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最近中国の物価は大幅に上昇、食品価格の上昇が顕著で、中国瀋陽では豚肉が過去10年来の最高値をつけた(Getty Images)

中国:物価が急上昇、間近に迫るインフレ

 【大紀元日本5月31日】最近、中国大陸の物価が上昇の一途を辿っている。国家統計局の数字によると、消費者物価指数(CPI)は、3月において3・3%上昇、4月において3%上昇した。消費者物価指数の上げ幅が3%以上となるのは、インフレを警戒すべきシグナルである。2か月連続で3%を突破したことで、多くの人は、インフレが間近に迫りつつあることを明白に感じている。

  今回のインフレについて、ある専門家の予測によると、最後に貧富の格差、矛盾を更に激化させ、ひいては、大規模な社会の動揺に到るという。

 物価の上昇が最も顕著なのは食品

  今回の物価上昇の特徴は、民衆の生活と密接な関係がある食品価格の上昇のペースが最も早いことである。食肉を例にとると、「華商晨報」の報道として、瀋陽の豚肉価格が過去10年で最高となっている。瀋陽市物価局の責任者は、今年の豚肉価格は、前年同期に比べ、99%を超える上昇となっていると語った。

  済南、南京などの多くの地域でも、豚肉の価格が過去最高となっている。5月に入って以来、北京、上海、武漢、長沙などの大都市における豚肉価格もまた上昇を続けており、1キロあたりの価格が、数週間のうちに、5元から8元に上昇している。農業部のサイトによると、5月以来、全国多数の省区市における豚肉価格が対前年比で大幅に上昇している。

  しかし、価格が上昇しているのは、豚肉だけではない。油、食肉、野菜の価格の全てが上昇している。中国国家統計局が全国31000の農業生産経営者及び農場に対して実施した価格調査によると、今年第1四半期における全国農産品価格は、前年同期に比べて7・3%上昇した。このうち、民衆の生活と密接な関係があり、上げ幅が比較的大きい品目は、穀物(8%)、油(13%)、生きた豚(18%)、家禽(12・7%)、卵(11・8%)である。このように、民衆の食卓の主要部分を構成している農副産品価格が上昇を続けているのである。

 価格上昇によって貧困者が更に貧困に

  価格上昇が都市部の低収入世帯に与える影響は非常に大きい。許容能力が最も弱い、都市の低収入及び生活困難世帯は、価格上昇の圧力を一層強く感じることとなる。

  中国甘粛省統計部門の分析によると、現在、甘粛省の最低収入世帯では、食品消費支出が消費支出全体の6割を占めている。今回の物価上昇で、一般の低収入世帯は、たとえ節約に励んでも、平均支出額は毎月45元前後の増加となるが、他方で、2007年における生活保護世帯の平均収入は、毎月わずか15元しか増加しない。当地生活保護世帯に対する調査によると、3人家族の場合、物価上昇前は、550元前後で基本的な生活を維持できた。しかし、今回の物価上昇後、毎月少なくとも700元余りが必要となった。生活保護を受けるための収入の基準が168元となったばかりの甘粛省の低収入者層にとって、生活がより困難になることは想像がつく話である。

 農産品が値上がりしても農民に利益なし

  食糧を中心とする食品価格の上昇について、受益者が先ず農民であると考えたくなる人もいるだろう。しかし、統計数字から見えてくることは、農民が、必ずしも今回の価格上昇の恩恵を受けられないということである。第1四半期における中国農民の平均現金収入は、対前年比で2・1%の増加となっており、伸び率は前年同期に比べて0・6%増えている。「過去10年で最高の伸び」とはいうものの、これと同時に発生している現象として、農業生産材料の価格上昇率が、前年の2・2%から4・4%へと2倍に増加している。

  さらに、農村余剰労働力が増加するにつれ、農民出稼ぎ労働者も増加している。彼らは都市部で生活するが、収入水準は都市の人に比べて少ない。統計によると、村外の就労者の収入の伸び率は18・8%で、伸び率は前年に比べて1・6%減少している。出稼ぎに出る農民の収入の伸びが緩和する一報で、生活消費支出は大幅に増加している。

 物価ほどに伸びない賃金

  しかし、中国共産党(中共)政権は、国民の賃金を上昇させるために努力する、という一つのニンジンを全国国民の眼前にぶら下げている。先日、労働・社会保障部労働賃金司司長・邱小平は、普通労働者の賃金を引き上げるための5大措置を提出したが、これが、世論の熱い議論を巻き起こした。皆の注意が「賃金の引き上げ」に集中する一方で、物価上昇に関するニュースはほとんど無視された。

