「胡鑫宇事件」をいち早く報じて謎の失踪を遂げた動画配信者の李前偉氏の写真。胡鑫宇さんの遺体が見つかったという学校の裏山で見つかったとされる李前偉氏のボロボロな写真。(ネット投稿画像)

学校が配布した「自殺しない宣言」 中国で次々と消える不都合な「ヒト」と「声」

旧正月の休みも終わり、学校の新学期が始まった中国。ある日、学校から子供が持ち帰った最初の配布物が、なんと「自殺しない宣言」の署名用紙だった。

「不自殺承諾(自殺しないことを承諾)」と題された書面。ネット上に流出したこの衝撃的な書面が物議を醸している。

寄せられたコメントには「サインするとも。もしも僕がサイン後に死んだり、失踪したりすれば、それは間違いなく他殺だ!」という、書面の馬鹿馬鹿しさを逆手にとった答えもある。

また「こんな書類は何の意味もない。本当に政府のニーズに合致すれば、自殺か他殺かなどどうでもいい。一家ごと消されるのがオチだ」といった背筋が凍るような指摘も寄せられた。

コメント中にあった「一家ごと消される」は、今も華人圏で騒がれている高校生失踪事件である「胡鑫宇事件」と、その被害者家族の境遇を暗示しているとみられる。

次々と消されていく不都合な「ヒト」と「声」

昨年10月に理由もなく「失踪」し、今年1月末に変死体で「発見」された江西省の高校1年生・胡鑫宇さんは、状況証拠に不審な点が多いにもかかわらず、警察当局によって「自殺」と断定された。

胡鑫宇さんの家族は遺体発見後から、どこかへ隔離されて、その安否もふくめて行方不明になっている。警察の管理下に置かれ、一切声を上げられないでいるという。

当初から、胡鑫宇さんは「狙いをつけられて、臓器狩り(臓器収奪)に遭ったのではないか」と疑われてきた。

警察がわざわざ記者会見を開いて、芝居の台本通りに「自殺」と結論づけたことからも、その事件性は濃厚であると言える。まして、国家ぐるみの「臓器狩り」があるとすれば、恐るべき隠蔽が行われたと見るほうが合理的であろう。

そうすると、学校が生徒に配布した「自殺しない宣言」の書面は、それに生徒が署名することの重要性よりも、「胡鑫宇さんは自殺した。だから同じ悲劇を二度と繰り返してはならないのだ」ということを中国社会に浸透させたい当局の演技と見るべきではないか。

同事件の担当弁護士は「案件の取り下げ」を脅迫・強要されている。また「事件を巡り法律の改善を中国共産党高層に呼びかける」署名活動に関わった陶弁護士は、所属事務所から解雇を言い渡されている。

さらに、この事件を早期に報じた動画配信者・李前偉氏も、原因や理由が分からない「謎の失踪」を遂げており、失踪からすでに3カ月以上が経つ。

中国では「社会の完全管理」を目標に、最先端技術を導入した、徹底した社会監視システムの整備が進んでいる。

中国警察は「ターゲットを7分以内に逮捕できる!」と豪語する。それほどの「監視社会」であり、全国民の動きが「24時間見られている」状態である中国で、個人がその監視網から抜け出すのは不可能であるといってよい。

「中国は世界で最も安全だ」と誇る人たちがいる一方、中国全土で子供を含む多くの人が相次いで失踪しているのは、なぜか。

それらの失踪者は「7分以内で発見」どころか、今生二度と見つからないか、無残な遺体となって見つかるケースがほとんどである。

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