スマホ認知症とは何か 目と脳を休ませる食養生と生活習慣

私はよく、白内障や緑内障を患いながらもスマホが手放せない患者さんに出会います。そこで思わずこう尋ねてしまいます。「あなたにとって大切なのは目でしょうか、それともスマホでしょうか?」

スマホは目だけでなく、脳にも影響を与えます。ある患者さんはこう話していました。「さっきメッセージを読んだばかりなのに、振り向いたらもう内容を忘れています。既読なのに返信していないことさえ自分で気づきません……。もしかして認知症でしょうか?」

日本の脳神経外科医である奥村歩氏は、このような「見たのに覚えていない」現象を「スマホ認知症」と呼んでいます。物忘れや注意力の低下として現れることがありますが、典型的な認知症のような退行があるとは限りません。その原因は、長時間にわたり断片的な情報を受け取り続けることにあるとされています。
 

スマホ認知症の症状

以下のような状態に当てはまるか、簡単に確認してみましょう。

  • リアルタイムの情報を見逃すことが怖い
  • ベッドに入ってからもスマホを見続ける
  • 通知音が鳴った気がする「幻聴」が時々ある
  • 仕事や家事の効率が低下している
  • ぼんやりしたり上の空になることが増えた
  • 約束や話そうと思っていたことを忘れやすい

最初の3項目だけであれば、主にスマホの使用習慣の問題かもしれません。しかし、後半の3項目が目立って増えている場合は、注意力や記憶力に影響が出ている可能性があり、特に注意が必要です。
 

スマホ依存に見られる3つの体質

同じようにスマホが手放せなくて、イライラする人もいれば、物忘れが増える人もいます。また、夜更かしをするほど興奮してしまう人もいます。中医学の観点では、その背景には異なる体質のアンバランスがあると考えられています。

臨床では主に「肝気鬱結」「心脾両虚」「腎精不足」の3つに分類されます。ここでいう肝・脾・心・腎は、西洋医学の解剖学的な臓器そのものではなく、身体機能のシステムを指しています。

例えば、中医学でいう肝は感情の調整やストレス、目の働きと関係があります。脾は消化や思考を司り、心は循環機能だけでなく睡眠や精神状態とも関係しています。腎は回復力や脳機能と深く関わっています。

1.肝気鬱結タイプ

スマホを手放すと不安になる 。

症状:

スマホが手元にないと緊張しやすく、怒りっぽくなり、感情の起伏が大きくなります。

中医学的な調整:

多くは肝の疏泄機能が失調し、気の巡りが滞っている状態です。臨床では加味逍遙散や柴胡疏肝散などを用いて、肝気を巡らせ気鬱を改善する治療が行われます。研究では、逍遙散系の処方がストレス反応を調整し、不安症状の緩和に役立つ可能性が示されていますが、使用には医師による体質評価が必要です。

食養生:

バラと陳皮のお茶(医道心伝制作チーム/大紀元)

【バラと陳皮のお茶】

材料:

  • 乾燥バラの花 3~5輪
  • 陳皮 3~5g

作り方:

バラと陳皮を軽く洗い、カップに入れます。300~500ml程度の熱湯を注ぎ、5~10分蒸らしてから飲みます。1~2回ほどお湯を継ぎ足して楽しめます。1日1~2回、温かいうちに飲むのがおすすめです。お好みで少量のはちみつを加えてもよいでしょう。

効能:

バラには肝気を巡らせ、気分を安定させる働きがあります。陳皮には気を整え胃腸の働きを助ける作用があり、消化促進や膨満感の軽減に役立ちます。両者を組み合わせることで、ストレスや緊張、気の巡りの悪さによる不調の改善に役立ち、心身をリラックスさせる効果が期待できます。

注意事項:

バラはやや温性のため、熱がこもりやすい体質の方は飲み過ぎに注意してください。

胃腸が敏感な方は、ご自身の体調を確認しながら飲用してください。

長期間の情緒不安定や不眠がある場合は、医療機関での診察をおすすめします。

 

