THE EPOCH TIMES

西南大干ばつ 中国経済を危機に・メコン河流域国にも影響=中国国土専門家インタビュー(三)

2010年04月10日 07時38分
 【大紀元日本4月10日】森林被覆率50%以上、全国の水資源の70%を占める中国西南部5省。中国の水資源は、常に南部で洪水、北部で干ばつという「南涝北旱」が特徴だった。かつて「空気から水が取れる」といわれるほど水資源の豊富だった中国西南部の土地は枯れ、作物は育たず、水運航行が絶たれ、ダムは干上がった。飲み水さえなく、土地を離れた農民は100万人以上に上るという。

 09年7月以来、中国西南地区では百年に一度といわれる干ばつが続いている。今春は温度が高く雨の少ない天気が続き、中国西南地区の干ばつによる被害人口はおよそ5千万人。2千万人の飲用水確保が困難な状況で、特に雲南省、貴州省は深刻だ。

 原生林が豊富で天候がずっと順調だった中国西南部5省が、なぜ今回深刻な干ばつに見舞われたのか。昨年7月に発生したこの干ばつ問題が、なぜ今年3月まで取り上げられなかったのか。ダムが数多く建設されているのに、なぜ飲用水さえ保障されないのか。中国経済にどんな影響を与えるのか。周辺国家にも影響するのか。中国国土計画専門家で、『三峡工程36計』の著者である王維洛氏(現在ドイツ在住)が、記者の疑問に答えた。

 王氏がインタビューに答えた要点を、3回に分けて紹介する。以下は全文の最終部。

 アジアの貯水タンクが破壊 中国経済の発展を危機に

 今すでに分かったことは、この大干ばつの災難はまだ終わっていないということだ。人々は、この災難の原因を探っている。中国では、環境保護の意識を持ち、現状を憂慮している一部の人は、中国の水資源の実際の状況がどれほど困難であるのか、認識し始めている。

 水資源は将来、中国経済の発展を抑制するネックで、最も困難な分野となる。中国経済が前進しようとすれば、いまの水資源の現状で進めば、持続できない発展となる。水資源が、制限する要因である。

 中国当局は以前、水不足の問題を、「南水北調」の政策で解決しようとした。その後、「大西線調水」の政策も打ち出した。すなわち、西南地区(チベットをも含む)から北部と北西部に水を調達する。これは、中国当局の当初からの計画と戦略で、中国の水資源問題を解決する最後のカードと見なされ、これによって中国の水不足問題は完全に解決できると中国政府は認識していた。だから、当局は節水を気にかけず、水資源保護にも十分に取り組んでこなかった。問題解決のカードを持っており、西南地区には十分な水がある、と認識していたためだ。

 当時、最大のプロジェクトは西南地区から北と北西地区に2億立方メートルの水を調達するという「大西線調水」の計画だった。それは黄河の四、五個分の水量に相当する。何祚麻(中国科学院の院士)は当時の人民代表会議の席で、これは中華を振興する計画で、これによって国内の農用地を倍以上に拡大できる、中国の未来は西部の水に託している、と発言した。また、西部地区の水資源の総量は6千億立方メートルだと予測した。

 この予測は当時、一定の根拠があった。しかし、今回の西南地区の干ばつが発生してから、多くの人はある現実に気づいた。すなわち、中国の水資源問題はすでに行き詰っているということだ。中国の国歌の歌詞でいうと、「中華民族はすでに最も危険な時期まで歩んできた」。水資源問題にはすでに逃げ道がない。資源が無くなっている。

 中国のすべての環境が破壊されており、最も深刻なのがチベット高原への破壊だ。今年の西南地区の大干ばつは、チベット高原への破壊が原因である。上流からの水量は通常より25-35%減少した。氷河と雪が解け、草原が減少し、沼と湖が消えたことが原因だ。

 長江の水源となる氷河が大量に解けたため、源までの距離は、3年前は300メートルだったが、今年は1000メートルまで後退した。長江の源と氷河の間に砂漠が出現し、例え雪が解けて流れてきても砂漠で蒸発してしまうし、源では水の補給がない。一方、洪水の発生時期になると、大量の水が流れてきて、砂漠を経て直接長江の源に流れ込む。それにより、大洪水が引き起こされる。

 つまり、中華民族の貯水タンク、アジアの貯水タンクが破壊されてしまったのだ。それにより、中国の未来の道のりは非常に困難となった。私たちの命を守る貯水タンクが破壊されたからだ。

 ダム発電で水蒸発 メコン河流域国にも影響

 メコン河(西南部の大河・ランチャン河の下流)沿いにある国々のうち、ベトナムが受けた影響は比較的少ない。環境保護がある程度しっかりしているからである。タイにもNGO(非政府組織)が少なくなく、大きな役割を果たした。しかし、ミャンマーやカンボジアは、中国を頼ってダムを建設してきた。中国は技術を提供し、そこでダムを建設している。

 メコン河下流の国々のNGOは、中国当局が自分たちの水を奪ったと不満を漏らしている。なぜならば、中国の水流は人為的にコントロールされ、人為的に干渉されていると思われているからだ。しかし、政府レベルでは、経済を中国に依存するタイのような国は、抗議する勇気がない。中国当局は下流の2つのダムの資料をこれらの国に譲渡したが、最大規模の「小湾ダム」の資料は提供していない。

