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株価の動向に一喜一憂する上海の投資家(MARK RALSTON/AFP/Getty Images)

袁剣:バブル経済に突入する中国

 【大紀元日本9月20日】一年前に起きたリーマン・ショックから始まって、世界中を襲った金融危機。各国が相次いで不況に陥る中、外需に依存していた中国経済にも陰りが見え始めた。年間8%の経済成長を目標とする中国政府は、半年前に積極財政と金融緩和策で景気を刺激し、現在はバブル期に突入したといわれている。今後、中国の経済はどうなっていくのか。中国の独立経済評論家・袁剣氏は、中国の改革専門誌に寄せた論文「バブル経済に突入する中国」で次にように分析する。

 中国の多くの経済誌のアナリストと経済コラムニストとして執筆活動をしている袁剣氏は、激しく変動している中国経済の実像を鋭く洞察する観点で名が知られている。今年初め、袁氏は「金融危機の後に、中国と世界は未知の世界に突入する。この新世界の中にあっては、戦後60年間の間に培ってきた知恵は恐らく通用しない」との観点を出したが、半年後、その予測がまさに的中し、現在は、「バブル経済の未来図」が現れつつあると指摘する。

 世界金融危機の影響で、外需は大幅に減退した。袁剣氏によると、中国の実体経済は世界経済に依存しており、その依存ぶりが他の経済体を遥かに上回っていたため、中国当局は危機感を覚えたという。このため、中国は各国政府と同じく、「狂気なまでに」紙幣を印刷し、外需の減退による損失を補填した。これ以外にも、中国は、自ら恃(たの)むところの健全財政(実際の状況は、公表されている数字ほど安心できるものではない)をもって、様々なルートでお金をばら撒いた。その気前のよさ、豪胆ぶりに世界のメディアからは、最も力強い景気刺激策であると賞賛されたが、一方、その危険性を指摘する反対者の声は、取り上げられることはなかったという。

 中国政府が実施した積極財政と金融緩和策は、現代のマクロ経済管理政策の伝統的な手法であり、各国政府も経済危機の中で必ず用いてきた。しかし、袁剣氏によると、その政策は、現代に通用しないという。

 「過去は過去、現在は現在である。今日の経済システムの複雑性と世界の経済状況は、これらの政策が発明された時代とは比べものにならない。同じマクロ政策、刺激策を実施しても、政治・経済面において大きく異なる結果をもたらす可能性がある」と袁剣氏は説明する。

 中国について言えば、未曾有の積極財政と空前の金融緩和策を実施して半年が経過しているが、その結果として実体経済が安定したかについては、いまだ確証はない。しかし、袁剣氏によると、資本市場は既にバブルが飛び交っているという。つまり、実体経済の回復より先に、中国はバブル経済に突入してしまったのだ。

 中国では不動産市場の価格が暴騰し、株式市場の取引高は記録的だ。中国の不動産市場を例にとると、2008年の冷え込みを経験した後、2009年初頭から次第に回復し、年央に至ってほとんど狂ったかのような水準に達している。中国不動産市場が最も異常であったと公認されている2007年であっても、恐らくこの水準には及ばなかったという。

 袁剣氏は、いわゆるバブル経済とは、資産市場のバブルではなく、上記のような一つの状況であると説明する。すなわち、経済が一定の段階に達し、資産が一定の段階まで蓄積された後、実体経済における投資機会が日々縮小していく中で、大量の、特に主流資本が資産市場に押し寄せ、更なる高利潤を求める経済発展の段階にある、これが今の状況であるという。

 歴史を見ると、バブル経済は何も新鮮な話ではない。日本は1990年代に、米国は21世紀以後に、持続時間の長いバブル経済が出現している。その結果、日本は1990年代の後にいわゆる「失われた10年」を経験し、米国においては、世界経済を荒波に巻き込んだサブプライム危機が発生した。

 バブル経済は、人間の本性から生まれたものであり、容易に除去できるものではないと袁剣氏は看破する。この本性とは、つまり「人は誰もが、働かずして他人のおこぼれに与り、大儲けをし、金持ちになりたいと考えている」ということだ。

 現代の金融市場が発達する以前において、こうした人間の本性に根ざした夢想は、実体経済に参入するか、あるいは、政治的レントを掴み取ることによってしか実現できなかった。しかし、金融のツールが発達し、金融市場が、以前を遥かに上回る形で広く深くなると、金融市場への参入が、巨額の利潤を得るルートとなった。

 さらに、実体経済における投資リスクが巨大になり、政治的レントの獲得が叶わぬ望みとなる一方で、金融市場が利益を実現する望みを叶えてくれるものとわかれば、金融市場への参入は必然的だと袁剣氏は説明する。日本および米国のバブル経済は、世界における実体経済の拡大が困難となり、発生したものだ。

 袁剣氏は金融市場のバブルについて「資金供給さえ途絶えなければ、バブルはますます大きくなり、市場参入者が相次いでその中に紛れ込み、極端なまでの遊興に耽る。そして、この状況は、教条主義者の理論的推測を遥かに上回るほど持続する」と説明する。つまり、バブル経済は、相当の長期間にわたって、実体経済から完全に独立した自己循環を形成することができる。