2.心脾両虚タイプ

言葉が出てこない、集中できない 。

症状:

集中力が続かず気が散りやすい、話している途中で言葉が出てこなくなる、記憶力が低下するなどの症状があり、疲労感や動悸を伴うこともあります。

中医学的な調整:

心脾両虚によって心神が十分に養われていない状態と考えられます。長期間の過度な頭脳労働や休息不足で、脳が十分に「充電」されていないような状態です。調整の重点は心と脾を補い、精神を安定させることにあります。神経をリラックスさせ、睡眠を改善しながら、徐々に活力を回復させていきます。

食養生:

遠志と蓮の実のお粥(医道心伝制作チーム/大紀元)

【遠志と蓮の実のお粥】

材料:

  • 遠志 30g
  • 蓮の実 15g
  • うるち米 50g
  • 水 500ml

作り方:

まず遠志の芯と皮を取り除き、蓮の実とともに粉末にします。うるち米を水で約25~30分煮て粥にした後、薬材の粉を加えてひと煮立ちさせれば完成です。

効能:

遠志には心を落ち着かせ、脳を活性化する働きがあります。蓮の実は心と脾を養い、うるち米は気を補います。この組み合わせは、中医学で物忘れや不眠の養生によく用いられます。

研究によれば、遠志に含まれる有効成分は神経伝達や記憶機能に関係する仕組みに作用する可能性があります。また、蓮の実にもさまざまな生理活性成分が含まれており、鎮静作用や抗不安作用が期待されています。

注意事項:

遠志は苦味があるため、長時間煮込まないようにしてください。

この食養生は穏やかな体質改善を目的としており、効果の確認には一定期間の継続が必要です。

胃潰瘍や胃の不調がある方は、使用前に判断して貰う事をおすすめします。

 

3.腎精不足タイプ:

慢性的な夜更かしと無気力

症状:

長期間の夜更かしにより反応が鈍くなり、集中力が低下します。めまい、耳鳴り、腰のだるさなどを伴うこともあります。

中医学的な調整:

腎は人体のエネルギーを蓄える場所に例えられます。腎精が不足すると脳髄が十分に養われません。そのため、腎を補い精を養い、脳髄を充実させることが治療の基本となります。

食養生:

益精抗呆方(医道心伝制作チーム/大紀元)

【益精抗呆方(えきせいこうほうほう)】

材料:

  • 熟地黄 30g
  • 何首烏 15g
  • 肉蓯蓉 15g
  • クコの実 15g

作り方:

薬材に800~1000mlの水を加え、20~30分浸した後、30分ほど煎じて薬液を取ります。さらに600~800mlの水を加えて2回分を煎じます。2回分の薬液を合わせて600~700ml程度とし、朝晩2回に分けて温かいうちに服用します。

効能:

肝腎を補い、脳髄を養います。

注意事項:

体質改善には一定期間継続して様子を見る必要があります。

消化機能が弱い方は慎重に使用し、事前に中医師へ体質評価を依頼することをおすすめします。
 

日常でできる3つの改善ステップ:脳に再び休息を学ばせる

体質に応じた養生だけでなく、生活習慣を見直して過度に働き続けている脳を徐々にバランスの取れた状態へ戻すことも重要です。

診察室では、鍼灸治療を受けながらもスマホを見続ける患者さんをよく見かけます。中医学では「心身合一」を重視します。注意力が絶えず外部情報に引きつけられていると、脳は安定した状態に入りにくくなり、治療効果にも影響します。

中医学では人体のエネルギーを「陰陽」に分けます。陰は夜、陽は昼を表し、静と動、冷と熱の関係にあります。陰陽のバランスは健康の基本です。長時間にわたり高頻度で情報を受け取ることは、過度な「陽」の活動に相当します。静かな時間や何もしない時間が不足すると、「陰陽失調」となり、不眠や、疲れているのに眠れない状態を招くことがあります。

一日の中で脳のスピードを落とすための参考ガイド(医道心伝制作チーム/大紀元)

