祖父母なら誰でも、「3歳児の相手は本当に大変」とうなずくでしょう。しかし実は、それが脳にとって最もよいことのひとつである可能性があります。
研究で分かった孫育ての効果
『Psychology and Aging(心理学と加齢)』誌に掲載された研究では、「英国高齢化縦断研究(English Longitudinal Study of Ageing)」のデータを用い、50歳以上の約1万人を対象に分析が行われました。研究者たちは、孫の世話を補助的に手伝っているが主たる養育者でも同居者でもない祖父母と、育児に関わっていない祖父母を比較しました。このうち約1,700人については、認知機能の変化を長期にわたって追跡しました。
研究開始時点では、世話をしている祖母・祖父ともに、世話をしていない人たちよりも認知機能のスコアが高いことが分かりました。認知機能は、1分間にできるだけ多くの動物名を挙げる「言語流暢性」と、単語リストをすぐに、またはしばらく後に思い出す「エピソード記憶」によって評価されました。
しかし約5年間の追跡の結果、認知機能の低下が緩やかだったのは、孫の世話をしている祖母のみでした。この違いは、世話の内容そのものよりも、役割や関わり方の違いを反映している可能性があると研究者は考えています。興味深いことに、世話の頻度や具体的な内容は認知機能の変化を予測しませんでした。つまり、重要なのは「どれだけ関わっているか」ではなく、「関わっていることそのもの」である可能性が示唆されています。
全体として、より多様な育児活動に関わっている祖父母ほど、言語流暢性や記憶力のスコアが高い傾向がありました。研究者はこれを、複数の認知システムを同時に使うことで脳を「クロストレーニング」している状態に例えています。クロストレーニングとは、複数の活動を組み合わせて全体的に鍛える方法のことです。
また、過去の研究では週最大39時間までの適度な育児を行っている祖父母は、認知症リスクが約24%低いことも示されています。
祖父母の役割が脳によい理由
孫の世話は複数の経路を通じて脳の健康を支え、それらが重なり合うことで高齢期に脳によい環境を作り出す可能性があります。
ウェイン州立大学で祖父母の健康への影響を研究する老年学・心理学助教授のロドレシア・スニード氏は、「祖父母としての役割は、認知機能を健康に保つための生活習慣の重要性と非常によく一致しています」と述べています。
スニード氏によると、孫の世話には精神的な刺激・社会的交流・身体活動が自然と組み合わさっており、これらはいずれも脳の健康に寄与する要素として確立されています。
また、モナッシュ大学の女性健康加齢プログラムディレクターで神経内科医のカサンドラ・スゾーキ氏は、「孫の世話をしている祖父母なら誰でも、子どもたちが常に頭を働かせ、体を動かし、バランス感覚を鍛え、愛情を感じ、また愛されていると実感させてくれることを知っています」と述べています。「時には疲れますが、そのおかげでよく眠れるという利点もあります」
脳への刺激と認知機能の「ストレッチ」
日常的な育児は、起床・食事・遊び・運動といった生活リズムを整えます。こうした規則正しい生活は、睡眠・気分・注意力を安定させ、不規則で孤立した生活によって起こりがちな認知の低下を防ぐ助けになります。
また、子どもとの関わりは脳に継続的な負荷を与えます。日々の育児は、神経科学者が「環境エンリッチメント(刺激に富んだ環境)」と呼ぶ状態に近く、新しく刺激的な経験が「神経可塑性」(脳が新しいつながりを作り強化する能力)を高めることが知られています。
アルツハイマー協会の研究「U.S. POINTER(生活習慣が認知機能低下を防げるかを調べる研究)」の副責任者で医療アドバイザーを務めるトーマス・ホランド医師は、「祖父母が宿題を手伝ったり、物語を読んだり、問題を解いたり、概念を説明したりすることで、実行機能・作業記憶・言語ネットワーク・長期記憶の想起が活性化されます」と述べています。「これらは、使わなければ加齢とともに衰えやすい機能です」
さらに、こうした精神的活動が特に有効な理由は、長い間使っていなかった能力を再び使うことにあるといいます。「九九を説明したり歴史的出来事を思い出したりするなど、脳は久しぶりに『ストレッチ』を求められているのです」とホランド医師は述べ、使われていない筋肉を鍛える運動に例えています。「このような認知的努力は回復力を高めます」
こうした刺激は、時間をかけて「認知予備力(加齢や病変に対処する脳の能力)」を高め、「使わなければ失われる」という原則にも合致します。
「脳の健康を維持するには、脳全体を使う必要があります」とスゾーキ氏は述べています。孫の世話は、バランス・動作の調整・感覚の活用・記憶・計画・問題解決といった幅広い能力を使わせ、言語的思考だけにとどまりません。
「人を助ける喜び」が脳にもたらすもの
多くの祖父母にとって、孫の世話は深い意味を持つ利他的な行為です。研究によると、人を助ける行為やケアは脳の報酬系を活性化し、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質の分泌を促します。これらは気分・意欲・注意・学習に関わり、研究者が「ヘルパーズ・ハイ(人助けによる高揚感)」と呼ぶ状態をもたらすことがあります。
ブラジルの高齢者180人を4年間追跡した研究では、日常的に利他的な行動をとる人は、開始時点で記憶力・思考力・実行機能のテストで高いスコアを示し、2年後・4年後の追跡でも同年代より優れていました。この効果は、精神的な刺激・社会的交流・ストレスの緩和・人生の意味や目的意識の強化が組み合わさった結果と考えられています。
