中国中央軍事委員会(CMC)副主席の張又俠が突然失脚したことを受け、中国共産党(中共)政権中枢で権力闘争が激化しているとの見方が専門家の間で広がっている。
張又俠と中央軍事委員会委員の劉振立は1月24日、調査対象となったと正式に発表された。張又俠が人民解放軍の最上級幹部の一人であることを踏まえると異例の措置と受け止められている。
発表から数時間後、中国共産党軍の機関紙である解放軍報は社説を掲載し、張又俠と劉振立が中央軍事委員会主席の責任体制を損ない、中共の軍に対する統制を脅かしたと非難した。この表現は、通常の腐敗問題ではなく政治的不忠を示唆するものと広く解釈されている。
専門家は、張又俠に対する公式の表現は、これまで習近平と近いとされた将官に用いられたものよりもはるかに厳しいと指摘する。
中国問題評論家の姜峰氏は、自身の中国語ポッドキャストで、昨年失脚した習近平の側近である何衛東に対する表現と張又俠に対する表現を比較した。何衛東は「軍指導体制を損なった」とされたのに対し、張又俠は「踏みにじった」とされたと指摘し、この用語は中共の政治言語において反乱を意味すると述べた。
姜峰氏は「これは腐敗案件ではなく反乱だ。張又俠は習近平統治の根幹を脅かしたことになる」と語った。
内モンゴル自治区政府の元法律顧問で、現在ベルギー在住の杜文しめは、中国語のポッドキャストで、張又俠と劉振立が「党を守る」ために習近平を排除するクーデターを準備していたと述べ、内部の密告により計画が頓挫したと主張した。
ただし、この主張についてエポックタイムズは独自に確認できていない。
複数の専門家は、張又俠失脚の背景には、中国共産党軍内で長年続いてきた相互不信と内部監視があると指摘する。
米国在住のベテラン政治評論家である蔡慎坤氏は、中国語のポッドキャストで、習近平が進めた軍の粛清、とりわけ李尚福元国防相やロケット軍の幹部の更迭は、張又俠が昇進させた将校を直接標的にしていたと述べた。蔡慎坤氏は、第21回党大会が近づく中、習近平が将来の人事配置に張又俠が影響力を及ぼすことを防ぐため、決定的な措置を取ったと分析した。
中共軍に近い複数の匿名情報筋はエポックタイムズに対し、張又俠と劉振立が調査対象となった後、中央軍事委員会の指示の一部が現場で実行されなかったと語った。中央軍事委員会総弁公室が発出した少なくとも二つの正式命令が実施されなかったとされ、厳格な服従を基盤とする組織において異例の機能不全の兆候とみられている。
一部の専門家は、張又俠の致命的な誤りは、習近平に反対しながらも「党を守る」姿勢を崩さなかった点にあると指摘する。エポックタイムズの中国問題上級評論家で元大学講師の王赫氏は、張又俠とその支持者は中共と決別せず、内部から是正できると考えていたと述べた。「その道は完全に失敗した。習近平自身が『党を守る』ことの体現者であり、党を守ろうとする者は党に破壊される」と王赫氏は語った。
ニュージャージー州に拠点を置く「中国民主移行研究所」の王天成所長は、エポックタイムズに対し、エリート層の内部闘争は理念よりも自己保身が動機だと述べた。
「彼らは党を守っているのではなく、自らの権力と利益を守っている。党は単なる道具にすぎない」と王天成所長は語った。
王天成所長は、習近平による絶え間ない粛清は、第二次世界大戦前にヨシフ・スターリンがソ連軍指導部を壊滅させた歴史と類似していると述べた。スターリンの行動は、ナチス・ドイツ侵攻時に赤軍を著しく弱体化させたとされる。
王赫氏は「習近平は誰も信用していない。しかし上級指揮官を絶えず粛清することで、軍内部に深い不安を生んでいる。政治的あるいは社会的危機が発生した場合、軍が忠誠を維持する保証はない」と述べた。
中国共産党離脱を支援し人数を集計しているニューヨークの非営利団体「全球退党服務中心」は、1月26日の中国語版エポックタイムズの論評で、中国が「後期中国共産党」と呼ぶ段階に入り、構造的な衰退、エリート層の恐慌、抑圧の加速が特徴になっていると警告した。
今回の軍粛清が最終的に習近平の統制を強化するのか、それとも制度的な不安定性を深めるのかは、依然として不透明である。
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