トランプ政権が関税返還命令に上訴 最大20兆円規模の争いと企業への影響

2026/06/03
更新: 2026/06/03

アメリカのトランプ政権と輸入業者の間で、関税返還を巡る法的争いが一層激化している。米司法省は6月2日、アメリカ国際貿易裁判所(CIT)のリチャード・イートン(Richard Eaton)判事による、影響を受けたすべての輸入業者に対して関税の返還を命じた判断を不服として上訴した。今後、本件はアメリカ連邦巡回控訴裁判所で審理する見通しである。

この争いの発端は、今年2月にアメリカ連邦最高裁が下した判決にある。最高裁は6対3の多数意見で、トランプ大統領が「国際緊急経済権限法」(IEEPA)を根拠に実施した一部の世界的関税措置について、法的根拠を欠くと判断し、当該関税を違法と認定した。ただし、すでに徴収された関税の返還については判断を示さず、下級裁判所に審理を委ねていた。

最大20兆円規模の返還範囲と争点

その後、ニューヨークに所在するアメリカ国際貿易裁判所のイートン判事は、税関当局に税額の再計算を命じるとともに、影響を受けたすべての輸入業者に対し、過剰に支払った分の返還を命じた。同判事は、この1年間に多数提起された関税返還を巡る関連案件も担当している。

同判事は、返還対象を訴訟を提起した企業のみに限定した場合、最高裁判決の法的効果は十分に実現しないと指摘した。

アメリカ政府が提出した資料によれば、IEEPAに基づき徴収した関税約1660億ドル(約26兆円)のうち、現時点で約1270億ドル(約20兆円)が第1段階の返還対象に含まれている。一方、残る約390億ドル(約6兆円)が返還対象となるかは未確定であり、双方の主要な争点となっている。

トランプ政権は、一部の返還案件には複雑な法的問題が含まれており、すべての輸入業者が自動的に返還資格を有すると認めるのは適切ではないと主張している。さらに司法省は、昨年の最高裁判例を引用し、連邦判事が全国的かつ一般的に適用される差止命令を出す権限には制限があると指摘し、イートン判事の命令は司法権の範囲を逸脱していると主張した。

司法と行政の権限争いの構図

返還問題に加え、司法省はイートン判事の別の手続きに関する命令についても上訴している。イートン判事は5月下旬、即時の返還実施およびその後の手続きに関する各方面の意見を聴くため、公聴会の開催を命じた。さらに、アメリカ税関・国境警備局(CBP)のロドニー・スコット(Rodney Scott)局長に対し、本人の出廷と説明を求めた。

これに対し司法省は、当該事項については業務に精通した上級官僚が説明すれば十分であり、部門トップが出廷する必要はないと主張している。

イートン判事は5月29日の決定でこの主張を退け、政策の立案および執行を担う当局者から直接説明を受ける必要があるとした。その上で、政府が徴収済み関税の全面返還を計画しているのか、またその具体的な実施方法を確認する必要があると述べた。

また本件が行政権と司法権の分立に関わる問題を含むことを認めつつも、裁判所は関連する憲法上の要素を十分に考慮していると指摘した。

現在、これら二つの争点はいずれもアメリカ連邦巡回控訴裁判所で審理している。司法省は、スコット局長の出廷の必要性について今週中に判断を下すよう控訴裁に求めており、政府は6月9日の公聴会を前に、再度最高裁の関与を求めるかどうかを決定する方針である。

返還手続きと実務上の課題

裁判所の命令を受け、アメリカ税関・国境警備局は今年4月、オンラインによる返還申請システムを稼働させた。しかしアメリカ政府は裁判所に対し、複雑な通関案件の一部については依然として返還処理が完了していないと説明している。とりわけ、最終清算手続きが完了した輸入申告案件において課題が残っているという。

司法省はまた、すべての関税を直ちに全面的に再計算し返還を完了することは、実務上大きな困難を伴うとし、控訴裁に判断を求めている。

法的紛争が続く一方で、返還作業は段階的に進めている。アメリカ政府の公表によれば、5月22日時点で企業からの返還申請額は累計約850億ドル(約13兆円)に達している。このうち税関・国境警備局は約206億ドル(約3兆円)について財務省に支払い手続きを進めており、関連資金は企業へ順次支払われ、連邦政府の財政データにも反映され始めている。

最高裁判事ブレット・カバノー(Brett Kavanaugh)氏は今年2月の反対意見の中で、最終的に大規模な関税返還が必要となった場合、その手続きは混乱に陥る可能性が高いと警告していた。

現時点では、返還範囲、申請資格、実施メカニズムなどの問題について、さらなる明確化が求められており、司法手続きは引き続き進行中である。

輸入企業が依然として法的な不確実性に直面している状況を踏まえ、複数の法律事務所は企業に対し、すでに申請可能となっている返還項目について手続きを進めるとともに、残る返還分についても法的手段により請求権を確保するよう助言している。

王君宜
王君宜