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北京のある映画館の「アバター」のポスター(LIU JIN/AFP/Getty Images)

聖人は庶民に勝てず? 「孔子」の人気低迷 「アバター」通常版再び映画館へ

 【大紀元日本2月4日】空席の目立つ映画館。中国当局が総力を上げて推進する国産巨編映画「孔子」の売れ行きはかんばしくない。一方で、過去最高の初日販売数を記録したSF映画「アバター」は、当局が2D版を制限したにもかかわらず、圧倒的な人気を誇っている。「孔子」の売れ行きが低迷する中、中国当局は先週密かに「アバター」2D版の上映中止を撤回した。

 映画「孔子」のプロモーションに必死

 映画「孔子」は、中国政府が昨年、製作費1・5億元(約20億円)を投じて製作した「歴史超大作」。香港の人気俳優チョウ・ユンファ(周潤発)主演で、中国を代表する女性人気歌手・王菲(フェイ・ウォン)が主題歌を歌うなど、話題性は十分といえる作品だ。旧正月期間中は、上映の宣伝企画も盛り込まれる。「儒教思想の精髄を現代に伝える芸術作品として、中国映画市場における一つの指標となった」、「孔子」上映に向けて、国内メディアは絶賛の報道で埋め尽くされている。

 一方、「孔子」の封切りが間近となり、SF映画「アバター」の人気ぶりを意識した当局が、「アバター」2D版の上映を先月22日から打ち切りにしたと、映画業界上層部の話として中国国内メディアが伝えている。また一部の地方政府は、地元の官僚たちに団体で「孔子」を鑑賞するよう通達を出している。儒教の教えを説いた「孔子」の物語は、当局が推進する「調和社会」に合致するよう製作されており、党の路線を維持したい当局のもくろみが窺える。

 情報筋によると、孔子の故郷である山東省では、地元の国家機関や小中学校、また企業などが集団で「孔子」を鑑賞するよう命じられており、同省では67%の高い鑑賞率を達成したという。一方、上海での初上映では、僅か数百枚のチケットしか売れていない。広州市の映画館では、「アバター」のチケット2枚の購入に付き、「孔子」チケット1枚をプレゼントするなど、「孔子」のプロモーションに力を注いでいる。

 「アバター」通常版が再上映へ

 「中国映画放映公司」の発表によると、「孔子」の上映初日の売上げは、全国14都市合わせて800万人民元で、1回の上映につき平均3200元(約4万3千円)の収入。それに対し、「アバター」の上映初日の売上げは3500万人民元で、1回の上映収入は平均3・5万人民元(約47万円)となった。

 インターネットでのアンケート調査によると、「孔子」の評価は「アバター」より遥かに低い。国内のある娯楽系サイトによると、10点を満点としたアンケートで、13039人が「孔子」の平均点を4・4とする一方、95280人が「アバター」に9・1の平均点を付けた。「アバター」の上映制限に不満を持つ市民が、当局お墨付きの「孔子」に抵抗するようネットで呼びかける動きも出ている。

 「孔子」の人気低迷を受け、旧正月の雰囲気作りのために、中国映画公司は3D施設のない映画館での「アバター」2D版の上映を再び許可した。

 中国当局は海外映画の上映数を厳しく制限しており、上映が認められている海外映画は年間20本のみ。観客数が見込める旧正月などの祝日には海外映画の上映を禁止したり、中国政府の都合に合わない映画を制限するなどの措置がとられてきた。

 「聖人」が「庶民」に惨敗

 「孔子」は、建国60周年を迎えた昨年、政府出資の元で製作された数々の国策映画の中のひとつ。

 上映に向けた国内メディアの報道では、「儒教思想の真髄を総合表現した芸術作品であり、国産映画のマイルストーンのような存在。国産巨作のレベルを『聖人』にまで持ち上げた」と高く評価している。

 同映画が表現する「儒教思想の真髄」とは、すなわち「忠君愛国」。北京市では、一部の中学校で旧正月休みの宿題として「孔子」を鑑賞した感想文を生徒に課している。同映画を通じて、「愛国教育」も実施したい当局の意図が窺える。

 文化大革命の時代には批判の対象となった「孔子」思想が、今や当局が全力で宣伝する時代となった。儒教の「忠君愛国」思想は、胡錦濤国家主席が提唱する「調和社会」に有用であり、共産党政権の維持には好都合だといえる。近年、海外進出のめざましい「孔子学院」では、孔子の教えと中国語教育を通して、「共産党を愛することは中国を愛すること」という思想を教え込んでいるともいわれている。

 「孔子」が聖人の物語ならば、「アバター」は、庶民が権力で資源を奪おうとする政府に立ち向かう物語。この勝敗、国内では「庶民の物語」に軍配が上がっていると言えそうだ。

(大紀元日本語報道チーム)


 (10/02/04 07:50)  





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