中国臓器狩り 中国臓器移植の闇

戦慄の「脳死マシーン」再現、中国の移植病院に潜入取材=韓国報道

2017/11/22
更新: 2017/11/22

韓国の人気番組「調査報道セブン」は11月15日、中国臓器移植の闇を取り上げた48分間の番組『殺せば生きられる』を放送した。番組によると、過去20年間で毎年約1000人、総計2万人が移植目的で韓国から中国へ渡ったという。取材チームは、中国の臓器移植病院で潜入取材を敢行し、移植を希望する韓国人の患者が、中国で移植手術を受ける様子を伝えた。

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テレビ朝鮮が制作したこの番組は主に、臓器強制摘出問題の調査第一人者であるカナダの人権弁護士デービッド・マタス氏、同国元官僚デービッド・キルガー氏、在英米国人調査ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏による著書「戦慄の臓器狩り/スローター」(2016)で報告された、臓器強制摘出の疑いがもたれている中国の移植病院で、現地取材を行った。

その結果、中国では臓器手術がいまでも医学倫理上ありえない待ち時間で行われてることがわかった。

中国衛生部(厚生省に相当)は、これまで移植用臓器は、死刑囚や自主的な提供者からと説明してきたが、上記の報告書によると年間少なくとも6万~10万件といわれる。中国は死刑執行数を「国家機密」として公表していないが、アムネスティインターナショナルは、少なくとも1023人としている。人民日報2016年4月1日の報道によると、同年の全国人体臓器提供イベントが開かれ、ドナー登録者数は3月20日の時点で6万6000人で、臓器提供数は6614件だという。

ドナー及び死刑囚からの臓器で移植手術を賄うには数が合わないことになる。前出の3氏の調査では、良心の囚人を含む収容者たちが、強制的に臓器を摘出されているのではないかと指摘する。

取材チームは10月23日、韓国人含む外国人の移植希望者を受け入れていることで知られる、中国の天津第一中心医院の東方臓器移植センターを訪れた。同センターについて中国紙・影視図書週報は2006年3月、韓国人患者について「3年間で約3000人、又外国人患者も1000人以上受け入れている」と報じている。

中国のある移植病院で働く朝鮮族の看護師によると「昨日は腎臓移植3件、肝臓移植4件だった…(移植手術まで)早ければ2〜7日、長くても1〜1.5カ月」と述べた。

「遺体焼却炉」ボイラーを備えた病院 高い煙突は撤去

遼寧省の別の病院も訪れた。瀋陽市の蘇家屯血栓病中西医結合医療センターだ。臓器摘出後の犠牲者を焼却処分するボイラー施設があったとされるが、高い煙突は、撤去されていた。

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同病院に勤めていた移植医の妻アニーさん(事務職)は、2006年、米国での大紀元主催の記者会見で、大北刑務所、馬三家教養院など刑務所から移送された法輪功学習者が、同病院で実験台となっていたと明かした。「毎日、身元の分からない学習者たちが何百人も運ばれてきた」「中国共産党は法輪功学習者に『殺しても構わぬ』という政策を実施していた」「法輪功学習者の命は何の値打ちもなく、研修医の練習台になっていた(略)病院内の仲間内では、ボイラー室は死体焼却炉と呼ばれていた」

取材を受けた中国移植ツアー参加者である韓国人患者の多くは、医師の勧めで臓器移植を受けていた。ある患者は、医師から「移植すれば、こちらでちゃんと世話してあげるから」と話していたという。

患者たちは帰国後、臓器移植経験者たちで、同じ悩みや感情を分かち合う定期会合チームを作った。しかし、臓器が誰のものか、どこから来たのかはいまだに知らない。

戦慄の脳死マシーン 重慶発

脳死機について語る韓国の臓器移植倫理協会長イ・スンウォン氏(テレビ朝鮮「調査報道セブン」スクリーンショット)

死体からの臓器提供の「死」には2種類あり、心停止か、脳死状態だ。心臓が動かず、急速にその機能が衰えてやがて身体が冷たくなる心停止よりも、血流が流れ身体が温かい脳死状態のほうが、臓器移植の条件としては適切となる。

セブン取材班は、中国で脳死研究をしていた重慶警察学院付属病院の心理学研究センターを訪問した。取材に応じた研究員は、脳死状態にさせる機械を紹介した。「脳死マシーン」と呼ばれるその機械は、横たわる人物の頭部に金属球を強く打撃させ、その衝撃波が頭蓋骨を超え脳に伝達、脳幹を停止させ、瞬く間に脳死状態にするという。番組で研究員は、実験は死体が使われていると語った。

「死体を使っている」というのは果たして本当だろうか。この研究員は、権力闘争により命の危険を感じ重慶米国領事館に逃げ込んだ公安部長で、法医学士の王立軍と共に仕事していた人物だという。

王立軍は、臓器移植プロジェクトで成果を上げ、重慶トップ(当時)の薄熙来の右腕とよばれるまで出世した。王立軍は2006年、共産党の科学技術研究基金の受賞スピーチで、数千人もの収容者の人体で実験を繰り返し、臓器摘出と移植技術を磨いたと述べている。警察あがりの王立軍は「(囚人を)処刑した後、その身体から臓器が複数の身体に移植されていくのを見て大いに感激した」と、臓器摘出をして収容者を殺害するのを、まるで悪人を退治しているかのように語った。

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前述のマタス氏はこれまで、中国が臓器摘出のために、人を脳死状態にさせる技術は「薬物注射によりもたらされるもの」と推測していた。しかし、このたび韓国のテレビ局の取材で初めて「脳死マシーン」という戦慄の機器が利用されていることが明らかになった。

番組制作チームは、「脳死マシーン」を再現した模型を製作した。韓国の臓器移植倫理協会長イ・スンウォン氏(外科専門医)は模型を見て、脳を破損させた状態(脳死状態)で、人体の臓器を長時間保存する目的のために使用する機械だと推測した。「死体を利用していないだろう」とも述べた。

殺しても生きたい?番組は視聴者に問う

セブン取材班は韓国から中国へ患者を斡旋したブローカーにもインタビューしている。このブローカーは自慢げに、2003年に300人の臓器移植希望者を集め、一度に中国に連れて行ったと語った。

中国の臓器移植センターに、韓国からの移植希望患者を紹介した韓国人医者も、セブンの取材に答えている。臓器がすぐに入手でき、生きたいと強く望む自分の担当患者が、無事に国に戻ってくるので、中国移植渡航の結果に満足していた。

この医師は、臓器の出所は政治犯だと知っているが、紹介することは後悔していないという。医師は逆に記者に聞き返した。「死に直面したら、あなたはどんな決断を下しますか?」

「殺せば生きられる」と題された同番組は、生命倫理の問題を問いかける。番組制作の背景には、韓国の臓器移植倫理協会(IAEOT)が、中国への移植渡航の問題性について韓国国民に認知してもらうよう長年、働きかけてきたことであると、終盤で明かした。主要メディアは、中韓関係の悪化、取材の危険性から、踏み出すことができなかった。セブン取材班は、2カ月にわたりIAEOTと協力し、中国にわたる現地取材を敢行した。

「あなたが神を信じようが信じまいが、悪魔と取引をしてはならない」ー。中国の刑務所で囚人の強制臓器摘出を目撃した元囚人が取材班に語ったこの言葉で、番組を締めくくった。

参考動画:生死の間ー中国 増え続ける臓器移植の謎(新唐人テレビ、2015年制作)

参考:中国臓器移植問題について映画上映会情報を配信する「移植ツーリズムを考える会

(記者・林恩恵、翻訳編集・齊潤/佐渡道世)

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