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2日、キエフ空港に届いた30万個のタミフルを迎えでたユーリヤ・ティモシェンコ首相(ALEXANDER PROKOPENKO/AFP/Getty Images)

ウクライナ、インフル感染死者数374に 悪化の原因に政治要素も

 【大紀元日本11月24日】世界的に蔓延するH1N1インフル。ここ数週間、ウクライナからの報道が目立っている。ウクライナ保健省の最新発表によると、21日時点で、インフルエンザと呼吸器ウイルス感染による死者数はすでに374人に、感染者数は159万9千103人となり、24時間で11人が死亡したと報道されている。パニック状況の中、同国の首相は、季節性インフルと新型インフルの合計3種が結合して変異したウイルス発生の恐れを国民に伝えたが、WHOは17日、米国とロンドンの研究所で34のサンプルを検査した結果、変異は見られなかったと発表した。

 ウクライナを含む東欧諸国で、H1N1インフル蔓延が顕著になってきている。WHOは、ウクライナのインフル感染による死亡例の大半は、H1N1インフルの感染によるものと推測している。H1N1の蔓延と伴うのは国民の恐怖感の拡大と政治の混乱。ウクライナでの事態の悪化は、ウイルスそのものだけではなく、旧共産政権の文化が完全にぬぐい去られていない環境での人為的要因が関わっているとの見解も出ている。

 経験の浅いメディア

 21日付けの米紙「ワシントンポスト」がインフル感染蔓延中のウクライナの様子を伝えた。ユーリヤ・ティモシェンコ首相は、学校閉鎖と多人数の集合禁止を命じた。病院に市民らが溢れ、医療品の入手に焦っている。新たな致命的なウイルスが流行しているとの噂も広がっている。

 5年前のオレンジ革命以来、報道の自由を得たウクライナのメディアが日夜、インフルのセンセーショナルなニュースを伝えている。ウクライナの小児科医で、著名な執筆者でもあるコマロヴスキー(Komarovsky)氏は、5時間の特集番組で、医療専門家の代わりに、知識に乏しい政治家がインタビューされ、効き目が全く実証されていない軟膏の不足に大統領候補が苦情を言ったり、無責任に黒死病がウクライナを襲っていることを示唆する言動を行ったりしていることを嘆く。

 正確な情報をいかに提供するかが大きな課題だと、WHOヨーロッパの伝染病部門長であるデイヴィッド・マーサー(David Mercer)氏は語る。中央アジアの権威主義国家では、疫病の発生を隠蔽する習慣がある。また、自由報道が比較的新しい国では、メディアは「陰謀説」に偏りがちだ。「ゴシップの多いイギリスのタブロイド版の新聞を常に扱っているようなものです」と同氏はコメントする。

 不安をあおり立てる政治家

 来年1月に総選挙を控え、現地で「カリフォルニア・インフルエンザ」と呼ばれるH1N1の蔓延は、政治上の優先項目にあがっているようだ。

 ビクトル・ユシチェンコ大統領は、インフルへの準備を怠りH1N1のウィルスを変異させたとしてユーリヤ・ティモシェンコ首相を譴責。大統領の側近は選挙の日程を遅らせることまで示唆した。

 大統領の譴責に、ユーリヤ・ティモシェンコ首相は、インフル対策に割り当てられた1億2500万ドル相当の緊急予算を阻止していると大統領を批判。

 同首相は、病院を巡り、指示を出し、感染状況を毎日のようにメディアで発表している。おかげで、大統領選での国民の支持が急速に上昇したと言われる。

 今月2日、ティモシェンコ首相は、飛行場で送り届けられるタミフルを空港に迎え出た。タミフルは、まるで来賓扱いだ。首相に敵対するユシチェンコ大統領も、トップの側近を空港に向かわせた。

 13日付けの「ニューヨークタイムズ」は、冬季のインフル拡大を予想して購入された抗ウイルス剤タミフルの在庫は、当地で唯一の感染病ステーションに保管され、H1N1感染の証明を受けた患者にだけ施される。感染証明の手続きにはサンプルをキエフに送ることが必要で、3、4日かかる、と同国の官僚制度を報道している。

 国民の中には、政府がインフルエンザの流行に対する恐怖心をあおりたてているという見方がでている。前述の小児科医コマロヴスキー氏は、「パニックが引き起こす高血圧症、心臓発作による犠牲者の数も考慮する必要がある」とコメントしている。

 脆弱な医療制度

 ウクライナの医療は表向きは無料だが、医者への現金賄賂が慣習になっている。ウクライナの医療の現状を報告した13日付けの「ニューヨーク・タイムズ」によると、上級医の月給はおよそ184ドルに過ぎず、多くの医師は現場を離れ、西ヨーロッパで健康管理の助手として働いている。病院では、レントゲンから血液検査、シーツ交換に至るまで、賄賂が横行しているという。不要な薬品も売りつけられる。

 21日付けの「ワシントンポスト」では、旧ソ連の全体主義の空気が根深く残存する国々での、予防接種に対する国民の深い猜疑心を指摘。国民は、国家からの供給品の安全性を疑い、製薬会社との癒着取引を疑う。この傾向はウクライナで特に強く、親は子供が予防接種をしたとみせかける偽の証明のために、医師にいくらか支払うこともよく行われている。

 ウクライナでは、自分の病は自分で直すことが基本となっているため、ニンニクとレモンの家庭療法でどうしても効かなくなった時に最後の手段として来院する。多くの場合は手遅れだ。「ウクライナの医療は遅れています。そしてウクライナ人は医療を信じません。悪循環です。先進国では、病気になったら医者にかかるのは当然でしょう」とリヴィヴ市長の管理部長を務める医師は語る。

 ウクライナ人の平均寿命は、欧州連合平均より10歳短い。

(編集・鶴田)


 (09/11/24 08:50)  





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