【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

光、運動、睡眠が代謝を促進する仕組み

バイオハッキング運動と「ブレットプルーフコーヒー」の創始者であるデイヴ・アスプリー氏は、私たちが光を薬のように扱う未来を思い描いています。家庭や店舗、空港などで夜になると照明を落とし、強くまぶしい光の代わりに穏やかで体をサポートする光を使う――そんな、生物学に沿った健康的な環境を整える世界です。

アスプリー氏の考えには一理あります。代謝の健康は、食べ物だけに関係するものではありません。彼によると、光の浴び方をコントロールし、自然のサイクルに合わせることで、自身の代謝を回復させることができたといいます。真っ暗な部屋で眠り、朝起きてすぐ外に出るといったシンプルな習慣を取り入れることで、長年の夜型生活から朝型に変わり、その過程で体重も減りました。これは、ライフスタイルのちょっとした工夫が、どれほど強い影響を持つかを示しています。

「習慣は健康の基盤を形作り、ルーチンなしで健康になるのは非常に難しいです」と、長寿と代謝の健康を専門とする二重専門医のハランド・チェン博士はエポックタイムズに語りました。

「非常に速いペースの世界で、正しく食べ、よく眠り、運動することは――それ自体が難しいのです」

生活要因が体にどう影響するかを理解できれば、代謝の健康を支えるためのシンプルな日常行動を取ることができます。
 

3つのシンプルな戦略

自然光、睡眠、運動は代謝を微調整し、体内時計をリセットして、健康を自分の手でコントロールする助けになります。不調は一夜にして起こるものではなく、小さく一貫した習慣が長期的な健康の土台をつくると、チェン博士は述べました。

見落とされがちな重要な生活要因のひとつが、光の浴び方です。これは非常に強力な代謝シグナルでもあります。

1.適切な照明

体は本来、自然光のサイクルに従うようにできていますが、現代生活はそれを絶えず乱します。概日リズム(代謝を調整する体内時計)は光に非常に敏感です。日光と人工光が代謝に与える影響を理解できれば、前者を活用し、後者の影響を和らげられます。

「自然光は実際に代謝を刺激します。ホルモンや血糖コントロール、インスリン感受性の強化を通じてです」と、サウスフロリダ大学の研究科学者・教授ドミニク・ダゴスティーノ氏はエポックタイムズに語りました。「ある意味で、代謝療法の一形態と言えます」

太陽のビタミンと呼ばれるビタミンDは全身に受容体があり、ビタミンDの不足は代謝機能の低下と関連します。研究では、体重が多い人ほどビタミンD欠乏が起こりやすい傾向があり、その理由は、日光を浴びる時間の少なさや屋外活動の減少といった、生物学的要因と生活習慣の両方によるものと考えられています。

人間の脳や皮膚にはビタミンD受容体があります。皮膚は光を感じ取り、ホルモン分泌を適切な睡眠・覚醒リズムと同調させる働きを持っているとダゴスティーノ氏は説明しています。朝の光を浴びることで血糖値が下がり、インスリン感受性が高まる効果もあるそうです。

「私は真っ暗な部屋で眠り、朝起きたらまず外に出るようにしています」とアスプリー氏は話します。「自分の体を自然のサイクルとつなげているんです」

「もし自然の太陽光を浴びることをやめるか、未加工の食品をやめるかのどちらかを選ばなければならないとしたら……私は迷わず太陽を選び、超加工食品を食べるほうを選びます。」

光のスペクトルの反対側にあるのが、デバイスから発せられる人工的なブルーライトです。ブルーライトはメラトニンの生成を抑制し、睡眠や代謝機能に深刻な悪影響を与えることがあります。夜間の人工光への安全な曝露レベルは、現在のところ確認されていません。2024年に 『Diabetes & Metabolism Journal 』に掲載された研究では、夜間の人工光曝露が血糖代謝の乱れや2型糖尿病のリスク上昇と関連していることが報告されています。

また、2023年に 『Nutrients』 に掲載されたレビューでは、人工光が自然のサイクルを乱し、代謝や日常生活のサイクルに影響を与えることが示されました。著者らは、光の浴び方を調整したり、メラトニンを補うことで、特にシフト勤務者や体内時計がずれている人の代謝的健康を守れる可能性があると結論づけています。

夜のブルーライトは体に悪影響を与えますが、赤やアンバー(琥珀色)などの波長の長い光は、その影響がはるかに少ないとされています。アスプリー氏は、日没後に画面を暗くし、赤やアンバー系のトーンに切り替えることで、睡眠リズムを整えるのに役立ったと話しています。また、スマートフォンの「夜間モード」を使い、画面の明るさをできるだけ下げることも効果的だと指摘しています。

「私はずっと夜型だったんです」と彼は言います。「いつも午前2時に寝ていて、どんなに頑張ってもその習慣を変えることができませんでした。光のコントロールの仕方を学ぶまでは」

