旬の春ニラは腎を温め、肝を活性化させる

ニラは、俗称「起陽草(陽気を起こす草)」「壮陽草(陽気を強壮させる草)」などと呼ばれ、腎を温めて胃を健やかにし、肝の詰まりをとって気をめぐらせ、瘀血(おけつ)を散らし腸を通す効果があります。人体の五臓の気血の流れを整え、瘀血を散らすことから、癌、便秘、腎虚胃寒などのさまざまな病気に予防や治療効果があります。

ニラの漢字「韮」は、中国語では「久」と「救」と同じ読み方で、長寿や命を救うという意味合いもあります。

腎を補い、陽を温め、気血を整える 

は木の芽どき、春のエネルギー(いわゆる陽気)が最も盛んで、生命に活力を与える時期です。この時期のニラは旬を迎え、陽気に満ちています。春のニラを食べることで、その効果を最大限に引き出すことができます。

春は陽気が地中から生じ、万物が生い茂り、大地が活気に満ちる時期です。ニラはその陽気を受けて腎を温めることができます。ニラは温かく、腎臓、肝臓、胃の経絡(腎経、肝経、胃経)に働きかけます。

腎経に働きかけると、温かさが腎臓に注がれ、腎を温め腎陽を補う効果があります。腎気は五行で水に属し、陽気を温めることで肝(五行で木に属する)を養います。青色が肝経に働きかけ、肝の木気は腎の水で温められ、滞りなく流れます。

肝は血液を貯蔵し、その木の気によって疏通が促され、気血も自然に流れます。そのため五臓六腑の一連の経絡の気機が正常に機能し、気滞血瘀の症状が緩和されます。さらに、ニラは胃経に働きかけ、辛味があり、肺経に通じるため、腹を温め寒さを散らし、瘀血の状態を改善できます。古典には胃癌や心筋梗塞の治療に用いられることが記されています。以上がその原理です。

例えば『神農本草経疏』では、「ニラは生の段階では辛味があって血行を促し、熟すと甘く身体を補う。肝を益し、滞りを解き、瘀血を改善する」。『本草拾遺』では、「中を温め、気を下げ、虚を調え、内臓を調和させ、食欲を促し、陽を益す」。『本経逢原』では、「ニラは昔の人が胃癌の治療に使ったと言っており、胃に死血(瘀血)がある者に適している」。

これらは腎・肝・胃の調整の機能に関するもので、腎を強化し陽を温め、肝の気を調整し、気血の循環を促し、寒さを取り除き瘀血を散らすことで、五臓が安定し、数え切れないほどの効果が自然に現れます。

現代人は夜更かしをし、陽気で精神を維持しています。陽気が腎臓に戻らないと、腎臓が冷え、肝を養わなくなります。肝の血は次第に消耗され、長年にわたって四肢が冷えたり、上熱下寒型(上半身は熱いが下半身が冷えること)になります。太陽が沈まなければ地面は冷たく、翌日の樹木や草花が温水で潤わず枯れてしまうのと同じ原理です。

『内経』:「腎は力の官なり」

『黄帝内経』には、「腎は作強の官(腎は重労働に耐える強者という意味)」と記されています。多くの人がこの言葉の意味を十分に理解していません。実際、腎は五行で水に属し、生命の源であり、先天の根本であり、元気の海です。五臓六腑の余分な精気は、腎が封じ込めて調節します。体内の気血が不足し、運動が弱まると、腎臓は強制的に精気を動かし、元陽に変えて全体の経絡の気機を押し進め、人体を救助します。

精気が次々と引き出され、補充されないと、生命を使い果たし、若白髪が生じ、腎虚(腎機能の不足)水寒(体内の寒気と湿気)になります。人体のエネルギーが衰え、生きる力が枯れ、気血が滞り、がんや腫瘍、心筋梗塞、腹痛などの病気が発生しやすくなります。作强(強さ)を生殖機能だけと理解するのは狭すぎます。

それゆえ、ニラが健康を維持する一番の効果は、エネルギーをつくり出す力を高めて身体を温めるとともに、腎の陽の気を補うことです。それによって五臓の気機を推進する力が回復します。気血が自然に流れ、生命力も回復します。これが陽を起こす草「起陽草」と呼ばれ、命を救い養命し、百病を防ぎ、長寿をもたらす最大の理由です。

もちろん、ニラは野菜であり、効果は強烈ではありません。長期的な健康維持と病気の予防に最適であり、過ぎたるは及ばざるが如しで、一度に大量に摂取することは避けるべきです。栄養のバランスを保つことは、決して忘れてはならないことです。また、その性質が温かいため、体が弱くて病気がちな人、陰虚内熱の人、傷や目の疾患を持つ人は、医師の指示に従って慎重に摂取するか、避けるべきです。

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。