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中国経済の現状と展望 その七

文・程暁農

 通常、国民の収入が社会の平均レベルであれば、消費市場は好況を維持できる。社会の平均取得が高くなれば、消費市場が拡大していくことになる。中国経済は毎年8%成長していると中共は発表している。それは国民の所得が毎年増えていることを意味する。しかし、一方では矛盾すべき現象が続いている。つまり、消費者物価指数は長期的にマイナスが続き、デフレに悩ませされている。例えば衣類、家電製品をはじめ日用品の価格は10年連続して下落し、全体の消費市場は悪化する一方である。

 政策変換により深刻化した後遺症

 前回述べたように89年の天安門事件後、中共政権は民主的な社会を放棄し、完全に少数の権力層の利益を拡大することによって、政権を固めていくという政治目標に変換した。そのため、貧富の格差はハイペースで広がり、総人口の7、8割を占める農民らは一層貧しい状況に置かれ、都市部の一般サラリーマン層は社会保障、子供教育を維持するのが精一杯という状況にある。毎年8%という成長率への貢献度を検証してみると、主に外資企業による輸出、公共事業投資によって維持されているということが分かる。

 経済の成長を支えているのは、内需という堅実的なものではないのである。このような経済発展は当然長くは続かない。そのため、新しい成長ポイントを探っている。残念なことであるが、大陸は莫大な人口による潜在的な内需好材料を持ちながら、こうした経済成長への牽引力となれないのである。この数年、公共投資による経済効果はほとんどゼロであり、ゴールデンウィークという大型連休による「連休の娯楽経済効果」に期待をかけたが、結果はほとんど失敗に終わった。また「大学教育の産業化」による経済効果ということも、まったく逆の結果となったのである。

 外資は長期的に中国経済を支えるか

 過去の15年間の中国経済成長を支えるポイントを検証してみると、外資による輸出、公共事業投資、不動産開発にまとめられるであろう。すでに紹介したように公共事業投資は行き詰まりとなってしまい、不動産開発は短期的に経済効果を得た一方、政策的に国民の貯蓄を搾り取ることとなり、マイナス効果を現してきた。残りは外資による輸出経済効果のみである。この経済効果がいつまで続くかは今後の中国経済の焦点とも言える。

 中共政権の思惑は、国内の安価な賃金体制さえ維持できれば、世界の資本市場から資金が流れてきて、輸出志向経済が相当長く続くというところにある。最近の中共政権は米国から求められた人民元改革を事実上拒否したことで、経済成長の支えとしての有効的手段が見つからなくなった。暫く外資による輸出一本にかけるしかない。しかし、様々な現象と経済環境を検証したならば、外資頼りの経済はすでに限界に達しているのである。

 貿易摩擦が深刻化、輸出志向型の限界

 一般論から言えば、輸出志向型の経済発展は、中小規模な人口の国にとって、確かに有効的な経済発展方法である。しかし、超大型の世界人口の五分の一を占めるような国にとって、これは無理なことである。中国のGDPの輸出に対する貢献度はすでに40%以上となっている。これ以上の続伸は様々な貿易摩擦をもたらすしかない。原因は簡単である。つまり、内需の不足により、国内の消費市場を牽引できず、国内で消費できない生産物は国外が頼りになる。ということは自国の失業を国外に輸出するということも意味する。現在中国の深刻な失業率とGDPの輸出に対する40%という貢献度を簡単に計算してみると、およそ5、6億の人々が外国資本により雇われるということになる。米国、日本などの国がすべての工場を中国に移転しても雇い切れないものである。

 こうした限界が見えて来ると共に、欧米社会からの批判の声も高まってきた。中国の輸出の伸び率は、年間数十パーセントとなり、この伸び率はすでに先進国が受け入れられる限界を超え、米国やヨーロッパの間での貿易摩擦は激化している。

 軍事費の拡大と不透明性

 もう一つ世界中で懸念されているのは、中共政権の毎年の軍事費拡大と不透明性である。中共政権は独裁専制政権であり、国際社会における共通の認識である、民主自由という価値観を認めない僅かな政権の一つである。そのため、中共政権は設立してからというもの、民主主義を提唱する米国を最大な敵とみなしてきた。毎年軍事費を拡大していっているが、透明性はまったく無いのである。その軍事費の拡大を支えるのは、毎年の貿易黒字である。このようなことは、米国にとって長期的には容認し難いことであろう。

 ここで強調しておきたいのは、以上の背景から、米中間の貿易摩擦は日米間、あるいは米韓間の貿易摩擦と根本的に違っているということである。もともと米国は市場経済によって民主、自由の価値観が中国社会に浸透し、中共政権にも影響していくという見方であった。そのため、米国は中国経済の改革解放政策に期待してきたのである。中国経済の8%の成長率は、ほぼ対米貿易黒字となっている。そのほか日本からのODAは、中国経済発展の初期に大きな役割を果たした。

 しかし、中共政権は言論、報道を徹底的に規制しているため、中共政権の宣伝環境に暮らしてきた多くの中国の国民はほとんど知らない。皮肉なことかもしれないが、中共政権によるニュース宣伝や水面下で歪んだ「愛国」を宣伝したならば、直ちに全国に広がる反米、反日運動となっていく。

 最近、米国のネット大手であるヤフー、グーグル社が、中共政権の人権侵害と報道自由に協力した事件の発覚をきっかけに、米国の対中政策は変化が見られるようになった。ブッシュ大統領のインドとパキスタンへの訪問は、中共政権の脅威を再認識しはじめた結果とも考えられる。これからの対中経済政策に与える影響を見守っていく必要があるだろう。

 (06/04/26 08:12)  





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