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リーマン・プラザーズの破たんで混乱に陥った金融市場(Getty Images)

世界金融危機による中国への影響

 【大紀元日本10月23日】9月15日米国大手証券会社リーマン・プラザーズの破たんを公表されてから、市場への不安心理や米国経済の景気後退への懸念が強まり、世界各国主要株価が急落した。その後米国中央銀行や政府の公的資金による金融機関救済政策の成立をはじめとする各国の中央銀行及び政府が次から次へと公的資金による金融機関支援政策の発表または実行で、各国は株価は多少持ち直したが、しかし米国商務省が発表した9月小売売上高が事前予想よりも大幅に低下したことで、米国経済景気失速の懸念が一気に噴出し、10月15日ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、前日比で733ドル安の8577・91ドルで取引を終え、米議会下院が同政府の公的資金による金融機関救済政策法案を否決したことを受けて、9月29日過去最大の777ドル安に次ぎ過去2番目の大幅な下げを記録し、世界同時株安が再発した。

 サブプライムローン問題の起因

 米国ドレクセル(Drexel University)大学の謝田・助教授は、2001年9・11事件以降、米国金融当局が行っていた低金利政策が今回の金融危機を招いた、と指摘する。謝氏によると、当時の米国連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長は9・11事件の影響で、米国経済の失速を防ぐために、短期間に最重要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を1%まで引き下げた。金融機関は容易にFRBから資金を貸し出することができたため、それらの資金が一気に米国国内ないし国際金融市場に流れ、その結果、不動産、原油、農産品、金やプラチナ、鉄鋼などの資源市場の価格を急騰させた。

 または、FRBが利下げをすれば、各銀行もそれぞれ利率を下げるため、住宅ローンやクレジットカードローン、自動車ローンなどの利率も下がり、人々の消費を刺激され、また貯金に回す多くのお金は株市場や投資信託などへの投資資金として使われるようになった。

 「低金利で、住宅ローンの利率が下がり、人々が比較的に以前と比べ容易にマイホームを入手することができた。さらに、当時米国不動産市場のバブル化の影響で、現在の収入や支出や今後の返済能力を一切考えずに住宅を購入した人が数多くいる。その後米国政府は利上げ政策に転じ、また不動産市場のバブルが弾けてからはじめて、これらの人々は返済ができないと気付く。これでいわゆるサブプライムローン焦付問題の根本原因である」と謝氏が示した。

 また、金融機関がサブプライムローンに関する金融商品の販売などで、リスクを世界各国の投資家に転嫁したことも今回の金融危機が世界各国に拡大させた理由だと謝氏が指摘する。

 2007年7月米国サブプライムローン問題が発生して以来、世界各国の銀行及び保険関連企業の欠損および損失額はすでに5100億米ドル(約53兆5500億円)を超え、また世界株式市場の時価総額も11兆米ドル(約1155兆円)消えたという。

 金融デリバティブ(派生)商品と金融体制の抜け穴

 中国経済学者の左小蕾氏は、ウォール街で起きたサブプライムローン問題には信用バブル、商品バブル、資金バブル、価格バブルと市場価値バブルが含まれており、これらは長いバブルチェーンを形成し、その中でサブプライムローン問題は巨大な信用バブルだ、と指摘した。

 左氏は、「ウォール街の金融企業はいわゆる「金融創新」を挙げ、これを基づいて、5兆ドル(約525兆円)規模の信用バブルが形成され、現在金融市場には不動産担保証券(MBS、主に住宅ローンなどの不動産担保融資を裏付け債権として発行された証券)やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS、貸付債権に債務不履行が発生し、その信用リスクをヘッジしたい場合に利用するオプション取引)や債務担保証券(CDOは、社債や貸出債権(ローン)などから構成される資産を担保として発行される資産担保証券の一種で、証券化商品である)など様々な金融派生商品が販売されて、またはこれらの証券化商品の高い格付けを保持するために、債券保険会社は巨額な担保商品などを販売している。これらの金融商品が商品バブル、そして価格バブルを起こし、さらに膨大な市場価格バルブを招いた」と話した。左氏によると、この金融デリバティブ商品市場の市場価格規模は米国4兆3千万億ドル(約451兆5千億円)約の国債市場価格により倍となっていたという。「したがって、いったん住宅市場価格の上昇基調が終わり、金利が上がり、サブプライムローンの焦付き件数が増加すれば、金融危機がぼっ発するに違いない」と左氏が述べた。

