程暁容氏コラム

中国共産党政権の下で「失踪させられる」中国人たち

2017/03/29 16:00

驚きの被失踪の実態

 「失踪」とは「ある人が姿をくらまし、行方が分からなくなること」を意味するが、中国にはそれよりもっと恐ろしい「被失踪(失踪させられる)」という言葉があるのをご存じだろうか。「強制失踪」とも呼ばれ、人権活動家や人権弁護士が権力機関からある日突然拘束され、そのまま連れ去られることを言う。残された家族らは必死になって行方を捜し、関係各所に問い合わせるが、見つかることはない。近年、中国ではこうした事件が多発しており、「被失踪」は「被旅游(旅行させられる)(訳注1)」や「被采訪(やらせインタビューを受けさせられる)」「被認罪(無実の罪を認めさせられる)」などと同様に、中国のネット上ではポピュラーな言葉となった。

 3月16日、河南省鄭州市の中級法院(裁判所)が、「被失踪」した趙素利さんの家族から出された行政訴訟を棄却した。趙さんは中国人権監察(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)理事長の秦永敏氏の妻だが、本人が何らかの政治的活動に携わっていたわけではない。つまり、夫が人権活動家だという理由だけで、当局から拘束された。

 2015年1月、秦永敏氏は「海外メディアからの取材の受け入れと執筆活動が多すぎる」との理由で当局から拘束され、その後「国家政権転覆扇動罪」の疑いで刑事拘留された。だが10日間の拘留期間が終わっても釈放されず、妻の趙素利さんまでも収監された。秦夫妻は15年1月から「失踪させられ」、2年経った今でも釈放されていない。

 15年3月30日より前に、秦夫妻は一緒に収監されたが、その後趙さんについては、国家安全保衛支隊(国保)によって連れ去られたきり、行方が分からなくなっている。家族は趙さんの行方について国保に問い合わせたが、「そのような人物はおらず、知らない」との回答が返ってきただけだった。

 中国人権監察秘書長の徐秦氏によると、家族と共にあらゆる手段を講じて趙さんの行方を捜し、違法な拘束を行った武漢公安局を告訴してもいる。徐さん自身もこの件に関し、これまでに3度拘束されており、「また来るなら暴力で対応するぞ」と武漢公安局の職員7~8人に脅されている。またある時60~70万元(約968~1,130万円)の「沈黙料」と引き換え趙さんの行方調査を打ち切るよう徐さんを買収しようとしたという。

 秦夫妻失踪事件で中共政権が見せた手口は驚愕に値する。先ず秦氏に対し「国家政権転覆扇動罪」を適用し違法収監して、そして家族まで連座して、失踪者の行方を調査している者に対しては、今度は不当な拘束の事実を否定した上で、脅しと金の両面から調査を阻もうとする。事件をうやむやにするためなら、高額の口止め料を渡すこともいとわず、秦さん夫婦の居場所は決して外部に漏らさない。これが「被失踪」の実態である。

一国の政府が一人の人間を突然失踪させるなんてありえることでしょうか?

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