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8月7日、北越製紙の買収をめぐり、王子製紙が株式公開買付け(TOB)の条件を変更する可能性がでてきた。写真は王子製紙の篠田社長。3日撮影(2006年 ロイター/Toshyuki Aizawa)

王子紙がTOB条件変更の可能性、買付株数引き下げも

 北越製紙<3865.T>の買収をめぐり、王子製紙<3861.T>が株式公開買付け(TOB)の条件を変更する可能性がでてきた。日本製紙グループ本社<3893.T>の北越株取得と、きょう付で完了する三菱商事の増資払い込みで、TOB成立が困難になっているためだ。北越の株価は王子の提示したTOB価格を上回って推移していることもあり、このままでは王子の提案に賛同する北越株主も減りかねない。王子は難しい選択を迫られそうだ。

 きょう付で三菱商事<8058.T>の北越の増資引き受けが完了すれば、三菱商事は24.09%の北越株を保有する筆頭株主になる。日本製紙が予定どおり株式を買い増せば、両社合計で33.3%の北越の株式を保有する見込みだ。日本製紙は今月3日、北越株を8.49%(三菱商事の増資後で約6.4%)保有していると発表した際、北越株を10%未満の範囲内で買い増す方針を示している。

 両社あわせて北越の発行済み株数の3分の1を握ることは、会社の合併など株主総会の重要決議事項となる議案を拒否する権利を持つことを意味する。仮に王子が北越のTOBに成功しても、三菱商事と日本製紙の両社が一致団結すれば、王子と北越の経営統合を否決できる。

 <王子、TOB取得株数の目標引き下げも>

 こうした状況をふまえ、複数の証券関係者は、王子がTOBを成立させるための取得株式数の目標比率を引き下げる可能性があると指摘する。

 王子は今月2日から開始したTOBで、50.0004%の賛同を得られればTOB成立とし、残りの株式も買い付けると発表している。しかし、目標取得株式数を発行済み株数の3分の1などに設定し直せば、TOB成立の可能性を高めるだけでなく、TOB終了後に、北越や三菱商事など関係者を話し合いのテーブルに引き出すなどの道が開ける。

 ただ、これにはデメリットもある。3分の1超の株式を確保すれば、北越の経営に一定の影響を与えることはできるが、過半数を確保しないためコントロール力は落ちる。話し合いで具体的な提携効果を見出せなければ「古くて伝統的な体質の製紙業界では、単に株の持ち合いの意味合いが強くなるだけ」(外資系証券)だからだ。

 これでは「日本の製紙業界の再編を促し国際的な競争力を高めるための(北越との)経営統合」(王子の篠田社長)という、王子本来の狙いが達成できなくなる。

 <TOB価格引き上げも>

 もうひとつの可能性は、TOB価格の引き上げだ。価格を現行の800円より高く設定すれば、王子はより多くの北越株主から賛同を得て、TOB成立の可能性を高めることができる。

 三菱商事と日本製紙の2社で発行済み株数の3分の1(増資後ベース)を握られてしまうと、王子に残される北越株は約66%(同)。しかし、北越の上位10社の株主の中には日本興亜損保やみずほコーポレート銀行など安定株主とみられる保険会社や銀行が5社あり、5社の保有株比率の合計は13.45%(増資後ベースで約10.3%)。これに三菱商事、日本製紙をあわせると安定株主の保有比率は約43.6%(増資後)に達し、王子はぎりぎりの戦いを強いられる。

 問題は、いくら価格を引き上げても、三菱商事と日本製紙はTOBに賛同してこない可能性が高いことだ。金融機関も「株式の持合解消が一服した今となっては北越株を売却するインセンティブは少ないうえ、通常は取引先に友好な態度を維持する傾向が高い」(UBS証券のシニアアナリスト田村晋一氏)ため、TOB価格が引き上げられても王子に賛同しない可能性が高い。

 王子にとっても、TOB価格を引き上げるだけの「王子の株主に対する説明や理屈が立つかどうかが焦点になる」(大手証券)。

 市場で取引されている北越の株価は4日終値で846円。日本製紙が買い増してくるとの思惑から高く吊り上げられている可能性はあるものの、王子の提示する価格を上回って推移すれば、既存の株主にとっては王子のTOBに賛同するより、市場で売却してしまった方が得かもしれない。今後1カ月弱で、王子は難しい選択を迫られることになりそうだ。

(ロイター8月7日=東京)

 (06/08/07 12:13)  





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