THE EPOCH TIMES

ダライラマ法王、大相撲の聖地で講演

2008年11月08日 07時48分
 【大紀元日本11月8日】インド・ダラムサラに亡命中のダライラマ14世(73)は6日午後、大相撲の聖地・両国国技館で約5000人余の聴衆を前に講演、チベット密教・ゲルク派にある最高位の宗教指導者にもかかわらず、その庶民的で包容力のある語り口と流暢な英語は健在で、「チケットぴあ」などアリーナ席の前売り券はほぼ完売状態、厳重な警備にもかかわらず相変わらずの日本での「ダライラマ人気」を彷彿とさせた。今回の講演は、「心の本質は光」と題して、時輪塾(チベット支援グループ)が企画・主催したもので、会場には国内のチベット支援団体「TSNJ」などの関係者だけでなく、柔道の五輪メダリスト・石井慧選手など著名人の姿も見られた。

 
入場するダライ・ラマ法王(写真=大紀元)

法王は、まず最初に個人の幸せを向上させることが総じて世界の幸せに繋がる、世界の変化は個人の幸せのレベルを向上させることから始まると講じた。法王は、駆けつけた聴衆の中に、法王の特別な力である超能力を期待するとか、特別な話を聴けるとかする人がいるかもしれないが、法王自身は「分析」「理由」「証拠」などの態度を重んじるむしろ科学的な見方をするものであり、最近になり胆石の手術を受けた、なにより一介の僧侶であり人間であるとの立場を強調した。

 法王は、総ての生命には幸せな状態と苦しみの状態とがあり、世界の現状を鑑みてみると、その物質文明は既に一定水準に到達したものの、「個人」、「社会」、「国家」の間には相変わらずの貧富の差が見られ、貧しいものたちは弱い立場に置かれながら、平等な社会においても競争の機会を逸しており、日本のような物質的に豊かな社会でも片方では精神苦が充満し、落胆から自殺する若者が増えていると指摘、物質文明は肉体的な快適さをもたらすものの、それは精神的な面を保障をするものではないと講じた。

 法王は、人間の心には慈悲や思いやりなどの健康に有益なものだけでなく、怒りや欲望、執着など、度が過ぎると自らの免疫力を低下させ、周囲を傷つけるものもあり、現代人は怒り、妬み、嫉みなどの感情が働きすぎて物事の本質がありのままに見えなくなり、現実的な解決能力が知らず知らずのうちに低下し、悩みが尽きない状態になっていると講じた。人間の幼児の心は母親とのコミュニケーションから発達し、その家庭が円満で愛に包まれていれば、社会人になっても思いやりのある大人になれるのであり、その慈悲の心の種は万人に植えられている、世界の人がこの事実に注目し認識すべきだと講じた。

 法王は、仏教及び古代インド哲学では人心の機能が詳細に説明されており、人間が意識できる粗いレベルでは怒りや悲しみなどが、五感とその意識を含めた六感から耐えず海面の波のように生じては打ち寄せるものの、人間が意識できない精密な意識レベルでは、常に清らかな明るい「光明の心」が連綿として存在し、物質的な存在が空であるのと同様に精神的な存在もまた空である、「色即是空」「空即是色」であると心の本質を講じた。講話後の聴衆との対話では、柔道の北京五輪メダリストである石井慧(22)選手から進路の相談を受けると、「自らよく調べて、自ら勇気をもって判断しなさい」と諭して即答した。

 
登壇する柔道北京五輪メダリスト・石井慧選手とダライ・ラマ法王(写真=大紀元)

法王は、一般市民を対象とした講話であったために、政治的な意見は避け、仏教的な話に終始したが、3日の都内での外国人記者クラブでの会見では、「高度な自治」を掲げる中道路線が中国との対話路線で相変わらず低調であり、チベットコミュニティー内部からも批判が起きていることを明らかにした。17日からは、世界中のチベットコミュニティー責任者が、インド・ダラムサラに一同に会して今後のことが話し合われるものの、チベット独立を強く主張している「チベット青年会議」とは別に、実際に人民解放軍とチベット人の流血を若き日に目の当たりにした法王が、「愛と慈悲」の信念を基盤にした中道路線を容易に変更させるとは考えにくいのが現状のようだ。

(記者=慈光)

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