 更に注意すべきは、金融バブルの膨張が、一定期間、一定程度、実体経済を牽引することであるという。資産市場が、最終的には実体経済によって決まるという伝統的な知恵は当てはまらず、また実体経済が回復軌道に乗ったのだから安心してよいと思い込むのも要注意だと袁剣氏は釘をさす。

 袁剣氏によると、金融危機が発生する以前、中国は、深刻な過剰生産、および産業高度化における困難に直面していた。実体経済の高速成長を維持するためには、輸出に依存するほかなかった。

 そして、金融危機が一夜にして襲来し、外需が徹底的に崩壊すると、バブル経済は破裂やむ無しの勢いとなった。この時もまた、中国金融当局は、経済失墜の回避、および経済成長の安定速度である8%成長の維持に尽力すべく、節制なき大放水を開始した。これに伴って、インフレ予想は大きく高まった。貨幣はバブルの基礎であり、インフレはバブルの口実であるが、両者が符合した時、30年にわたって蓄積されてきた資産、レバレッジを重ねた資本が、水銀が地に広がるように資産市場に流入し、遂には金融市場における濁流を形成するに至ったという。

 今年初め、温家宝総理は、多少の不安を抱きつつ、年間の貸出額の目標を5兆元にすると発表した。しかし、年央に達しないうちにその額は7兆元に達していた。その間、中国不動産市場は、1年の低迷期を経て突然に暴騰し、株式市場もまた同様の状況となった。袁剣氏は「我々は、中国の銀行の貸出への野心と能力を大きく過小評価していたのみならず、バブル経済に入り込む中国経済の慣性をもまた、大きく過小評価していた」と分析する。

 しかし、懸念すべきはバブル経済自身にあるのではなく、バブル経済が作り出す成長の虚像である。例を挙げると、不動産取引の激増、価格の暴騰は、上流部分の不動産投資を刺激しただけでなく、財政が逼迫し、やりくりが困難になっていた地方財政に恵みの雨をもたらした。また、株式市場の高騰がもたらした資産効果は、多少なりとも消費を刺激する上で、一時の功を奏したという。

 以上の様々な事象が多少なりとも実体経済を牽引する効果を上げると、これが真実であるかのようなイメージ、すなわち、「バブルは成長をもたらすことができる」というイメージが作られたと袁剣氏は指摘する。各国政府は、バブル経済の弊害を全く知らなかったわけではないが、彼らは、自身がバブルであることを主体的に暴露したばかりか、実体経済の低迷時には、主体的にバブルの育成に励んだという。

 つまり、バブル経済の時期に、資産市場のバブルは既に、経済成長を牽引するメイン・エンジンとなっていたと袁剣氏は指摘する。この時期においては、金融政策が実体経済に及ぼす効果は少なく、主に資産市場において効果を発揮し、平時とは相反する景気刺激の循環を作り出す。すなわち、バブル無くして成長なく、バブル無くして利潤は生まれない状況である。これこそが、いわゆるバブルによる生存である。「ますます多くの事象から我々が確信できるのは、中国経済が、頂点から転げ落ちる危険性を孕んだ時期に突入しているということだ」と袁剣氏は警告している。

 昨年以来、中国政府は、稀に見る力で積極財政と金融緩和策を実施している。しかし、緩和策には、長期的なインフレ、バブルが発生する懸念がある。一方、引締め策には、不況が発生する懸念があるが、これは政治的自殺にほかならない。

 結局、経済対策について、緊急の大放水を実施し、リスクを未来へ先送りすることが唯一の選択となったという。おそらく、国際市場の状況が次第に好転し、実体経済の回復が始まったとき、直ちに金融緩和策から手を引けばよいと執政者は考えたのだろう。こうして、一時の急を凌ぐとともに長期の憂いを払拭し、最終的には、短期、中長期の双方の必要を満たした回復の道を歩んでいるのが中国政府のやり方だ。

 しかし、短期であれ中長期であれ、外需の回復は発生率の低い事象だと袁剣氏は指摘する。また、いわゆる内需の拡大の潜在力についても、実際のところは誇張されているという。従って、それらの要因に大きな希望を寄せるわけにはいかないと袁剣氏は述べている。

 袁剣氏は「8%成長の維持は、バブル経済と引き換えにして初めて成り立つものだ」と指摘する。つまり、バブルの中での成長は、バブルによる生存を意味し、極度に緩和された金融がなければ、8%の成長を維持することは難しい。一方、わずかでも引き締めを実施すれば、バブルが破裂するだけでなく、実体経済が直ちにその正体を露呈する。袁剣氏によると、中国は、現在の超緩和的金融政策から全て手を引くことは、恐らく非常に困難であるという。出口を選んだ時、そこにあるのは「中国経済の失速である」と指摘する。

 バブルの害は、皆が知るところである。しかし、今日の中国においては「経済成長」が他の全ての目標を圧倒してしまった。社会や政治の改革といった問題は、危機の最中にあって全て吹き飛ばされてしまったようだ。現在の中国において「経済成長」は最重要事項となった。

 袁剣氏は最後に「歴史の要諦を述べるとすれば、政策決定者は、往々にして全てを求めることはできず、一方に注力するほかない。これを踏まえれば、現在の局面は、中国政府にとって確かに困難であり、その事情には理解すべき点もある」と述べる一方、バブルの後は一体どうなるのか、今後も注視しなくてはならないと警告している。

(翻訳編集・飛燕、田中)


 (09/09/20 05:00)  





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