 ネットサイト「中国法院網」に掲載された文章「物価上昇に“食われる"賃金上昇に注意せよ」で、筆者は、「賃金の引き上げは、当然よいことである。しかし、これは将来の話に過ぎないのであって、ある時点で賃金がどれだけ上昇しているかについては、誰にも分からない。他方、物価上昇は、日々、お金を出すことを実際に強いるのである。『賃金の伸びは眉毛と同様に遅く、物価の伸びは、ひげと同様に早い』は、民間に広く知られるフレーズとなっている」と述べている。

  たとえ事業単位が賃金を引き上げても、民衆の怒りは収まらない。その理由は、彼らの家庭の帳簿では、「収入の増加」が「支出の増加」に追いついていないからである。「賃金を上げなくていいから、物価を上げないでほしい」というのが、実情だ。

  貴陽市民の劉さんの退職金は、毎月800元余りである。以前、毎月の食事代はおよそ400元余りであったが、今年の食品価格上昇後、支出額が100元余り増加した。劉さんは、「もともと一杯40元だった油が、現在は70元余りになっている。米の価格も、500グラム当たり0.3~0.4元上昇している。また、最近では、豚肉価格が驚くほど上がっている。賃金が、やっとのことでわずかに増加しても、物価上昇に相殺されてしまう。賃金の伸びは、物価ほどに早くないと感じている」と話している。

 ネットサイト「紅網」に掲載された文章「物価上昇に呑み込まれてはならない国民収入倍増政策」には、「数字には表れない物価上昇は、数字に表れているレベルに止まらない。近年、民衆に最も強い印象を与えている事象として、水、電気、石油・ガス、交通などの公共消費財の価格が上昇を続けている。現在の物価上昇のペースに従えば、賃金や農民の収入がふたたび増加しても、物価上昇により、すぐにその効果が打ち消されてしまう」と指摘されている。"

 人民元の増価と減価が並存

  人民元の切り上げが行われる過程において、なぜ物価が上昇する(=人民元の減価)という非常に矛盾した現象が発生するのか。この点について、中国問題の専門家である石蔵山氏は、「まず、中国がなぜ経済の高度成長を必要としてきたかを明らかにしておくべきである」と語っている。

 30年近くに渡る中国の改革は、社会利益の再分配の過程であった。この過程において、社会のパイを改めて切り分ける必要があるが、この過程が強硬に過ぎれば、大きな社会矛盾を引き起こすことになる。このため、パイを拡大し、最下層が顕著な損失をあまり負わないようにすることが必要であった。これによって、利益の再分配を暗黙のうちに進めることができた。以上の過程が、まさにインフレの過程である。

  中国には、特別な統一政策がある。その第一が低利率、第二が高投資率、第三が社会保障の低レベル化である。低保障が貯蓄を促し(消費ではない)、低利率が、資本コスト、投資コストを引き下げることで、高投資率を実現する。その最終的な結果が、まさにインフレである。

  他方、為替レートは、主に、一国の対外貿易の経常項目と資本項目の差によってもたらされる。物価水準と関連はあるが、直接の関係はない。特に、現在、中国の現在の物価は、欧米の主要国家とは依然として距離がある。このため、巨額の貿易黒字が発生しており、必然的に通貨切り上げの圧力が働いている。ここで重要な問題は、いまの過程において、中国が、より多くの外国物品の輸入を促進できるかどうかである。それができないならば、人民元切り上げに対する国際圧力が継続することとなる。

 狂騒の果てに

  石蔵山氏によると、中国人が稼ぎ出すお金は毎年増加しているが、暗黙の減価(相対物価)の幅が大きいため、大部分の人は、収入の増加を明確に認識できないでいる。このため、社会矛盾が緩和されている。

  インフレの結果、民衆は、よりリターンの大きい資金運用方式を取る。その結果が、不動産市場と株式市場の高騰である。88年のインフレ時においては、皆がカラーテレビや家具を購入した。今回のインフレ時においては、皆が不動産や株式を購入している。その示唆するところは同じであるが、今回の場合、特に株式市場において、資金面でのリスクが大幅に増加しており、最終的に、貧富の格差、矛盾の激化をもたらす。

  石蔵山は、「中国が更なる狂騒の時代に入ると予想する」と語る。株式市場、不動産市場の暴騰の結果は、社会の解体、あるいは、社会学者の優雅な表現を借りれば、社会のデコンストラクション、大混乱である。

  優秀な人々の見解は、は大方同様である。「商業信息報」に掲載された文章「超速的物価上昇は国、民衆の双方に不利」の筆者も、「物価上昇は、極めて容易に連鎖反応をもたらし、ひいては悪循環を引き起こす。これは、社会矛盾を激化させ、社会の安定を直接に損なうことになる」と指摘している。"

 (大紀元記者・倪恵玲総合報道)


 (07/05/31 08:42)  





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