1.「脳の余白時間」を作る

一日の中で意識的にオフラインの時間を設け、陽気を収めて心を休ませましょう。

おすすめの時間帯:

起床後1時間、正午(11:00〜13:00)、就寝前1時間。

朝晩の重要な時間帯:

起床直後と就寝前は陰陽が切り替わる重要なタイミングです。電子機器の使用を減らすことで、心を落ち着かせ、目を休ませることができます。

子午覚の養生:

子時(23:00~1:00)は睡眠を取るべき時間です。また午時(11:00~13:00)には30~50分程度の昼寝をすると、脳を一時的に過負荷状態から解放し、長時間の目の使用による不快感も和らげることができます。

 

2.「記憶を保持する力」を鍛える

現在は、疑問があればすぐスマホで調べる人が多くなっています。その結果、脳は情報を受け取るだけになり、自ら記憶したり考えたりする機会が減っています。次の習慣は、注意力を再び集中させる助けになります。

・週に1回は料理をする

料理では手順を覚え、順序を考えながら進める必要があります。また、火加減や食材の変化を目で観察するため、脳の活性化や目と手の協調にも役立ちます。

研究では、自炊の頻度が高い人ほど認知機能の低下リスクが低い傾向が見られています。週1回でも料理に挑戦することは、認知障害の予防に役立つ可能性があります。

・ナビへの依存を減らす

外出時にはスマホのナビに頼り過ぎず、道路名を覚えたり、街並みを観察したり、方向を判断したりしてみましょう。脳を再び空間記憶に参加させることができます。

研究では、GPSナビゲーションの長期使用が空間記憶能力の低下と関連する可能性が指摘されています。

・手書きで記録や日記を書く

その日の考えや出来事を書き留めることで、思考を整理し記憶を強化できます。また、画面を長時間見続けることによる目の負担も軽減できます。

手書きは脳をより積極的に思考へ参加させます。研究でも、感情や体験を書き出す表現的ライティングが、頭の中の雑念を減らし、集中力や作業記憶の向上に役立つことが示されています。
 

3.身体を動かして脳と目をリセットする

 脳が長時間情報過多の状態にあるときは、規則的な身体活動によって過度に興奮した注意力を画面から身体へ戻すことができます。

・朝:太陽の光と景色で脳を目覚めさせる

外へ出て散歩し、スマホを見るのは避けましょう。遠くと近くを交互に見ることで目をリラックスさせることができます。また、朝日を浴びることは体内時計や睡眠リズムの調整にも役立ちます。夜更かしが多く、睡眠の質が良くない人にとって、簡単な重要な習慣です。

・昼または仕事の合間:目と脳を短時間休ませる

外出できない場合でも、簡単な方法で神経系をリラックスさせることができます。その代表的な方法の一つが「手のひらで目を覆う方法」です。

掌で目を覆う療法のイメージ図(医道心伝制作チーム/大紀元)

【5分間の掌覆眼法】

椅子に楽に座り、両手をこすり合わせて温めた後、軽く目を覆います。光が入らないようにして、目を暗い状態に保ちます。その間、ゆっくりとした呼吸(吸う4秒、吐く8秒など)を行い、肩や首、身体全体の力を自然に抜きます。約5分間続けます。

・夜:簡単な動作で脳のスピードを落とす

夕食後や就寝前には、食器洗いや洗濯物をたたむなどの単純な反復動作を行い、注意を画面から離しましょう。

情報があふれる現代において、脳が最も必要としているのは休息と余白、そして深く考えるための空間です。適度にスマホを手放し、注意を今この瞬間へ戻し、目の前の人や出来事に意識を向けてみてください。きっと、より多くの穏やかさと美しさを感じられるでしょう。
 

本文で紹介した生薬を実際に使用する際は、ご自身の体質に合わせて中医師の評価を受けたうえで調整することをおすすめします。

(翻訳編集 解問)

伝統中国医学の医師であり、台湾の「心醫堂中醫診所(しんいどうちゅういしんじょ)」の院長である。2008年に中医学を学び始め、台湾の中国医科大学で学士号を取得。