THE EPOCH TIMES

中国、直訴制度を廃止へ=北京への陳情者阻止、60周年式典の治安強化策か

2009年08月23日 00時24分
 【大紀元日本8月23日】中国共産党建国60周年記念日を前に、国家安全、治安と司法を監督する権力中軸である中央政法委員会が、司法不正を訴えるため地方から北京へ訪ねる年間200万人以上の陳情者の上京を阻止するため、民衆からの苦情申し立てに対応する従来の「直訴制度」を廃止する方針を示した。政権設立60周年記念式典の成功を狙い、各地から上京する「社会秩序を撹乱する反社会勢力」を取り除く策であるとみられている。

 新華社の報道によると、18日に、中国共産党中央政法委員会が記者会見を開き、中央弁公庁、国務院弁公庁が最近各政府部門宛に下達した、来信来訪(陳情)の直訴制度の改定方針(「中央政府法政委員会が法律・訴訟に関わる来信来訪業務強化の意見」)を通達した。新しい方針は、今まで地方から北京への陳情者を阻止するために、▼法律執行の不公正で生じた直訴問題を地方で解決する、▼直訴する人数の多い省(自治区、直轄市)に対して、中共公安政法機関は「阻止チーム」または、「巡回阻止チーム」を派遣し、直訴者たちが地方を出る前に止める、▼繰り返し直訴するものと地方から省レベルおよび中央レベルに直訴するものに対して法的な処置を取る、などの規定を強調した。司法が行政から独立されていない一党独裁制度の元で大量に生じた法律執行不公正の被害者の苦情申し立てを救済する「直訴制度」 を、廃止する方向へ踏み出した。

 記者会見より前に、8月4日から6日、中央政法委員会は、各地方の公安、司法部門幹部を招集して、北京で同規定の執行に関する会議および研修を行った。中央政法委員会秘書長周本順が6日の会議で、直訴の問題を地方での解決を抑え、「新中国60周年記念の祝賀イベントに調和と安定の社会環境を作り出すため」であると強調した。

 *廃止方針が出盧した経緯

 同「意見」の詳細は、公開されていない。中央から地方に通達されたのは、今年の6月当たり。実際、中央政法委員会は今回の陳情制度の「意見」がまさに、中共中央政法委員会書記である周永康(ゾウ・ヨンカン)が率いる政法勢力が長期にわたり直訴者問題への処理方法であるという。

 その背景に、近年、行政幹部および法律執行者の腐敗が全体化したのに伴い、法律訴訟ケースが激増すると同時に、合理的な解決がされないケースも年々増加し、民衆が当局に対する怒りが炎上している。司法制度で合理な解決がされず、上級政府に苦情を申し立てするか、または怒りが抑えられず暴力手段で当局に対抗する事件となる。地方からの陳情者と各地の暴力抗議事件は、当局にとって政権維持の安定を悩ませる2大脅威である。

 当局の統計数字によると、全国各レベルの「来信来訪」部門に司法の不信感を訴える申し立てのケースがこの数年間2千万件にも達し、直訴する者が年間1千200万人以上もいる。その内、省政府および北京政府での直訴に踏み切る民衆が年間200万人以上おり、当局にとって政権維持の「安定」を脅かす「社会秩序を撹乱する反勢力」となっているのだ。当局が今の時期に直訴制度廃止への規定を通達したのは、10月1日を控え、政権設立60周年記念式典の無事成功に、「撹乱活動」を起こす直訴者の上京を阻止する狙い。

 香港「争鳴雑誌」5月号の記事によると、周永康がコントロールしている中央政法委員系統は08年末から09年旧正月までに、省政法委に対して、調査および研究を通して09年の社会情勢についての理解と判断を下すようにと指示した。各地方からのフィードバックに基づいて、周永康氏は再び「社会の安定が何よりも重要である」ことを09年の政治スローガンにしたほか、「下部基層幹部が直訴制度の廃止を強く求めている」の結論を出した。

 今年3月に北京大学の孫東東教授が、「直訴者の99%以上が精神病だ」の暴言を発してネット上で大反発を起こした。情報筋によると、孫氏は中央政法委員会が社会の反応を見るために代わりに発言させられただけで、背後には周永康が率いる政法勢力が陳情制度廃止のために試験的に探索したことであるという。

 4月上旬、中共上層部では直訴制度の廃止について激論があったという。政法委員会調査研究報告会に関与したベテラン法学者の話によると、「政治局は意見が分岐している。直訴制度の保留を支持する側は、直訴制度を実行しながら改善させ、法的なものを導入する可能性も考慮すると主張した。一方、制度の廃止を支持する側は、社会安定が何よりも重要であることを堂々と主張すべき、国内外の敵対勢力に弱腰を見せてはならないと主張した」という。

 「争鳴」の報道によると、中共元老の喬石および李瑞環が直訴制度を現状維持と主張し、李克強・副総理もそれに同調した。そのため、北京上層部は制度廃止をペンディングした。

