひれ伏し、釈迦の敷物を準備しました。もう一人が、走って水を持って来ました。

しかし、釈迦を席に招いた後も、彼らは釈迦の旧名で呼び、その口調も無礼なままでした。

すると、釈迦は「私をこのように呼ぶべきではない。なぜなら、あなたたちは輪廻転生で永遠に苦しんでいるのだから。あらゆる徳を積んだ正等覚者(仏陀)に相応の敬意をもって接しなければならない」と言いました。

釈迦は彼らの質問に回答し、コンダンニャをはじめ、この五人は次々とその教えを理解し、釈迦の一番最初の正式な仏弟子になりました。そして、彼らは一番最初に仏果の位を得た仏弟子でした。

(出典:『百業經』)

(翻訳編集・啓凡)