朴槿恵大統領弾劾判決文全文(訳)

2017/03/14 09:00

 3月10日、韓国憲法裁判所が朴槿恵大統領を罷免した。この訳文は判決文の全訳であり、理解の助けとして編集者が適宜注釈等を附している。

判決文

 今から2016ホンナ1大統領朴槿恵弾劾事件(注:2016年に初めて受理された弾劾審判)の宣告を開始します。

 宣告の前に、この事件の進行経過について話します。 

 私たち裁判官は過去90日余りの間、この事件を公正かつ迅速に解決するために全力を尽くしてきました。今まで大韓民国国民の方々も多くの焦燥と苦悩の時間を送られたと思います。私たち裁判官は、この事件が裁判所に受理された昨年12月9日以降、今日まで休日を除く60日余りの間、毎日の裁判官評議を行いました。裁判の過程の中で行われたすべての進行と決定に裁判官全員の議論を経ていない事項はありません。

 私たちはその間、3回の準備期日と17回の弁論期日を定め、請求側証拠の「甲第174号」証に至る書証と12人の証人、5件の文書送付嘱託の決定および1件の事実照会決定、被請求人側の証拠人を「第60号」証に至る書証と17人の証人(注:アン・ジョンボムを重複して計上したため17人となった)、6件の文書送付嘱託の決定および68件の事実照会決定を通して証拠調べを行い、訴追委員と両方の代理人たちの弁論を聞きました。調べた資料は48,000件以上に達し、当事者以外の方が提出した嘆願書などの資料も40箱に達します。 

 大韓民国国民の皆様がご存知であるように、憲法は大統領を含め、すべての国家機関の存立の根拠であり、国民はそのような憲法を作り出す力の源であります。裁判所は、この点を深く認識し、歴史の法廷の前に立つ当事者の心情でこの宣告に取り組む所存であります。私たち裁判所は、国民から与えられた権限に基づいて行われる今日の宣告が、国論の分裂と混乱を終息させることを願います。またいずれの場合も、法治主義は揺れてはならない、我々が一緒に守っていくべき価値であると思います。 

 今から宣告を開始します。 

 (1)本弾劾訴追案の可決手順に関連して欠陥がないか調べる 

 ・訴追議決書に記載された訴追事実が具体的に特定されていない点について説明します。 

 憲法上の弾劾訴追事由は、公務員がその職務の執行において憲法や法律に違反した事実が存在することであり、ここでの法律は刑事法に限定されません。そして弾劾判決の効力は対象者を公職から罷免することであって刑事責任を問うものではありません。したがって、被請求人は防御権を行使することができ、審判対象を確定できる程度で事実関係を記載すれば結構です。 

 この訴追判決の中で憲法違反行為の部分が明瞭に分類されていないことは否定できませんが、法律違反行為の部分と総合してみると、訴追理由を特定することができます。 

 ・次に、この弾劾訴追案を議決した当時、国会法制司法委員会の調査を得ずに提訴状と新聞記事の程度で証拠として提示したという点について説明します。

 国会の意思手続きの自律は権力分立の原則上、尊重されるべきものです。国会法により弾劾訴追発議の際の理由調査がどうであったかについては、国会の裁量の定めるところであって、その議決が憲法や法律に違反したものと見ることはできません。 

 ・次に、この訴追議決が(国会による)何の議論もなく進行されたことについて説明します。 

 議決当時の状況を見てみると、議論せずに採決が行われたのは事実ですが、国会法によると必ずしも議論を経なければならないという規定はなく、事前に賛成または反対の意見を国会議長に通知することで議論することはできます。

 ところが当時、議論を希望した議員は一人もなく、国会議長が議論希望者を阻止した事実もありません。

 ・弾劾事由は個々の事由ごとに議決手続きを経なければならなのにも関わらず複数の弾劾事由全体に対して一括して議決したのは違法ではないか、という点について説明します。 

 訴追事由が複数ある場合において、事由別に投票するか、それとも複数個の事由を一つの訴追案にまとめた上で投票するかは、訴追案を発議する国会議員の自由な意思に委ねられる部分であり、投票の方法に関していかなる明文規定もありません。 

 ・8人の裁判官による宣告が9人で構成される(裁判所からなされたことは)、裁判所から公正な裁判を受ける権利を侵害したのではないか、という点について見てみましょう。

 (韓国)憲法裁判所は、憲法上9人の裁判官で構成されています。ところが、現実的に裁判官が公務上の出張や病気、裁判官退任後の後任裁判官任命までの間の空白など、様々な理由により裁判に関与することができない場合が発生する可能性はあります。憲法と法律では、このような場合に備えた規定を設けています。

 弾劾の決定をする際は、6人以上の裁判官が賛成しなければならず、裁判官7人以上の出席で事件を審理することができると規定しています。

 9人の裁判官がすべて臨席した状態で裁判をすることができるまで待たなければならないという主張は、現在のように大統領権限代行が憲法裁判所長を任命することができるか議論がされている状況では、最終的には審理をしないという主張になり、弾劾訴追による大統領の権限停止状態という憲政の危機的状況をそのまま放置する結果となります。

 8人の裁判官でこの事件を審理して決定するため、憲法と法律上何の問題もない以上、憲法裁判所としては憲政の危機的状況を継続して放置することはできません。

 従って、国会の弾劾訴追可決手順に憲法や法律上の違法はなく、他の適法要件にいかなる欠陥もありません。

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