 草庵氏は、金融デリバティブ商品の始まりは前世紀90年代において、米国銀行が行った一連の調整と関係があるという。「当時、商業銀行と投資銀行の業務がそれぞれ違い、商業銀行には投信銀行の業務を一切行ってはいけないとの決まりがあった。しかし、金融規制の緩和によって、商業銀行はだんだん投資銀行しかできない業務を行うようになった。これで、投資リスクが一気に拡大した。一方、当時金融デリバティブ商品の販売拡大で金融業務が大きく発展した。しかし、金融体制と監督管理の面において多くの抜け穴があった。このように、金融市場において一つのバブルが形成され、最終的に金融企業の破たんを招いた」と話した。

 草庵氏は金融危機の核心的な問題は金融派生商品であると指摘する。中にレバレッジ投資のリスクが最も高いだという。レバレッジ投資とは投資家が保有する元本より10倍、20倍または30倍以上の投資を行うことだ。しかし、金融市場価格が大きく動くと、すべての元本が損失してしまうとのデメリットがある。

 このレバレッジ投資は世界範囲で広く行われているが、しかし健全な制度がないため、市場が大きく動くと、莫大な資金が瞬間に消えてしまうこととなる。多くの大手金融企業はこのような金融デリバティブ商品およびファンドを販売しているため、巨額な損失はこの金融会社に限らず、社会各業界に影響を与えることとなる。

 左小蕾氏は「これら「金融商品」と呼ばれるものには実際に真の価値がない。サブプライムローンに関連する金融デリバティブ商品には約10兆ドル(約1050兆円の市場価格があるといわれる。しかし、これは莫大な資金で形成されたバブルに過ぎず、レバレッジ投資による見かけの財産の拡大だ」とした。
政治経済評論家草庵居士。(大紀元)


 米国発金融危機の中国経済への影響

 現在グローバル経済情勢の下で、米国発金融危機の発生で銀行をはじめとする金融機関の倒産や破たんは必ず中国の実体経済に影響を及ぼすとみられる。

 謝氏は「米国株価の急落で第4四半期の国内総生産(GDP)成長率が下落するだろう。実体経済への打撃で、景気不況で収入が減った人々は消費を控え、できるだけ支出しないようにし、中国からの輸入商品へ需要が急激に低迷する。これで中国の輸出業に大きな打撃となるだろう。中国経済は米国の消費に頼っており、中国経済の60%は輸出貿易が占めている。さらに、主要な輸出市場はアメリカである」と指摘する。

 政治経済評論家の草庵居士氏によると、中国の1・9兆ドル(約192兆4656億円)に上る外貨準備高のうち約少なくとも3700億ドルが米国株式市場に投資されている。今回の金融危機で株価の急落によって、中国に投資総額の約半分の損失をもたらしている。その損失額は約1500億ドル(約15兆7500億円)から2000億ドル(約21兆円)に達していると草庵氏が分析する。

 「2000億ドルは中国8年間の輸出純利益の合計に相当する。言い換えれば、中国8年間の輸出純利益は今回危機で消えてしまった」と草庵氏が言う。

 草庵氏は、「10月以降米国消費者信頼感指数の急落など、米経済主要指標の悪化は金融危機の発生で米国経済景気の後退を懸念してきた市場および世界各国に、今後米国景気後退を確信させた。特に、実体経済の60%が輸出に頼っている中国にとって、主要輸出国となる米国の景気後退は中国の多くの輸出企業の倒産を招くだろう」と述べた。

 中国政府の統計によると、今年上半期における米国への輸出は去年同期比で4%から7%に減少したという。これは中国実体経済景気の減速を示した。中国輸出の減少により、輸出企業が経営不振となり、労働者が失業し、全体資金流動には大きなトラブルが起きるため、輸出価格はさらに低く抑えられるだろうとみられる。

