中国国境警備隊チベット人射殺事件:目撃者の証言、「これは殺戮だ」(証拠映像付)

2006年10月31日 09時34分
 【大紀元日本10月31日】今年9月30日、中国とネパールの国境地帯で、中国国境警備隊の兵士は、チベット人グループを銃撃する現場を目撃したデンマーク人の登山者ピアー・マイナ(Pierre Maina)氏(47)が大紀元の取材を受け、銃殺事件の一部終始を詳しく説明した。また、同行していたルーマニアテレビ局のカメラマンが撮影した銃撃現場のビデオ映像も公開された。事件が国際社会で暴露された後、中国当局は、軍人はチベット人に攻撃され、自衛のために銃撃したと説明しているが、マイナ氏はその説明を否定し、チベット人は武器を持たず、ひたすら逃げるだけで無抵抗だったと証言した。

マイナ氏の登山写真(Danish Cho Oyu 2006)

マイナ氏はデンマークのスラゲルセ・シィゲハス(Slagelse Sygehus)病院の外科主治医で登山愛好者協会会員。9月初めてに、マイナ氏は協会が主催した登山旅行に参加、チベットとネパールの国境地帯にあるヒマラヤ山脈中間の卓奥友山ピーク(標高8204メートル)の登山を挑んだ。登山を始めてから1ヶ月後に、登山隊はこのピークの中腹に登りつめた。高山反応があるため、マイナ氏は標高5800メートル地点でキャンプを張り宿営していた。そして9月30日の早朝、マイナ氏は中国軍によるチベット人銃殺を目撃した。

 マイナ氏による銃殺現場の目撃証言は次のとおり。

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 「我々のキャンプは、チベットとネパールの国境地帯にあった。そこはナンパ・ラ・パス(Nangpa La Pass)という場所である。9月30日早朝、私はテントの中で寝ていた。突然、密集した銃声が聞こえた。始めには、あれは銃声と感づかなかった。私はまったく銃声を聞いたことがなかったからだ。私は服を着て、5分か10分後に外に出た。目に飛び込んできたのは、我々のテントから約50メートル離れた先で、チベット人のグループが必死に走っている光景だった。外観からみると未成年のようだった。多くの中国兵士が彼らに向けて銃を発射している。そして、先頭にいる1人が銃弾に当たり倒れた。

 その時、私は一体どういうことであるかまだ把握できなかった。宿営地にあるもうひとつのテントに行き、そこにいる登山者の料理を作る人たち、チベット人2人とネパール人5人に事情を尋ねた。彼らの説明を受け、私は初めて、ネパールに脱出しようとしているチベット人が中国国境警備隊の銃撃を受けているとわかった。彼らによると、ごく一部の物売りを除き、チベット人が国境を超えネパールに渡るのは中国当局に禁止されているという。

 そのとき、初めて自分が銃撃現場の目撃者であることに気づいた。これは殺戮だ。打たれた人たちは如何なる武器を所持しておらず、反撃能力もなかった、ただひたすら懸命に逃げていた。しかし、そこは広大な氷河地帯、身を隠せる場所はどこにもない。ほとんどは若者だった。

 デンマークに帰国した私はテレビ放送で、中国当局が今回の銃撃は自衛であり、中国の兵士がチベット人たちに襲撃されていたとの説明を観た。

 銃撃の当時、私と一緒のいたルーマニア人のセギュウ・マテイ( Sergiu Matei)は、ルーマニアテレビのカメラマンで、銃撃の現場を撮影していた。デンマークテレビがそのテープを入手、TV2とDRチャンネルで放送した(現場映像は、こちらで視聴可能)。

 その映像の中で、中国兵士が立ち上がり、銃を発射した。どうして立ち上がるのか、もしあなたは人に襲撃されているとなれば、まず逃げ隠れするだろう、立ち上がるはずがない。しかし、証拠映像の中で、中国兵士が立ち上がり、銃を発射したのははっきりと映っている。その映像を見る限り、チベット人が兵士をまったく襲撃していなかった。

 この数分間の映像はあの日に発生したすべてを記録した。広大な雪原の中、20数人のチベット人は一列になって、困難ながらも前へ進んでいる。突然、先頭の1人が倒れた。そして場面は射撃している中国兵士に移動した。行進中のチベット人は銃声の中、足を止めることもなく、振り返ることもなく、ひたすら懸命に前へ前へと進んだ。しばらくすると、倒れたチベット人のそばに3人の中国兵士の姿が現れ、彼らは現場を見回した後、立ち去った。彼らの行動から分析すると、倒れこんでいたチベット人は死亡したはず。また、映像の中では「任務を執行した」中国兵士がタバコを吸い、休息を取る姿が映され、外国人登山者の宿営地のトイレに逃げ込み、身を隠したチベット人の1人も映像に納められた。

 一部の中国兵士は、我々外国人登山者が銃殺の現場を目撃したのに気づいていた。我々の距離はそれほど遠くはなかったからだ。しかし、彼らは、銃殺を躊躇う様子もなく、まるで我々が現場にいないのようだった。

 翌日、銃殺現場に大勢の軍人が現れた。彼らは明らかに銃殺された死体を捜していた。その中国兵士らは無表情で死体を氷河の隙間から川に捨て、我々が彼らの行動を見ているかどうかをまったく気にも留めなかった。この反応はますます私の心を苦しめた。

 以前から、中国の人権問題は深刻であると聞いていたが、西側国家の多くの人は、中国は現在、良くなったと言っている。今回、中国当局がこのようにチベット人を扱っていたのを目の当たりにし、私は強い衝撃を受けている。中国における実際の状況はまったく改善されていないと痛感した」。

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 マイナ氏は、「西側国家は依然、近年中国で発生していることを知らないでいる。銃殺事件後、私は現地で入手した情報によると、チベット人の生活は極めて貧困で、子どもが教育を受ける機会がほとんどない、しかも信仰自由が奪われている。そのため、多くの親は我が子の未来のために、ネパール経由で子供をダライラマがいるインドに脱出させるのである。600万人のチベット人のうち、約13万人は脱出に成功した。人々に事実を知らせなくてはならない。私はできる限りのことをやり遂げたい」と今回証言するに至った経緯を説明し、それは妻や友人から強く支持されており、国内外のメディアからも取材の要請がたくさん来ていることなどについても語った。

 最後、マイナ氏は、この事件が発生した後、多くの人が2008年北京オリンピックをボイコットすべきかどうかを議論し始めていると語った。

 マイナ氏の証言は、デンマーク社会に大きいな衝撃を与えた。デンマーク政府はこの問題を厳粛に対処し、中国当局に圧力をかけると表明した。

 また、インドにあるチベット亡命政府によると、今回の銃撃事件で、国外脱出を図ったチベット人77人のうち、少なくとも2人の少女が死亡した。それぞれ14歳と17歳。他に20人が逮捕されている。殺されたチベット人の数について、まだ明確な確認が取れていないという。

 毎年、多くのチベット人が命がけで氷と雪に包まれる標高8千メートルを超えるヒマラヤ山脈を乗り越え、ネパール経由で、チベット亡命政府があるインド北部のダラムシャーラーを目指している。

 
(記者・林達)


 

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