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読書の秋〜こどもの「本」心の空〜
『ケルト妖精物語』(ちくま文庫)

書評:『ケルト妖精物語』

 【大紀元日本9月22日】ケルト人はアイルランド民族の祖先。紀元前5世紀ごろに、アジア中央草原から移動してきました。アイルランド農民の妖精物語と民話を、W・B・イエイツ(1865−1939、アイルランドの詩人)が編集しました。アイルランドは島国です。それで「地と水の妖精たち」が跋扈しています。

 風が藁屋根をかすめたり木の葉を吹き上げて通り過ぎて行けば、それは妖精たちの仕業なのでした。アイルランドの農民たちは帽子を脱いで、「妖精たちにも神のお恵みを」と祈ります。「妖精は救われるほど良くもないが救われぬほど悪くもない堕落した天使だ」と信じられていました。

 ケルトの妖精は自分の子どもを、人間の子どもと取り替えてさらってゆく事があります。「取替え子」と名付けられたお話です。「人間の子どもを盗み取り、その代わりに、千歳かあるいは二千歳にもなるような皺だらけの妖精を置いてゆく」(イエイツ)というのです。貧しい農家の子どもに一人、訝(いぶか)しげな様子の赤ん坊が揺り篭にいました。「これは神様が、かつて生命をお与えになったうちで、最もみすぼらしく醜く、不健康な赤ん坊」でした。近所の人たちは「取替え子」ではないかと疑っていました。

 しかし心優しい母親は、一言も言葉を発しない子どもを大切に育てました。ある日のことです。旅回りの盲目のバグパイプ(笛)吹きが、この家に逗留して楽を奏しました。するとぴーぴー泣いて周りを困らせるばかりだった子どもが、揺り篭で起き直って「にやり」と笑いました。母親が笛を傍に持っていくと奪うように手にして、何とも巧みに吹き奏でたのです。

 この幼い笛吹きは、いたるところで評判になりました。この笛の音を聞くと誰もが身軽になって、踊り出さずにはいられなくなるのです。まるで妖精のダンスのように、靴が磨り減るまで踊り続けたくなるのでした。これはこれで良かったのですが、平穏な農民の暮らしがきりきり舞いさせられる事態も起こり始めました。

 子どもの一家は橋を渡って、引越しをしなければならなくなります。橋にさしかかると揺り篭から身を乗り出して、子どもは河の流れにさらわれていきました。笛を放さず陽気に吹き続けた子どもは、下流の曲がり角を過ぎて見えなくなりました。妖精の国へ帰ったのだというのが、人々の考えでした。妖精の子どもは一族のもとに帰りましたが、取り替えられた人間の子どもはどこにいるのでしょうか? 妖精が遺した笛の音に尋ねてみる他はありません。

 (燦)

(07/09/22 08:15)



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