印刷版   

掲げられたプラカードには中国語とドイツ語で、「どこに譚作人はいるのか?」09年10月13日、61回フランクフルトブックフェアの開会式にて国家副主席の習近平がスピーチしている最中の出来事 (JOHN MACDOUGALL/AFP/Getty Images)

四川大地震の活動で逮捕された譚作人氏と譚夫人

文・張朴

 【大紀元日本2月25日】

 (一)

 四川省の環境活動家で作家でもある譚作人(タン・ズーニン)氏が「国家政権転覆煽動」の罪名で、今月9日、当局に5年の禁固刑が言い渡された。この知らせを聞いた私はただ茫然とし、譚氏と譚夫人の置かれた状況、彼らの思いを想像するだけで、心が痛む。夫人に慰めの言葉を掛けようと電話を取ったが、何といったらよいか言葉が見つからない。

 なぜ?譚作人氏に何の罪があったのだろうか。

 「証拠」となったのは、譚氏が天安門事件を記念する文章を海外で発表したことのようだが、このような文章を海外で発表する人は譚氏だけではない。それなら、これが本当の理由ではないはずだ。

 譚氏が拘束される前に、四川大地震で亡くなった子供達のリストと、不正建築により崩壊した多くの学校に関する独自の調査報告を出版しようとした。震災後、彼は23回にわたって被災地に入り、多くの子供達の死はおから工事によるものだと主張し、政府にさらなる調査と被害者家族の保護を呼びかけ、工事責任者の法律責任を追究した。

 また、08年に、四川省における政府の石油化学プロジェクト「彭州石化」の廃棄物が、周辺住民の健康や環境に多大な被害を与えるのではないかと警告する報告書を発表している。

 確かに、譚氏の正義なる発言は一部の人にとっては「厄介」なものとなったのだろう。そして、その一部の人は手中の権利を乱用し、彼の発言権を奪い取ったのだ。

 (二)

 譚氏とは旧交があったわけではない。彼が拘束されてから、夫人に何回か直接取材をした事があった。初めて会ったのは公判の時だった。開廷前の心情について夫人に聞くと、戦場に向かうような気分だと答えた。「何を持って主人を裁くというのか、主人には何の罪があるのか、彼らの詭弁をこの耳でしっかりと聞きたい」と。しかし実際、法廷では何の証拠も提示されることなく、譚氏の弁護士の弁護もことごとく裁判長に止められ、譚氏側の証人の出廷も断られた。弁護士は法廷で裁判長に「どうして私に弁護のチャンスを与えてもらえないのか。弁護士の権利はどこにあるのか」と問いただしたという。

 「すべては横暴そのものだった。主人が法廷に入ったときは、私と娘に笑顔を見せたが、閉廷するときはむりやり連れて行かれ、表情さえも見えなかった」。

 (三)

 譚氏の家は四川大学構内の古びた家族宿舎にあった。リビングは譚氏の書斎も兼ねるほど狭かった。ソファは年代物で、数多くの企画書や意見書、報告書が生み出された机は何枚かの板で組み立てられた質素なものだった。

 強制家宅捜査で侵入した警察官さん達よ、自分たちの気楽な生活と比べてみたのかい? 譚氏のように我が身を顧みず、四川省の環境、未来、四川省の子供達を誰よりも心配する人を逮捕することに、良心の呵責がなかったのかい? 顔色ひとつ変えなかったのかい?

