一人当たり監視カメラ2台が作動 AI監視大国・中国 

2019/02/05
更新: 2019/02/05

国際市場調査会社IDCが1月30日に発表した報告書によると、中国国内の当局による公共監視カメラの設置台数は2022年に27.6億台に達する見込み。当局は向こう数年間でカメラの追跡と識別能力の技術的向上に300億ドルを投じる計画がある。

中国は監視カメラ技術の世界最大の市場となっている。IDCは今日、米国と中国が人工知能AI)技術の最も成長が早く、有望な市場であると予測する。

また、調査会社IHS Markitは、映像で人の顔を認証・検索するデータ処理機器は、世界の流通量の4分の3が中国に購入されるだろうと推計する。

中国の顔認証技術開発会社・商湯科技(センスタイム)は、創業5年のスタートアップ企業で、投資会社でもある。中国共産党政権は2030年までにAI分野で世界の筆頭に立つことを目指し、同社はその一手を担う新興企業群のうちの一社。

商湯科技は2018年9月に日本のソフトバンクグループのファンドである軟銀中国(ソフトバンク・チャイナ、SBCVC)から10億米ドル(1120億円)の投資を受けて、60億米ドル(6720億円)というAI企業として世界最高の評価額を得た。

ソフトバンク・チャイナは同年8月にも、商湯科技ら数社とともに可視化情報技術・影譜科技(ムービー・ブック)に対して2億ドル(約220億円)を出資した。影譜科技と商湯科技は、VRや動画分析などAI技術分野で提携している。

同新興企業群のひとつで軍事技術開発を担っていたAI顔認証の昿視科技(Face++)も2017年10月、中国国営ベンチャーから4億6000万米ドルの投資を受けた。

中国共産党政権は、顔認証と追跡機能を備えるAI監視カメラを街中に網羅した「スマートシティ」構想を進めている。これにより、治安維持と犯罪防止・抑制、交通網管理、緊急事態対応、防災警報の各効率を向上させるという。

「莫大なお金をかけている監視機能は、既得権益層の利益を守るためにある」山東省龍口の人権活動家である姜国臣氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた。

「私はその状況を個人的に体験してきた。2017年に陳情のために北京に出向いたが、警備員らは私たち2人を殴打した。1人は2カ所骨折したため、北京天壇病院に入院した。私は警察に何度も通報したが、対応しなかった」

「警察によれば『監視カメラは壊れていた』というのだ。この『法治』は全く信じることができない」

広東省に住むクリスチャンの女性・陳さんはRFAに対して、「街は監視の目ばかり」と語った。「確かに人々に影響を与えている。公安がデータを処理している。本当に住民が犯罪被害に遭っても、彼らは対応しない。つまり監視機能は、政権維持のための保障に過ぎない」

中国当局は都市部を100%カバーしている(2015年中国政府が発表)AI監視システム、「天網」のほか、昨年農村を監視する「雪亮」プロジェクトの運営を開始した。農村部でのテレビ等の家電や携帯電話から個人情報を収集し、県・郷・村を徹底管理するシステムとされている。

IDCの報告によると、2019年中国共産党政権は人工知能10の発展分野として機械学習、融合ビジョン、音声、データ共有網の拡大を明示した 。政府の主張によると、AI監視カメラは年齢、性別、個人番号を正確に認知することができる。

しかし中国国内の世論では、共産党主導のAI技術開発は、経済発展や生産性の向上ではなく、当局の監視欲求を満たすことにあると批判されている。

(翻訳編集・佐渡道世)

関連特集: