動脈硬化と胸の痛み 見逃してはいけない体の警告サイン

米国上院議員リンゼー・グラム(Lindsey Graham)氏が急逝した後、「大動脈解離」という聞き慣れない病名が多くの人の注目を集めました。なぜ、昨日まで元気だった人が、翌日には突然亡くなってしまうのでしょうか。中には、胸に激しい痛みを感じてから意識を失うまで、わずか数分しかない場合もあります。これは一体、どのような病気なのでしょうか。

先祖代々の中医師である楊暁光(Garry Yang)医師が、中医学の観点から動脈硬化の原因と、人々が注意すべき身体からの警告サインについて解説します。

大動脈解離は命に関わる可能性があります

法医の説明によると、初期検査では、グラム氏は動脈硬化性心血管疾患による大動脈解離(「大動脈裂離」とも呼ばれます)で死亡したことが分かりました。

成人の心臓は1日に約10万回拍動します。心臓が拍動するたびに、高い圧力の血液が大動脈へ送り出されます。大動脈が長年にわたって大きな圧力に耐えられるのは、単なる一層の血管壁ではなく、内膜、中膜、外膜という3層の構造によって支えられているためです。

正常な状態では、この3層の血管壁が密着し、心臓から繰り返し加わる高い圧力に耐えています。本当の危険は、多くの場合、最も内側にある内膜が破れることから始まります。最初の裂け目ができると、血流が直ちに血管壁の中へ入り込みます。心臓が1回拍動するたびに、血液が裂け目へ流れ込み、さらにもう一度拍動すると、血液はより深い部分へ入り込んでいきます。このようにして、もともと密着していた血管壁が高圧の血流によって層ごとに押し広げられ、剥離し、血管壁が徐々に引き裂かれていきます。血液の一部は、心臓へ向かう本来の流れから外れて、血管壁の中にできたすき間へと入り込んでいきます。まるで高速道路の本線から、車が脇道へはみ出してしまうように、血液の通り道そのものは次第に狭くなっていき、最終的には完全に閉塞してしまいます。

楊医師は、動脈硬化にはさまざまな種類があり、大動脈が閉塞すると血液が心筋に十分に届かなくなり、心筋は血流不足(虚血)によって壊死してしまうと指摘します。「これは不可逆的です。心筋が一度壊死すると、その進行は非常に速く、血流が完全になくなれば、数分しかありません」

一般によく知られている冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞について、楊医師は、冠動脈疾患の正式名称は「冠動脈硬化性心疾患」であり、冠動脈が完全に詰まってしまうと、心筋への血液の供給が絶たれ、短時間で深刻な結果を招く可能性があると説明します。しかし、本当に深刻な発作が起こる前に、多くの人はすでに身体から発せられる警告を何度も経験しています。
 

軽い胸部圧迫感も警告サインかもしれません

楊医師によると、多くの人には、まったく症状がないわけではないといいます。「少し痛い、少ししびれる、少し胸が苦しい、といった、どれも我慢できる程度の症状です」

問題は、人は慣れてしまった不調に対して警戒心を失いやすいことです。「亡くなる前日まで、その症状は我慢できるものです。本人も慣れてしまい、たいしたことではないと思っていますが、これは身体が発している警告なのです」。こうした警告を無視し続ければ、「身体は最後にはどうにもならなくなり、症状が一気に現れます。一度発症したら、もう手遅れです」

楊医師によると、血管の狭窄が90%に達すると、患者はすでに非常に強い痛みを感じています。「一般の人は何度も痛みを経験します。そのたびに狭窄が少しずつ進み、血液が通る量も少しずつ減っていきます。何度も発作を繰り返し、そのたびに症状がひどくなっていきます」

そのため、本当に注意すべきなのは最後に起きた激しい痛みだけではなく、それ以前から繰り返し現れていたにもかかわらず、我慢していた症状だとしています。

動脈硬化は身体のほかの部位にも起こる可能性があります。楊医師は、しかし心臓と脳はほかの臓器とは異なると説明します。「腎臓は一つが壊れても、もう一つあります。ほかの部位が壊れても、別の経路を通ることができます。しかし、脳と心臓はそうはいきません。別の経路を通ることができないのです」

例えば、脚などのほかの部位に血栓ができた場合は、治療を受けるまでに時間的な余裕があります。しかし、心臓は違います。「冠動脈が障害されれば、心臓は動かなくなります」

なぜ血管にこのようなものができるのでしょうか

楊医師は、グラム氏の病因を中医学の観点から見ると、「このような人は痰が特に多いのです。その動脈硬化の部分はスポンジのようで、粘り気があります。中医学では、これを『痰』と呼びます。その痰がどんどん大きくなり、そして裂けたのです」と説明します。

動脈硬化は短期間で形成されるものではありません。楊医師は、「これは形成されるまでに非常に長い時間がかかります」と述べています。

西洋医学で一般的に行われている治療法について、楊医師は「(動脈硬化を起こした部分は)柔らかいものなので、ステントを入れて圧迫すれば、それで問題はなくなります」と話します。

しかし、中医学の観点から見ると、患者が生活習慣を改めなければ、問題が再び生じる可能性があります。「徐々にまた大きくなり、再びステントを入れ、またステントを入れることになります。心臓には限りがありますから、それではいけません」

楊医師は、血管の狭窄・閉塞を治療するだけでなく、より重要なのは「なぜこのようなものができたのか」を考えることだと注意を促します。

楊医師は、「人体の血液は水のようなもので、循環し、流れ続ける必要があります。高血圧があると、この『水』の一部が流れにくくなります。流れなくなると、人体の細胞がほかのものを吸収するため、その部分の『水』がより濃くなり、次第に粘り気が増していき、それが『痰』になるのです。これが動脈硬化です。まるでおかゆのようなもので、料理の汁に片栗粉を少し加えると粘り気が出るのと同じように、水が流れにくくなるのです」

「人体の『水』を、私たち中医学では『陰液』と呼びます。この陰液は身体の中でさまざまな役割を果たしていますが、その陰液がその場所で滞り、流れが悪くなっているのです」

楊医師は、悪い生活習慣を早い段階で改めることができれば、改善する可能性はあると述べています。「それ以上大きくならないようにすれば、時間がたつにつれて自然に萎縮していきます。最後には薄い状態になり、身体に影響を及ぼさなくなります」

 

(翻訳編集 解問)

陶静慈