 中国株式市場に関して、金融危機の影響で、中国主要株価指数の上海総合株価指数は米国株市場の急落につれられ、約2年ぶりに2000ポイントを割り込み、2007年10月の6000大台から約7割も暴落した。また、このほどオランダ・ベルギー金融大手のフォルティス社の株式を保有し、同社の経営破たんで約157億元(約2400億円)の損失を出した中国大手生保の中国平安保険の株価が10月16日1株=26・01元(約390・15円)に急落し、去年10月に1株=149・28元(約2239・2円)の高水準から82%も暴落したことから、中国株式市場が米国発の金融危機から受ける影響が非常に深刻であることが証明された。

 金融危機の中国政治情勢への影響

 中国輸出の低迷は経済全体の減速および後退を生じさせるだろう。国内総生産(GDP)の減少で失業人口が増加し、それにより中国の政治および社会情勢は大いに影響され、社会の不安定や国民の抗議活動の増加で、中国には大きな変貌をもたらすと謝助教授が指摘する。

 草庵氏も同様な見解を示した。草庵氏は、中国経済景気の後退につれ、人々の生活が苦しくなる。一般的に、このような状況が現れると、飢饉や社会動乱を防ぐために、政府は人々への福利厚生政策の増強や貧困層の生活保障などの政策措置を打ち出すが、しかし、中国共産党政権は一貫にして如何にその独裁政権を維持していくかに集中するだろう、と加えた。

 草庵氏は「今現在の状況の下で、もし中国経済が崩壊するとしたら、これは中国共産党政権の崩壊が遠くないことを意味する。これまで、中国共産党政権が用いた多くの経済手段は全く効果がない。実際に、同政権にはこのような金融危機を解決する力がない。なぜなら、国民の中国共産党政権への信頼感が完全になくなっているからだ」、「中国社会に起きている各紛争、さまざまな人権抗議活動は表面的に政治的利益の問題に見えるが、実際すべてが人々の利益が侵害されているから起きたことで、本質的に経済的な利益侵害問題だ」と話した。

 さらに草庵氏は中国共産党の崩壊時期は2012年ぐらいだろうと予測している。同氏は、「中国の経済問題は中国政治社会情勢に大きな変化をもたらすに違いない。中国共産党崩壊の引き金は経済問題だ」と述べた。

 米国と中国との金融市場救済政策の比較

 謝助教授は、「リーマン・ブラザーズの破綻に米政府は阻止し救済援助をしなかったのは正しいと示した。自由競争を柱とする市場経済において、経営不振であれば倒産するのは当然のことだ。これは金融市場に影響を与え、人々に不安を与え、しかも一部の人が仕事を失うことがあるが、金融システム全体を壊滅させることはないだろう」と述べた。

 また、7月中旬米国はサブプライムローンで経営が悪化した政府系住宅金融投資大手で米連邦住宅抵当金庫のファ二ーメイ(Fannie Mae)と米連邦住宅貸付抵当公社のフレディマック(Freddie Mac)に公的資金を投入するのを発表したに関した、謝助教授は「この二つの金融機関はほぼすべての米国国民家庭生活ローンや住宅ローンを管理しているため、破たんすれば人々の生活に直撃するに違いない」と米政府の公的資金投入措置を賛同した。

 「公的資金を投入すると言っても、米国財政部が単に直接に資金を両金融機構に提供したというわけではない。財政部は両金融機構の資金調達難を和らげるために、低金利で資金貸出と担保を提供しただけだ。米財政部は最大2000億ドルを投入するといったが、これは米国およそ3億人口で割ってみると、国民一人当たりの負担はそれほど高くない。しかし、この措置は確かに米国不動産市場を安定化させることができるし、国民一人一人の利益と関係している」と話した。

 一方、謝助教授は中国政府の金融市場への救済策について、「中国株式市場における暴騰と暴落は権力階層の操作によって生じた。国民の貯蓄は全部吸い込まれてしまった」と批判した。

 草庵氏も米国政府が金融市場の安定化を図り、国民の生活を保護するために公的資金投入の措置への支持を示した。「リーマン・ブラザーズは比較的裕福な人々の投資資金を扱っている。リーマンの破たんは一部の投資家の利益にしか関係しない問題だ」と述べた。

 また、「これは米国政府が一部の投資家の利益ではなく、国民の利益に関心していることを示してくれた」、「しかし、中国政府が貸出金利の利下げ実施で経済発展を刺激しようとしたが、それほどの効果はなかった。利下げをしても、中国の政策金利である1年物基準貸出金利はいまだにほぼ世界1位の高水準にあり、年率7・20%となっている」と草庵氏は言った。

