超加工食品を減らすとうつ症状に変化 小規模研究で改善を確認

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の小規模な初期段階の研究によると、うつ症状のある成人は、超加工食品を減らした食事を4週間続けた後、中程度から大幅な改善を報告しました。

『JAMA Psychiatry』に掲載され、米国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けたこの予備研究は、超加工食品の多い食事と、うつ病をはじめとする精神面の障害との関連を示す一連の研究の1つです。

この研究には、平均年齢約44歳の成人20人(うち14人が女性)が参加しましたが、1人は研究を完了しませんでした。全員が体重過多で、高血圧やコレステロール値の上昇など、代謝障害を少なくとも1つ抱えていました。うつ症状に加えて、19人中14人は不安も抱えていました。

参加者は、クロスオーバー(交差)デザインで、2種類の食事を経験しました。一方のグループは最初の4週間、普段どおりの加工度の高い食事を続けました。もう一方のグループは、研究者の指導のもと、包装されたスナックやファストフード、砂糖入り飲料などを避け、超加工食品を減らした食事に切り替えました。4週間後、両グループは食事を入れ替えました。

超加工食品の摂取量を85%超減らした人は、うつ症状に中程度から大幅な改善がみられ、一部では不安もわずかに軽減しました。

「印象的なのは、参加者が食べるものを変えたとき、症状がどれほど早く変化したように見えたかです」と、ニューヨーク市の「Comprehend the Mind」でディレクターを務める神経心理学者のサナム・ハフィーズ氏はエポックタイムズに語りました。同氏は研究に関与していません。

これは、食べ物が体重、コレステロール、血糖値などの身体的な指標にしか影響しないという考えに疑問を投げかけるものだと、彼女は述べました。

「脳は体の一部なので、食べるものの質が私たちの感じ方や精神機能に影響するかどうかを調べるのは理にかなっています」と、彼女は話しました。

この試験の欠点の1つは、食事そのものの効果と、心理面が改善したほかの要因とを切り分けられなかったことです。改善した人が良くなったのは、食事のおかげなのか、体重の変化のためなのか、あるいは研究者から手厚く関わってもらえたからなのかは分かりません。参加者は自分がどちらの食事をしているかを知っており、食事は研究者が指導していました。また、参加者は全員が代謝障害を抱え、BMI(体格指数)も高かったため、結果をすべての人に当てはめられるとは限りません。

この関連を説明する仮説の1つは、腸です。研究の筆頭著者で、同大学の代謝・メンタルヘルスプログラムの創設者であるニヤシャ・チャグウェデラ医師は声明で、超加工食品が腸の保護層を傷つけ、自身が「漏れやすく、バランスの崩れた腸」と呼ぶ状態をもたらす可能性があると述べました。

「リーキーガット」は、腸の透過性が高まった状態を指す俗称です。腸の内壁の密着結合が緩み、毒素や細菌、消化されていない食べ物の粒子などが血液中に入り込みます。

「この腸の損傷が、全身に軽度の慢性炎症を生み、それがうつの直接の原因になったり、うつになりやすい状態をつくったりすることがあります」と、チャグウェデラ医師は述べました。「言い換えれば、ジャンクな加工食品は腸を傷つけ、その影響が脳にまで及ぶことがあります」

ただし、これはまだ仮説にとどまっています。

ハフィーズ氏は、「研究者は、腸内細菌叢の変化が症状の改善の原因だと証明したわけではありません」と述べました。
 

中毒性を狙って設計された食品

超加工食品は工業的に製造された製品で、保存料、人工着色料、香料、乳化剤などを含むことが多くあります。安価で手軽なうえ、魅力的に感じられるよう設計されています。

チャグウェデラ医師によると、こうした食品は、快楽や報酬に関わる脳内化学物質ドーパミンの放出を促し、「もっと食べたい」という欲求につながります。

ただし、超加工食品が欲しくなるというだけで、それに依存していることにはならないと、精神科医で、ノースカロライナ先進神経健康研究所の創設者でもあるビナイ・サランガ(Vinay Saranga)医師はエポックタイムズに語りました。同医師は研究に関与していません。

一方で、同医師は「研究が進むほど、超加工食品が報酬を強く促し、食べる行動を強めることが見えてきます」と述べました。
 

腸の健康と心の健康のつながり

腸と心の健康のつながりは、「腸脳軸」として知られる、複雑で双方向の通信ネットワークにあります。脳と消化管は独立したシステムではなく、絶えず素早く情報をやり取りして、感情、ストレスレベル、認知機能に直接影響を及ぼしています。このつながりは非常に深く、科学者はしばしば腸を「第二の脳」と呼びます。

腸と脳の関係は、いくつかの経路で成り立っています。

迷走神経:情報のハイウェイ

迷走神経は体内で最も長い神経の1つで、脳と腸を直接つなぐホットラインの役割を果たします。この神経を通る信号の最大90%は、腸から脳へと向かいます。つまり、消化器系は常に自らの状態を中枢神経系に伝えており、日常の気分やストレス反応に大きな影響を与えているということです。

脳内の化学物質

脳は、幸福感、落ち着き、意欲などを調節するために、神経伝達物質と呼ばれる化学物質に大きく依存しています。驚くことに、こうした「気分をよくする」化学物質の大半は、脳ではなく腸で作られます。セロトニン(幸福感)、ドーパミン(意欲)、ガンマアミノ酪酸(落ち着き)などがその例です。

腸の健康が損なわれると、こうした化学物質を作る仕組みの働きが鈍り、不安やうつの症状を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。

腸内細菌叢

腸内にいる数兆もの細菌、ウイルス、真菌は、炎症や脳のストレス反応に影響を与える可能性のある化合物を作り出します。

悪玉菌が善玉菌を上回る状態は「ディスバイオーシス」と呼ばれます。この状態になると、全身の炎症を引き起こす有害な化合物が放出されることがあります。慢性炎症は血液脳関門を突破し、ブレインフォグ、認知機能の低下、気分障害の一因になりえます。
 

食事によるうつ治療の可能性

サランガ医師とハフィーズ氏は、いずれも、食事は薬物療法や心理療法の代わりにはならないと述べました。

「食事と腸の健康は、メンタルヘルスを広い視野でとらえるうえで考慮する価値がありますが、確立された治療の代わりにはなりません」と、ハフィーズ氏は述べました。

サランガ医師は、この結果は、腸の健康に取り組むことが、心理療法や薬物療法といった従来のメンタルヘルス治療を補う有効な手段になりうることを「間違いなく」示唆していると言います。ただし、治療の代わりにはなりません。

「うつの患者さんに、薬をやめて食事だけに気をつけるよう勧めることは決してありません」と、同医師は述べました。「食べるものは、パズルの1ピースにすぎません」

この研究は、脳と体の間につながりがあることを示唆していると、同医師は述べました。食事、運動、睡眠、その他の生活習慣の変化によって体の根本的な生物学的状態が改善すれば、それは「精神科の治療が効果を発揮するためのよりよい環境」を整える助けにもなるかもしれません。

「腸、免疫系、代謝、脳は、すべて互いに情報をやり取りしています」と、サランガ医師は述べました。

チャグウェデラ医師と研究チームは、2028年に研究の第2段階の参加者募集を始める計画です。

 

(翻訳編集 日比野真吾)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。