 現在、ランチャン河(中国国内を流れるメコン河の名称) の主流で4つの大ダムが、支流では10-20カ所以上の大ダムが建設された。それにより、ランチャン河の水流は人為的にコントロールされ、自然ではなくなった。人為的にコントロールされる水の流量は60%に達する。

 昨年、その流域に「小湾ダム」という水力発電ダムが正式に運行し始めた。同ダムは「三峡ダム」に次ぐ大型水力発電プロジェクトとみなされ、その固定貯水量は54億立方メートルに達し、ランチャン河の年間総流量の7-8%、揚子江の年間総流量の10%を占める。泥などがこのダムを埋め尽くさない限り、この54億立方メートルの水は永遠に下流に流れることがない。

 中国の政府関係者はメコン河沿いの各国政府に対し、ダムの水の蒸発量が非常に少ないため、計上する必要がないと説明している。小規模のダムならば、計上する必要がないのは確かだ。しかし、大規模のダム、特に一つの河の流域で階段式のように、数カ所、数十カ所の大型ダムが建設されている時、蒸発による水量の損失を考慮しなければならない。例えば、最もよく知られているのは、永定河(中国華北部の大河)の事例である。この河では528カ所のダムが建設された後、河が消えて水がなくなった。19億立方メートルの水が無くなり、永定河は姿を消した。一カ所のダムではわずかな水が蒸発するだけだが、大量のダムでは河を丸ごと蒸発させてしまう。

 欧州の学者は、河川の開発について、河にあるすべてのダムの総貯水量とその河の流量の比率が、15%に留まることが原則で、5%までがベストであると指摘する。しかし、中国では、その比率が100%になることを目指している。黄河の場合、100%を超えている。そのため、断流が度々発生している。水が無くなるとき、ダムから水を少量放出し、断流を人為的に防ごうとする。遼河も同様の運命で、海河、永定河も乾き切った。

 水力発電で河の自浄能力がなくなった

 ダムが水力発電を行うとき、下流の人々もこの水を必要としていることを考慮しなければならない。下流が水を必要とするときに、水は遮断される。下流が水を必要としないときに、水が放流される。上下流には、永遠にある対立問題が存在する。以前、ドイツのある本にこう書いてあった。この本は、ダムを母乳に例えている。赤ちゃんが泣くときには、母乳が出ない。泣いていないときに、母乳が溢れ出す。

 根底から言えば、水の役割とは一体何だろうか。発電用なのか、それとも人間が飲用し、命を守るためなのか。河川が流れているとき、自己浄化の能力を持っている。ダムで貯水することは、水力発電のためであると同時に、河川の自己浄化能力を退化させる。以前、河で野菜を洗ったり、洗濯したりしていたが、河川は汚染されなかった。自己浄化能力があるからだ。今、なぜ汚染されてしまったのか。河川が流れなくなったり、水流のスピードが大幅に落ちたりして、自己浄化ができなくなったからである。

 この現状を人間に例えて説明しよう。人間の腎臓には、毒を体外に排出する機能をもっている。その腎臓を売ってしまえば、得た金は水力発電の収入に等しい。しかし、自己浄化能力を失った。そのため、血液を浄化する機械を買ってきて、腎臓の機能を担わせようとする。すなわち、汚水処理施設を多く建設する。汚水処理施設の最も基本的な原理は、水が流れるときに浄化する原理である。腎臓を売って血液浄化の機械を買う、それとまったく同じ理屈ではないのか。

 本来ならば、健康な人間であり、腎臓もあり、血液を浄化する必要もない。腎臓を売って、GDPは確かにかなり躍進した。血液を浄化する機械を買って、GDPはさらに躍進できた。中国当局の計算方法はすなわちこれである。しかし、他の国はそうではない。腎臓一つを売ると、GDPはどれほど減少するのか、血液浄化の機械を買うと、GDPはさらにどれほど減少するのか、他国はそのように計算する。

 問題を解決するために体制の改革、思惟の改変は不可欠

 中国にどれほどひどい災難があっても、必ず食糧は豊作という発表になる。今年10月の農業報告には絶対に、豊作であると報告されるだろう。

 温家宝総理が被災地を訪ねる際、良く「多難興邦」を口にする。「災難が多ければ多いほど国が振興する」というわけの分らない考えである。現在は干ばつと治水の考え方自体、誤りである。毛沢東は、「人が必ず天(自然)に勝つ」と謳ったが、この考えは現在まで継承されている。この考え自体がおかしい。人間は、自然に勝つわけがない。自然に順応した行いをすべきである。

 また、中国は長期的に中央集権制に基づいているため、国民はいつも消極的に中央政府からの恩恵を待つ。従って、他人に頼らず、政府に頼らず、自ら何かの措置を講じる時、それは思惟が変わりはじめているということだ。

 自然界で、6カ月間ずっと降水が少ないのはモンスーン気候の特徴である。自然が西南地区に与えた環境は数カ月の降水不足で、それに対応するのは、実は難しいものでもない。中央政府による水利への投資が年々増えているが、人の禍の方が、よりひどくなっている。これは体制の問題であり、思惟の問題である。冷静に考え、この数年間の誤りを直視するならば、誤った道から正しい道に戻れると信じている。私の文章で、皆にわずかの啓発を与えることができれば幸いである。

 (終り)

(翻訳編集・叶子)


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