 草庵氏は「中国政府は米国の経済政治状況と大きく相違している。今中国政府が用いているすべての措置は中国共産党政権を維持していくためのもので、国民の利益は全く考慮されていない。これは、中国と米国との
米第3大証券投資大手のメリルリンチが9月15日同社を米銀行大手のバンク・オブ・アメリカに売却したことを発表した(Getty Images)

根本的な違いだ」と指摘する。

 金融危機で米国金融制度の改革を促される

 謝助教授は、米国政府は経済発展を刺激するために現在引き続き利下げ政策を実施しているが、しかしサブプライムローン問題で、警戒し始めった銀行及び融資企業は以前のように容易に資金の貸し出しができなくなったため、人々も容易に融資できなくなった、と指摘する。

 一方、草庵氏は、金融危機で今後一年間に、多くの中小規模の投資会社が倒産に追い困られるとの見解を示した。「今回の金融危機で米国経済が再建され、米国政府は経済金融監視管理制度を強化し、米国経済制度は
リーマン・プラザーズの破たんに反応し、米国と欧州株式市場主要株価は急落した(Getty Images)

大きく変化するだろう」と示した。

 米国発金融危機の世界経済への影響

 金融市場における主要通貨としてのドルの重要さと米国の強い軍事力は、国際社会においてリーダー的な存在である米国にとって大きな柱となっている。2007年7月に起きたサブプライムローン問題危機が国際重要通貨であるドルに大きなダメージを与えた。ドル安は世界規模の商品価格の高騰を招き、各国機関投資家及び個人投資家の米国市場への信頼感を揺らし、米国政府にとって毎年巨額な貿易赤字問題の解決を一層難しくなった。

 米国ワシントンにある「経済戦略研究所」のカリンナー氏は、ウォールストリートは今回の金融危機で打撃を受けたため、世界金融勢力図は永久に変えられたと示した。「今後世界金融勢力図は大きく変わるだろうと思う。このほど、米国投資銀行の業務が大幅に減少し、ウォールストリートで働いてきた多くの人は解雇された。中長期から見れば、将来世界金融センターの役割を担うのはニューヨークやロンドンではなく、アジアになると思う」とVOAの取材に対して話した。

 一方、草庵氏は「米国の金融機関は世界投資業界をほぼ独占している。米国5大投資企業のうち、リーマン・プラザーズ、ベアー・スタンーズが経営悪化により倒産し、メリルリンチが買収されて、今はモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスしか残っていないことから、今回の金融危機が世界経済及び金融制度に大きな衝撃を与えたことを表した」、さらに「リーマン・プラザーすが破たんを公表した直後、米国株式市場主要株価指数が500ポイント以上の急落したほか、欧州市場、アジア市場など世界同時株安となったことから、158年の歴史を持つ投資企業の倒産には市場はいかにショックを受けたかがわかる。このような不安感が消え去っていくのにかなり長い時間が必要だろう」とした。

 謝助教授は、米国不動産市場は来年中期から回復するとの認識を示している。また、同氏は「米国経済景気が後退すれば、欧州および日本などの国の経済に必ず影響を及ぼす。自由な流通経済により、それらの国々の経済は緊密に相関しているからだ。特に欧州およびイギリスの金融機関は米国企業に大いに投資しており、金融危機による膨大な損失は想像できるだろう」と言った。

 しかし謝助教授は、ドル安のおかげで米国輸出業績が増長しており、欧州への輸出拡大によって米国経済は一定の増長を見せるが、ただどのぐらいの期間で維持できるかは問題だとした。

 「米国経済は不況に陥ったかどうかは第4四半期の国内総生産(GDP)成長率を見ないとまだわからない。米国政府が発表した今年第1、第2及び第3四半期のGDP成長率によると、実に米国経済は平均的に1四半期当たり約0・7%成長している。多くの経済学者は第2四半期のGDP成長率はマイナス成長となるだろうと予測したが、しかし意外に3・3%の増長を見せた。理論上に、GDP成長率が連続2四半期で下落すれば、経済景気が後退していると解釈される」と述べた。


(文・李佳、方涵、翻訳・張)

 (08/10/23 06:45)  





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