脱税や資産移転、不正調査回避をするために、中国共産党(中共)幹部が「偽装離婚」をするケースが多く発覚している。イメージ画像。( Kevin Frayer/Getty Images)

脱税から海外逃亡の準備まで 中共腐敗官僚による「偽装離婚」の実態

すでに10数年前から、中央や地方を問わず、中国共産党の官僚が「遠くない将来の中共崩壊」を念頭に、海外脱出の準備として自身の財産や親族を海外に移す傾向がみられていた。

それに関係して、脱税や資産移転、不正調査を回避するために、中国共産党(中共)幹部が「偽装離婚」をするケースも、当時から多く発覚している。

例えば、安徽省含山県の元局長クラスであった「呉」という地方官僚の場合、2013年ごろ「自身に不正調査の手が及ぶ」という噂を聞くと、人目を欺くため、急いで妻と離婚手続きをした。不正蓄財した自分の財産は、妻の名義である「張」に移している。

また「呉」は、それまで賄賂で受け取った買い物カードや貴金属、宝石類を自宅の庭に埋め、高価な酒類を親戚の家に移したりした。

2016年、ある地方の高官であった張という男は、住宅購入の際に納める税金を少なくするために、妻と離婚した。住宅購入手続き完了後に、元妻と「よりを戻して」再婚したのである。この「偽装離婚」により、張は20万元(約400万円)以上の税金を節約(つまり脱税)したという。

2013年、黒竜江省牡丹江市の「反腐敗局」の政治委員である張秀亭は、自身が反腐敗の職務でありながら「17の不動産を所有している」と告発された。

しかし、張は「不動産のほとんどは妻が所有しているものだ。妻とは10年以上前に離婚している」と主張。しかし実際には、この夫婦関係は良好で、2人の間には20代の娘もいることがメディアの調査でわかった。

また、2015年9月24日に中国へ強制送還された鄺婉芳の場合は、こうだ。

鄺婉芳は1994年に、中国人の夫と「偽装離婚」をした後、渡米した。事前に約束をしていた米国人と結婚し、米国の永住権を取得した。それらは全て、元夫の海外逃亡の道を開くためである。鄺婉芳の元夫とは、大規模な銀行資金窃盗事件の主犯である中国銀行広東開平支店の元支店長・許超凡だ。

そして今年10月、5.55億元(約111億円)の賄賂を受け取った疑いで裁判にかけられた遼寧省公安庁の元トップ・王大偉の場合はこうである。

王が調査された際の中共当局の通報によれば、王は「裸官問題に対処するために、偽装結婚を行うなどして組織を欺き、また大々的に官職売買を行った。そのほか、生活も腐敗しており、モラルもない」という。王の愛人宅からだけでも、約1億元(約20億円)の現金が見つかっている。

中共の高級幹部を養成する機関「中共中央党校」の林哲教授は、2010年の「両会」期間中に「1995年~2005年までの10年間で、118万人の裸官が現れた」と明かした。

林哲教授によると、それら「裸官」の子女や親族は、みな海外に移住している。そして「裸官」である本人も、いつでも「中国から逃げられる用意」をしてある、という。

香港メディアが2012年に、中共の内部機構の統計データを引用して報じたところによると「(中共)中央委員の親族の9割が、すでに海外に移民している」という。

「裸官(らかん)」とは、中国国内に家族や資産を持たない腐敗官僚のことを指す。

つまり、中国で不正に資産をため込み、その資産と妻子(あるいは愛人)を海外の先進国へ先に移しておく。タイミングを見計らって、自身も中国から脱出しようとする中国共産党員のことをいう。

不正蓄財した金と家族を海外へ移しておき、官僚である自分だけは形式的に中国に残っている。この様子が、まるで「裸の官僚」ということだが、いつでも国を捨てて海外逃亡する用意はしてあるのだ。

この「裸官」という新語が生まれて、すでに10数年になる。

中共党員の腹の底はまさにこの言葉の通りであるが、中国経済の破綻が決定的となり、習近平指導部の権力が急激に弱体化した今、いよいよ「裸官」の一斉逃亡が現実的になりつつあると言ってよい。来たる2024年が「その年」になる可能性も、否定できない。

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