【ショートストーリー】すばらしい先生

2007/07/14 08:00
 【大紀元日本7月14日】トンプソン先生は、小学五年生の生徒たちの前で嘘をついた。

 他のどの先生もが言うように、トンプソン先生は、自分は一人一人の生徒を平等に愛していると言ったのである。しかし、それはありえないことだった。原因は一番前の列にうなだれて座っているテディー・ストダードという男の子がいたからだ。テディーは、いつも他の生徒とトラブルを起こすし、洋服は汚かった。それに、彼はいつも不機嫌だった。

 本当のことを言うと、トンプソン先生は、太い赤ペンでテディーの解答用紙にバツを書き、大きな「F(不合格)」という文字を書くのが好きになるくらい、テディーのことが嫌いになっていた。

 ある日、トンプソン先生は、各生徒の過去の学習記録を見直さなければならなくなった。ふとテディーのファイルを開き、記録を読むと、驚いてしまった。

 学習記録には、テディーの一年生の時の担任が、「テディーはすごく賢い子で、いつも笑顔。宿題はきちんとするし、態度もよい。彼は周りの人たちとも楽しく過ごしている」と書いていた。

 二年生の時の先生は、「テディーはすばらしい生徒だ。みんな彼のことが好きだ。しかし、彼の母親は不治の病を患っており、家の生活は苦しいだろう」と書いていた。

 三年生の担任は、「彼の母親が亡くなって、彼にとってはとてもつらかっただろう。彼は一生懸命がんばっていたが、彼のお父さんはテディーにあまり関心を払わない。もし何の措置も取らなければ、彼の家の状況は彼に重大な影響を与えることになるだろう」と書いてあった。

 四年生の時の先生は、「テディーは、内気になっていき、学校に対する意欲もないようだ。友達は少なく、授業では寝ていることが多い」と書いてあった。

 トンプソン先生は、このとき初めてテディーのことが分かった。そして、彼女は自分が恥ずかしくなった。

 彼女が更に悲しくなったのは、クリスマスの時の事だった。生徒たちはそれぞれ、美しい紙とリボンできれいに包まれたプレゼントを彼女のために持ってきた。しかし、テディーが持ってきたのは、商店でもらえるような重たい紙で不器用に包まれたプレゼントだった。彼女は心の痛みを感じながら、テディーのプレゼントを開けた。

 中身は、偽物のダイヤでできたブレスレットで、石がところどころ抜けていた。もうひとつは、香水が4分の1だけ入った瓶だった。生徒たちは笑ったが、トンプソン先生は、このブレスレットはとても素敵だと言い、香水を自分に振り掛けた。

 その日、学校が終わると、テディーは最後まで残って、トンプソン先生にこう言った。「先生、先生は今日、僕のお母さんのような香りがしたよ」。

 テディーが帰ると、トンプソン先生は1時間余り泣いた。

 その日から、トンプソン先生はもう「本」を教えなかった。彼女は読むことや、書く事、算数も教えず、子供の教育を始めた。

 トンプソン先生は、特にテディーに関心を払うようにした。するとテディーは、また生きかえったようになった。

 トンプソン先生がテディーを励ますと、彼はすばやく反応した。学年末になると、テディーはクラスの中で最も聡明な子供の一人になっていた。トンプソン先生は、平等にすべての子供を愛することができると言っていたが、しかしこの頃になると、テディーが一番のお気に入りになっていた。

 一年後、トンプソン先生のオフィスのドアに、テディーが残した1枚のメモがはさまれていた。メモには、「トンプソン先生は依然として、彼が出会った中で最も良い先生です」と書かれていた。

 六年経って、トンプソン先生はまたテディーから手紙を受け取った。彼はすでに高校を卒業し、成績はクラスで三番目だという。そして、トンプソン先生は依然として、彼が出会った中で最も良い先生です、と書かれていた。

 また四年が過ぎ、トンプソン先生の元にテディーから一通の手紙が届いた。今、学校生活が少し辛いが、それでも止めなかった、間もなく学校を首席で卒業すると書かれていた。そして、トンプソン先生は依然として彼の一生で出会った先生のうちで最も好きな先生だ、とも書かれていた。

 またもや四年が過ぎ、再びテディーから手紙が来た。テディーは、大学卒業後、もっと高い学位を取ることに決めたという。手紙の中で彼は、トンプソン先生はやはり彼の一生の中で一番いい、一番好きな先生だと書いていた。手紙の最後に書かれていたテディーの名前は、前より長くなっていた-テディー・ストダード、医学博士。

 この話には、まだ続きがある。今年の春、また手紙が来た。テディーは運命の女の子に出会い、もうすぐ結婚するのだという。彼の父親は数年前に亡くなったので、結婚式ではぜひトンプソン先生に、彼の母親の席に座ってもらいたいと書かれていた。もちろん、トンプソン先生は喜んで出席することにした。

 結婚式の日、トンプソン先生はあの時テディーからもらったブレスレットをつけ、香水を振りかけた。テディーの記憶に残る、母親と一緒に過ごした最後のクリスマスの時に母親が使っていた香水。

 テディーとトンプソン先生は抱き合い、テディーはやさしくトンプソン先生にささやいた。「トンプソン先生、僕のことを信じてくれてありがとう。先生のおかげで僕は自信を取り戻しました。そして、自分のことを信じ、物事を変える能力があると分かったのです」。

 トンプソン先生は、目に涙を浮かべてテディーにささやいた。「テディー、私こそあなたのおかげで、自分にも物事を変える能力があるとわかったのよ。あなたと会ってから、私は先生としての役目がわかったの!」

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