 譚氏は活動するために固定収入がなかった。この家のそして、譚氏の活動を支えたのは夫人だった。お正月も外で奔走するご主人に対して、夫人は文句ひとつ言わなかった。「それは私も主人と同じ考えだったから。不公平な社会に不満を抱くのは当然のことだと思う」と夫人が話した。

 石油化学プロジェクトに反対する市民活動をした時に、公安の人が譚氏を呼び出し「お茶をした」。この「お茶をする」とは、活動をやめろという脅迫であることは中国人なら皆わかっている。譚氏が夫人に聞いた、「まだ続けてもいいか」と。「それが正しいと思うなら、どうしてやめるの」という返事だったらしい。

 譚氏は政府を信じていた。「地震でなくなった子供達のために正義を求めただけで、石油化学プロジェクトの建設地に反対意見を述べただけで、逮捕されるなんてことはない」と楽観視していたが、夫人は「彼らにはルールなんてものはない。何をしてもおかしくない」と注意をした。

 そして、その夫人の話は見事に的中した。

 (四)

 去年の3月9日、夫人の出張中に娘さんから電話があった。家は何者かによって荒らされ、パソコン2台だけ取られたという。公安の手口だった。何日か後に譚氏が震災の被害がもっとも大きかった北川の子供達のために、ネットで『竜門山、北川の子の証人になれ(竜門山、請為北川孩子作証)』という文を発表した。「もしこれを書いたら『死ぬ』と言われても、書かない訳にはいかない」と譚氏が言った。

 3月26日、逮捕2日前、一家は食卓を囲んだ。娘さんは「お父さんは逮捕されるの?」と小声で聞いた。「大丈夫だよ」と娘をなだめたが、自分の身に何が待っているのかは既にわかっていた。「天下の人たちにはやるべきことをやった。あなたと子供にばかり迷惑ばかり掛けてすまん」と譚氏が涙ぐんで夫人に言ったという。

 「刑が何年になっても、命がある限り、待っているから」、17年の歳月を共に歩んできた夫人が答えた。

 (五)

 譚氏の娘さんの通う学校では、「あなたのお父さんは我々のヒーローだ」と皆が口々に言った。公判の日に登校した彼女を学校の皆が囲み、拍手や励ましの言葉、中にはすすり泣く声も聞こえた。彼女の肩を抱いて、「お父さんは偉大な人。誇りに思わなきゃ」と声をかけた人もいた。

 譚氏は手錠が掛けられた手で弁護士にこんなメモを渡したという。「人民は法治政府、法治国家(合憲性のある政府、国家)を待ち望んでいる」。

 「私にも願いがある」、電話の向こうの譚夫人が言った。

 「新しい中国を待ち望んでいる」と。

(翻訳編集・心明)


 (10/02/25 05:00)  





■関連文章
  • 人権派弁護士・高智晟氏はウルムチに?=米人権団体(10/02/16)
  • 「血まみれの臓器狩り」の著者、ノーベル平和賞候補に(10/02/11)
  • 全日空が搭乗拒否 成田空港「籠城」中国人権活動家に(10/02/09)
  • 「まず散髪と風呂」 中国人権活動家、成田空港での「籠城」戦に終止符(10/02/04)
  • 人権派弁護士・高智晟氏の所在 中国外交部「いるべきところにいる」(10/01/25)
  • 『臓器狩り』の独立調査官、国際人権連合から人権賞(10/01/23)
  • 人権派弁護士・高智晟氏が行方不明 中国当局「道に迷って失踪」(10/01/20)
  • 高智晟著『神とともに戦う』(18) 我が平民の母(7)(10/01/20)
  • 中国からのサイバー攻撃、米企業34社が被害 「政治や技術情報が標的」(10/01/16)
  • Google中国語サイト、検索結果の検閲停止 中国事業も撤退か(10/01/14)
  • 暴力団メンバーを弁護で、2年6カ月の懲役刑に 懸念される中国弁護士の権利(10/01/12)
  • <江沢民起訴案件> 台湾:法律修訂 薄煕来、スペイン引渡しが可能(10/01/07)
  • 予測情報隠ぺい 四川大地震被災者ら、国家地震局を告訴(09/12/19)
  • 駐中国米大使、中国人権弁護士らと面会(09/12/16)
  • 「中国に人権問題提起、なにが悪い」 カナダ首相への国内批判に反論(09/12/13)