 4月下旬、中央政法が再び各関係部門に内部文書を下達、「各情報によると、敵対勢力が組織的に直訴者の中に潜入し、人民内部の矛盾を敵対矛盾に転化させる倍率が高いことから、直訴者らが操られている状況下、都心部で騒乱を引き起こす可能性が排除できない。よって、監視を強化し、即時に情報をフィードバックさせる手段、即ち社会安定を維持するチームが必要である」との内容を指示した。

 情報筋によると、5月の連休があけてから直ぐに、地方各級政法委に所属する「社会安定維持チーム」および「安定維持弁公室」に、国家財政より1千億元(約1兆3千億円)の経費を上記「社会安定維持チーム」のために充当した。同経費にウイグル族やチベット人を制御するための経費は含まれていない。

 *年々増える直訴者

 中国官製メディアによると、チベットなど少数民族を含む、郷・鎮以上の政府に陳情した直訴者はここ数年、年間で約千二百万から千四万人もいるという。

 一党独裁の中国では、司法は行政から独立しておらず、法律制度は不完全であり、幹部の腐敗とモラルの喪失などの問題で、法律の公正が守られていない状況。そういう現状の中、 「来信来訪」(信訪)といわれる民衆からの苦情申し立てに対応する部門が従来各地で設立され、直訴制度は、民意が反映されにくい一党独裁下では民衆と政府の対立関係を緩和する一定の役割を担ってきた。

 しかし、地方では各部門の権力者が腐敗、司法部門は権力者と連携し、または、司法部門自体は暴力勢力でもある場合がほとんど。直訴者の訴えは解決されず、やむを得ず上級の「信訪」部門を訪ね、公正を求めることが多い。

 直訴者の人数が急激に増えたのは、1999年7月、精神団体法輪功(ファールンゴン)が中国で弾圧されたことがきっかけ。7月22日、当局が法輪功を取締と正式発表後、全国各地の大量の法輪功練習者が、地方から北京へ足を運び、国家「信訪」局か、天安門広場で、信仰自由の権利を訴えた。その際、国家信訪局の周辺では、大量な警察が見張り、陳情しようとする法輪功練習者を即拘束した。
1999年4月25日、北京へ陳情した各地から集まった約1万人の法輪功学習者(明慧ネット)



 当時、法輪功弾圧の政策を執行するため、江沢民元国家主席は、中央政法委員会に直管轄する事務局「610弁公室」を設立し、公検法、国務院、軍隊を越えるほどの権力を与えた。「610弁公室」は当初、法輪功弾圧専用の機関として設立されたが、その後、直訴者および異見者など、当局に「社会秩序を撹乱する者」とみられる「反動勢力」すべてを対象とし、「610弁公室」も「安定維持チーム」および「安定維持弁公室」に変身した。少し前に海外へ亡命した中国元国家安全部ベテラン諜報員長官の李鳳智(リ・フォンチ)によると、「610弁公室」が法輪功、直訴者および異見者への制圧に大量な人力と財力を投入したため、体制内で多くの不満の声が上がっているという。

 それからの10年間、大量の直訴者による直訴活動は中国社会で、民衆が自分の人権を戦うためのメーンの手段となり、直訴する者が年々増えている。

 *直訴制度の廃止は、暴力抗議の転換につながり

 直訴者が急増したことと中国各地で相次いだ集団抗議は、近年中国社会官民対立が緊張する現象。実際、両者は関連しており、集団抗議事件は直訴者たちが政府に対して何度も陳情し、政府に無視された後に発生することが多いのである。

 中国官製の調査によると、年間一千万以上の法律への苦情申し立ての中、80%以上の案件が合理的であるというのが最高法院の見解である。不公正の司法制度自体が、直訴者を生みだす根源である。

 中国大陸民間の人権情報ウェッブサイト・「民生観察」責任者の劉飛躍氏は、地方の民衆が地方で問題解決ができないため、やむを得ず北京への直訴を踏みだした。制度の廃止で直訴の現象が消えない、民衆の不満を解決する根本は、司法制度を解決することにあると指摘した。

 当局が人的に「敏感日」を設定、10月1日の祝いイベントのため、直訴制度を廃止する行動は、かえって不安定を招いてしまうと劉氏がコメントした。

 04年の調査では、直訴を通じて解決された問題は全体のわずか0・2%に過ぎなかった。しかし、従来の直訴制度は、地方で公正を求められない陳情者に希望を与え、ある程度民衆の怒りを洩らす口であった。直訴制度が廃止されても、司法制度が改善されていないのが、中国社会の現状だ。

 「平和の手段へ訴えるものさえ許されなかったら、暴力の手段へ訴える者が増えてくる。中国の歴史上、暴力で政権を踏み倒す民衆が少なくはない。秀才が全部殺されたら、残るのは暴民。秦の歴史は、これからの中国で演じられるだろう」と、在日の中国問題研究家・夏一凡が、直訴制度の廃止が、民衆が暴力手段の訴えに転換することに繋がると警鐘を鳴らした。


(報道・余靜、肖 シンリ)


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