【バンクーバー通信】鮭の遡上-4年に1度の大イベント-

【大紀元日本10月26日】日本の読者の皆さま、お久しぶりです。またこうやってリポートをお届け出来て、うれしく思います。

今回はBC(ブリティッシュ・コロンビア)州の秋の風物詩の一つである鮭の遡上をリポートします。カナダに住んで30年近く、映像や写真では見たことがありましたが、実際に経験したのは今回が初めてでした。

BC州の魚といえば鮭(サーモン)と言ってもいいくらいお馴染み。今年は4年に1度の大遡上だそうです。まるでオリンピックかWCサッカーみたいです。

BC州には鮭が遡上してくる川が2000本もあり、バンクーバー島ビクトリア近郊やスキー場で有名なウィスラーの近くまで遡上してくるものもいるそうです。その中でも最も有名なのが、アダムズリバーとその源流のアダムズレイク。ここまで行くには1000キロ近くの運転が必要で、今回は断念して、バンクーバーから車で2時間のウィーバークリーク公園の孵化場に行ってまいりました。

今年遡上した鮭の種類と数が発表されている(大紀元)

この人工の孵化場が作られたのは1965年。それまでは洪水などの自然災害で、鮭の遡上してくる数が毎年激変していたことから、ウィーバークリークに長さ2932mの孵化場を付け足して鮭の産卵を促進しました。それにより、今ではかつての200倍の数のサッカイサーモン(紅鮭)が戻って来るそうです。

速い流れに一休みするメス?(大紀元)

鮭が見られてラッキーな人たち(大紀元)

この季節になると、熊たちにとっても、冬眠のための食料の確保には鮭が欠かせません。熊は、70%のたんぱく質を鮭から取っているそうで、この期間に1頭あたり700匹の鮭を食べてしまうそうです。但し、熊は鮭の内臓だけを食べ、その他の部分は森とこの地域に住む生物や動植物の栄養源として還元されることになります。

力尽きて死んでいったメス鮭(大紀元)

メスの鮭は、1匹で5000個のたまごを産卵します。ただ、例えば、2000個の卵のうち、海までたどり着けるのは200個で、そのうち無事に再び故郷の川へ戻って来られるのはわずか10匹、そして産卵までこぎつけるのは、たったの1匹だそうです。

このウィーバークリークで産まれた鮭は、太平洋に下り、約4年の歳月を経て、再び生まれ故郷の川に帰って来ます。

これって、ウミガメの産卵と卵から孵ったウミガメのベイビーが海をめざして砂浜をもがきながら進んで行く様子とそっくりです。夜中に野犬などに卵が食べられてしまったり、業者のひとが卵を盗みに来たりして、、、。ウミガメの一回の産卵数って100個くらい?(全然見当つきませんけども)。あの映像を見るといつも、「ああ~、元気でね~。いつかまた故郷のこの浜辺に戻っておいでね~」って心から思います。

鮭のほうは、夏頃にフレーザー河口から500キロ以上の距離を、1カ月以上かけて生まれ故郷をめざして激流を遡ります。海から川に入ると、鮭は一切何も食べません。

体を赤くして、1匹のメスに群がるオスたち(大紀元)

もし、鮭の群れでこの川面が真っ赤に埋めつくされたなら、すごい迫力でしょう!(大紀元)

ペアとなった鮭は、やっとのことで上流までたどり着き、産卵場所を探します。ただ、この間にも、あぶれたオスが(写真からもお分かりになると思いますが、断然オスのほうが多い)メスを横取りしようとチャンスを狙い、とがった下あごでライバルの体にかみつくなど、最後まで油断ができません。(この辺はウミガメの産卵とは大違いです。)そして産卵後、オスは死に、メスは10日ほど卵を守りながら次第に衰弱していくのです。

ウミガメの産卵は、もちろん危険もあるのでしょうが、なぜかほのぼのとしているのに対して、鮭のほうは壮絶です。

そして、、、やがて新しいいのちが生まれ、稚魚は死んだ鮭の栄養を微生物やコケから食べて成長し、海へと向かいます。この自然の営みが毎年繰り返されるのです。

鮭と聞くと、わたしは、塩しゃけやスモークサーモンやサーモンのてりやき等の食べ物を思い出しますが、たまには彼らの壮絶な生き方を思い出し、自然を大切にし共存していくことを考えていきたいですね。

J-Station JTBバンクーバーのみなさま、ご協力ありがとうございました。

(バンクーバー記者=春馨)