科学はこれらの観察を支持します。2024年の『Journal of Biophotonics』に掲載された研究では、健康な参加者に単回15分の670nm赤色光療法を行うと、食後血糖値が有意に低下し、ミトコンドリア機能の改善とアデノシン三リン酸(すべての生細胞のエネルギー運搬分子)産生の増加によってグルコース利用が高まる可能性が示されました。
 

2.運動

「もし身体活動を錠剤にできるとしたら、それはあらゆることに効く特効薬のようなブロックバスター薬になるでしょう」とダゴスティーノ氏は話しています。

チェン博士は、どのような身体活動でもまったくしないよりはずっと良いと指摘しています。単に体を動かすことが大切であり、ひとつの習慣を始めることで、次の習慣につながっていくのです。

「運動をいつ行うかにかかわらず、自身の睡眠クロノタイプ(体内時計のタイプ)に合わせてトレーニングを計画するのが良いと思います」とチェン博士は述べています。これによって運動がより楽に感じられ、続けやすくなるそうです。夜型の方は夕方の運動を、朝型の方は朝の運動を好む傾向があります。

クロノタイプ、つまり体の自然な睡眠と覚醒のリズムは、代謝にも影響を与えます。ご自身の体内時計に合わせて習慣を整えることで、健康的な生活を維持しやすくなります。

研究では、より座りがちな人は代謝障害、心血管疾患、早期死亡のリスクが高いことが示されています。座りがちな行動を減らすことは、こうした結果の予防に役立ちます。

長時間座っていると、代謝性疾患の一因となる細胞プロセスが誘発されます。一方で、一日の中でこまめに立ち上がったり、軽く体を動かしたりするなどの低強度の非運動活動は、計画的な運動だけでは得られない独自の代謝上の利点をもたらします。

健康な成人の場合、運動を1回まとめて行うよりも、座っている時間の合間に短時間の運動休憩を頻繁に取る方が、代謝の健康を守る効果が高い可能性があります。

また、座位時間の増加と低強度活動の減少は、中等度から高強度の運動とは関係なく、ウエスト周囲径の増大や全体的な代謝リスクの上昇と関連しています。さらに、筋肉量が極端に少ないことも、インスリン抵抗性のリスク要因となります。

筋肉の質も重要です。

「太ももの断面をMRIで見ると、特に年齢とともに筋肉の中に白い筋が見えてきます」と、生体分析化学の博士アーバン・キーナン氏はエポックタイムズに語りました。「和牛のような見た目になるはずがありません」

研究結果もキーナン氏の観察を裏付けています。筋肉内脂肪の増加はメタボリックシンドロームと関連しており、定期的な運動は筋肉内脂肪を減らし、筋力を維持することで、筋肉の質を保つのに役立ちます。
 

3.質の良い睡眠

睡眠中、私たちの体は修復や調整を行っています。十分な休息が取れないと、ホルモンのバランスが崩れ、代謝ストレスの悪循環が生じてしまいます。

チェン氏によると、睡眠不足は代謝機能の低下を引き起こすといいます。

「ストレス反応で炭水化物を多く食べがちになり、体内のコルチゾールレベルが高くなるからです」と彼は説明します。「コルチゾールはインスリンレベルに影響し、糖の調整に関わります。その結果、『体がストレスだから炭水化物が必要だ』という危険なサイクルに陥ってしまいます」

健康な人でも、たった一晩の部分的な睡眠不足でインスリン抵抗性が起こることが確認されています。

アスプリー氏は、皮膚にも光を検知する受容体があると指摘しました。このため、睡眠中のアイマスクだけでは十分ではなく、真っ暗な部屋が不可欠だと述べています。

アスプリー氏は、睡眠を改善するための第一歩を共有しました。

「寝室のすべてのLEDを抜くか、黒いテープで覆ってください。煙探知機の小さな点滅する緑の光でさえ例外ではありません」と彼は述べました。

2024年7月に『Nutrients』誌に掲載された研究によると、睡眠の主な目的は代謝にある可能性があるとされています。著者らは、睡眠の必要量は個人のミトコンドリア機能と関係していると指摘し、強い倦怠感がヒトのミトコンドリア疾患の一般的な症状であることを挙げています。さらに、脳が睡眠と空腹を同様の神経プロセスで調整していることを示し、睡眠欲求(起きている時間が長くなるほど強まる眠気)が共通のミトコンドリア由来である可能性を提案しています。

「5時間、4時間睡眠が名誉の印だった時代がありました」とチェン博士は述べまあす。「今は、5時間か4時間寝ないとタフじゃないみたいに思われてるんです」
 
(翻訳編集 日比野真吾)

ニューヨークを拠点とする健康レポーターである。栄養療法の専門家であり、機能的栄養と自然食品に重点を置いた活動を行っている。