ドーパミンやセロトニンの増加が直接的に認知機能を向上させるとは断定できませんが、感情的に報われる行動は、注意や学習を支える神経化学的システムを維持する助けになる可能性があります。
また、祖父母は間接的な恩恵を受けることもあります。例えば孫のために料理をする際には、自分のためだけに作る場合より健康的な食事を用意する傾向があります。「この点についての研究はまだ十分ではありませんが、子どもたちが残したカットフルーツや野菜を祖父母がどれだけ口にしているか、想像してみてください」とスゾーキ氏は述べています。
目的意識が脳を守るメカニズム
人生の目的意識は、特に高齢期の脳にとって重要であると考えられています。1万3,000人以上を最大15年間追跡した研究では、目的意識が強い人は認知障害や認知症のリスクが28%低いことが分かりました。
この研究では理由までは明らかにされていませんが、目的意識の高い人は学び続け、地域社会に関わり、精神的に活発であり続ける傾向があるため、長期的に認知的回復力が高まると考えられています。
祖父母としての役割は、特に自発的で感謝されるものであれば、こうした目的意識を自然に育んでくれます。「高齢者は抽象的な健康目標よりも、個人的で具体的な目標に動かされることが多い」とホランド医師は述べています。「孫と長く遊んだり抱いたりするために、もっと丈夫で、柔軟で、元気でいたいと考えるのです」
こうした動機が、運動習慣の改善・食事の質の向上・睡眠の改善・ストレス管理の向上につながり、これらはいずれも脳の健康と認知的回復力の基盤として知られています。
ある研究では、孫の生活に積極的に関わっている祖父母は、関わっていない人に比べて人生の意味を強く感じ、ストレスやうつ症状が少ないことが報告されています。慢性的なストレスやうつが、炎症や記憶に関わる脳領域の変化と関連していることは、多くの研究で示されています。尊重され、価値を認められる感覚は、社会的なつながりや目的意識を強化し、これらは健康的な認知老化と関連しています。
こうした結果は、「役割強化理論」とも一致しています。重要な役割から退くのではなく担い続けることで、自分らしさ・関与・目的の機会が広がり、幸福感が向上すると考えられています。
また、子どもの世話は感情的に豊かな関わりを伴い、感情調整や記憶に関わる海馬・前頭前皮質といった脳領域を刺激します。「前向きな社会的交流は炎症シグナルを低下させ、こうした脳領域にダメージを与えかねないストレスホルモンを減らします」とホランド医師は述べています。
ケアの状況が結果を左右する
祖父母としての役割には認知的な保護効果がありますが、その恩恵はケアの種類や強度によって異なることが研究で示されています。
2023年の研究では、主たる養育者でも同居者でもなく補助的に世話を手伝っている祖父母ほど生活満足度が高く、その主な理由は、つながりや存在意義を感じやすいことにありました。一方、同居や完全な養育を担う場合には同様の効果は見られませんでした。
117の研究をまとめたレビューでも同様の結果が示されています。多くの場合、同居せずに世話を手伝う祖父母(送迎・日常ケアの補助・連絡の維持・時折の支援など)は、健康状態や幸福度が高い傾向がありました。一方、同居や養育といったフルタイムのケアは、健康状態や幸福度の低下と関連することが多く見られました。
専門家は、その主な理由としてストレスを挙げています。
ホランド医師によると、適度で意義あるケアは豊かな経験となる一方で、慢性的に負担の大きいケアはストレス反応を繰り返し引き起こし、コルチゾール(ストレスホルモン)が慢性的に高い状態を招く可能性があります。
「無理なくこなせる意義ある役割であれば、認知機能の健康を支えることができます」とスニード氏は述べています。「しかし、手に負えないほどの負担やストレスを感じる場合には、同じような効果は期待できないかもしれません」
また、「適度」と感じる基準は人によって大きく異なります。「私たちはみんなそれぞれ違います。同じ人でも時期によって感じ方は変わります」とスニード氏は述べています。
さらに、性別もこうしたバランスに影響する可能性があります。2024年に1万人以上の祖父母を対象に行われた研究では、同居せずに孫の世話をしている人は、世話をしていない人より認知症リスクが低いことが分かりました。祖母の場合は軽いケアでもリスク低下と関連していましたが、祖父の場合はより深い関与が有益である傾向がありました。
研究者はこの違いについて、従来の社会的役割が影響している可能性を指摘しています。女性はもともと社会的なつながりやケアの役割が強いため軽い関与でも効果がある一方、男性は同様の刺激を得るためにより深い関与が必要なのかもしれません。
最終的に重要なのは、祖父母がその役割をどのように感じているかかもしれません。ある研究では、祖父母・ボランティア・地域の一員など複数の意義ある役割を持つ高齢者は全体的な健康状態が良好で、忙しさが幸福感を損なう証拠は見られませんでした。つまり、役割が自発的で意義があり、社会的なつながりを伴うものであれば、活動や責任は負担にならないのです。
孫と関わる機会がある人にとって、祖父母としての役割は健康的な老化を促すきっかけとなる可能性があります。
「これは単なるひとつの活動ではなく、運動・認知・食事・社会的交流・目的意識・ストレス軽減を一体として含む、生活スタイルのパターンなのです」とホランド医師は述べています。
(翻訳編集 井田千景)
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