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カナダ総選挙勝利の記者会見で、経済重視を主張したハーパー首相=2008年10月15日、カルガリーで(Mike Ridewood/Getty Images)

世界金融危機の直撃を免れたカナダ

 【大紀元日本10月19日】信用収縮や株価下落の世界金融危機に揺らぐ米国に対し、隣国カナダは、直撃を免れたという。米紙ワシントン・ポストが伝えた。北京五輪後の世界金融危機に直面しながら、マネーゲームに陥ることのない、保守的で堅実な金融政策と、人権外交を重視し、中国政府に対し人権状況改善を指摘したハーパー首相率いる保守党が総選挙で快勝したことは、単なる偶然ではなく、符牒の合うものであり、国際社会に範を示したものと言える。

 マネーゲームに走らなかったカナダの金融機関

 ワシントン・ポストによると、カナダには、サブプライムローンや自宅差し押さえの問題も起きていないことから、専門家は、カナダの金融機関は米国ほど金融危機の影響を受けないと見ている。長引く景気後退にあえぐ米国に比べ、カナダは比較的楽観的で、金融危機を乗り越える好条件にあるとされている。

 BMOネスビット・バーンズの主席エコノミスト、マイケル・グレゴリー氏は「(金融危機の)影響を受けるが、それほど傷も大きくなく、長引かないだろう」と話す。

 カナダの楽観論の根拠は、金融システムにある。カナダの金融機関は高度に統制されており、当座資産も多く、借り入れ資本も少ない。野心的な投資銀行ではなく、安定した預金者を多くし、自己資本率を堅固にするという従来の方法で業務を進めるというのがカナダの金融機関。

 グレゴリー氏によると、カナダの金融機関に対する規制は厳しく、貸し付けに関しては抑え気味であるという。世界経済フォーラム(本部・ジュネーブ)が今月発表した「国際競争力ランキング・レポート」によると、カナダの金融機関は、スイスやルクセンブルグを超えて、世界でも屈指の健全さを誇るとされた。

 カナダ銀行協会(CBA)によると、同国の金融機関の堅実性の一因は、全国規模であるという。カナダの五大金融機関は、全10州に支店を有しているため、地域の経済変動の影響を受けることが少なく、必要に応じて資本の移動が可能である。それに対し、米国の銀行は、同国全50州に支店を持つものはない。

 身の丈に合った住宅ローン

 カナダの住宅ローンにも厳しい規制があり、住宅購入資金の80%以上の担保が保証されなければならない。国内の住宅ローンの3分の2は、特殊法人のカナダ住宅金融公庫(CMHC)が保証している。CMHCの審査が厳しいため、返済可能な住宅ローンしか組むことができない。

 住宅ローン解約も米国より難しく、住宅の鍵を置いて、出て行けばよいというわけではない。カナダの七大銀行を対象とした調査では、3ヶ月以上の滞納は今年7月で0・27%で、史上最も低い率に迫ったという。米国の大量の不良債権をつかまされたカナダの銀行はほとんどないという。

 さらに、カナダの住宅ローンは非課税でないも、住宅購入を敷居の高い者にしている。結果として、カナダでは、米国のような建設ラッシュもなかったことから、供給過剰にもならずに済んでいる。

 カナダでは住宅ローンの税控除がないことから、「住宅ローンを組んでも、できるだけ早く完済してしまいたいと人々は考えている」と、トロント大学のピーター・ダンガン氏は指摘する。

 こうした比較的経済の健全さが保たれている中で、資金を必要としている米国企業がカナダの子会社に短期貸し付けを求めているという報告がある。

 しかしながら、カナダ経済に問題がないというわけではない。トロント証券取引所も下落し、カナダ・ドル安は貿易に痛手を与えている。米国の景気後退は、貿易の8割を依存するカナダにとって、直接影響している。特に、米国の住宅ローン問題は痛手が大きい、米国の建設資材の多くはカナダ産木材だからだ。

 バランス感覚に優れたハーパー首相

 現職のスティーブン・ハーパー首相が率いる保守党にとって、世界金融危機の不安材料は、総選挙の追い風となり、過半数に迫る勢いで勝利した。2006年の就任以来、2年連続で消費税引き下げを実現した経済政策に、国民は続投を期待した。

 議席を過半数獲得できなかったことで、野党との協調が迫られるが、政局を見極めることに長けたバランス感覚を持つ同首相にとっては、国内外の経済不安の難局を乗り越える上で、本領を発揮する場となり、評価はさらに高まるだろう。

 トロント大学をわずか2ヶ月に中退した同首相は、弁護士出身でもなく、いわゆる主流のエリートではない。しかし、人心の機微をとらえた姿勢は、多くの支持を集めた。

 人権問題においても、これまでの首相とは違い、人権状況改善を堂々と中国政府に提言した。中国の経済力拡大になびく国々が多い中で、経済的利益よりも人権外交を優先し、天安門事件や中国で起きているさまざまな人権迫害についても抗議している。北京五輪の開会式には出席しなかった。

 また、今年6月には、先住民への同化政策について謝罪した。

 カナダが世界金融危機の直撃を免れたのは、その保守的かつ堅実なシステムだけではない。米国のような移民の多い国として、それぞれの背景を持った国民に配慮を示し、自らは伝統的な価値観を持ちながら、リベラル派にも一定の理解を示すハーパー首相の政局の舵取りも功を奏していると思われる。

(翻訳編集・月岡)

 (08/10/19 14:06)  





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