THE EPOCH TIMES

何清漣:弱者は永遠の「ゼロの集合体」ではない=中国農民抗争運動の予測

2011年01月06日 08時11分
 【大紀元日本1月6日】ニューヨーク在住の中国人経済学者・ジャーナリストである何清漣氏(女性・55歳)は、混迷を深める現代中国の動向を語るうえで欠かすことのできないキーパーソンの一人である。同氏は最近ブログで、中国各地で勃発する農民抗争運動に関しての見解を示した。以下はその全文である。

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 ここ数日、浙江楽清市近郊の農民村長の悲惨な死(※)を受け、中国の良識者は悲しみに打ちひしがれている。村長が消されたという理由が深い悲しみをもたらしている。政府は白昼堂々と公に一人の無実の人間を謀殺した。暴政下では、生きていくこと事態が危険な環境であることに人々は皆気づき、権力を前に個々の人間の無力さと小ささを垣間見た。今日の国際社会において、中国同様、暴政を遂行している北朝鮮などの少数の国を除いて、国家が国民をこのように抹殺できる政権はほかにあるのか。

 「村長はタイヤの下敷きになり死んだ」という報道は、この国家政権による謀殺事件の前後の経緯を詳細に記している。ここでは、私は今ただ一点だけを究明していきたい。つまり、各地にみられる農民の抗議運動のリーダーたちをみたとき、銭雲会さんのケースは特殊なのか、それとも普遍的なのか。

 銭さんの死が、中国の現実社会の非常に暗黒な一面をあらわにしたことは、疑いの余地もない。数千年の中国の歴史において、中国の農村部が今日ほど自衛する術のない状態に置かれたことはなかった。農村のいかなる資源、土地、河川、山、遺跡など、利用価値があると思われるすべての資源は、国家の名義で強制収用できる。GDPに貢献できると思われるものならば、高汚染をもたらす工業産業であっても構わない。農民の生存環境への汚染や、農民の健康への被害など、当局はまったく考慮しない。国土局の公式サイトの資料によると、銭雲会さんが在住していた浙江省では、2006年度、現地の土地強制収用に反対する農民運動が300件に達している。

 しかし、中国の都市部での就職口は限られており、土地が奪われた大勢の農民は行き場を失っている。また、土地が深刻に汚染されたため生存の危機に瀕する農民はさらに苦境に立たされている。彼らは行き場を失っているほか、汚染による深刻な危害にもひたすら耐えるしかない。窮地に追い込まれた農民は立ち上がって抗議するしかない。このような持続的に続く抗議運動の中で、農民リーダーが誕生した。リーダーは主に土地のために戦う者と環境保護のために戦う者の2種類に分けられる。中国の一部のメディアが後者を「環境衛士」と称した時期もある。前者は生存する土地を略奪から守る。後者は汚染される土地を救う。彼らの反抗は通常ターゲットを定めている。例えば、特定の利益集団または背後の地方政権。そのため、彼らの反抗は最初から大きな政治的リスクを背負っている。リーダーシップを取る農民たちのその後の運命は皆とても悲惨である。

 陝西省楡林市近郊の三岔湾地区の農民リーダー・高拉定さんは、5000ムー(約3330ヘクタール)の農地を守るため、1999年から3600人余りの村民を率いて現地政府と長期的な抗争を続けていた。2004年に遂に武力弾圧に遭い、村民数人が死亡し、高拉定さんら27人の村民は「民衆を集めて政府機関を攻撃」した罪で懲役刑を言い渡された。

 四川省自貢地区の人権活動家・劉正有さんのケースも有名である。1993年、自貢市政府は「ハイテク技術開発区」を建設すると称して、劉さんの村の土地を強制収用した。その後、劉さんは1300人余りの村民を率いて、メディアの報道や司法訴訟などの合法な手段で抗争を繰り広げていた。しかし、最後には「社会保険詐欺」の罪で劉さんは投獄された。

 かつて、メディアや環境保護団体から「太湖の衛士」と讃えられていた呉立紅さんは、後になって、地方政権に「環境保護を名乗る詐欺行為」という罪で投獄された。また、2008年春、黒龍江省佳木斯市富錦地区の農民抗争を支援した楊春林さんは、当局に「海外の反体制勢力と結託して、国家政権の転覆を企む」罪で投獄された。

 被害者名簿を作成すれば、かなり長いリストになるだろう。歴史上において、年間十数万件の農民抗争運動の中から、李自成などの優秀なリーダーを輩出した。しかし、現在では、当局の弾圧手段と民間の抗議者が手にする武器との力関係があまりにも掛け離れすぎているため、これらの名の知られた、または名の知られていない農民リーダーたちの屈さない反抗もしばらくの間は、長い長い抗争の道を敷く砂と石に過ぎない。

 まるで羊と狼のような力関係を、農民たちが認識できなかったのではない。湖南省の農民リーダー・倪明さんは、「今農民が暴力的な抗争を行っていないのは、心の準備ができていないからではなく、刀と槍で戦える時代ではなくなったからだ」と見解を示している。

 銭雲会さんが国家権力により公然と謀殺されたのは、「王権が国の至るところに存在し、国民の自治の権利が完全に喪失してしまい、倫理道徳が根幹から崩壊した」という背景から発生した悪質な事件だ。天下の財を汲み取って自分たちを養うこの政権が、国民と公共の財産を略奪する過程に伴い、民衆の命がけの抗争が必然的に引き起こされた。現在、公然とマフィアの採る手段で抗議者を謀殺するまでに堕落した。この政権の合法性も必然的に国民から疑問視される。

 古の言葉に「天下が憂慮するのは民の貧しさ。天下が恐れるのは民の怨み」とある。高圧的な手段で政権を維持すれば、必ず限界がやってくる。銭雲会さんの死のような事件が頻繁に発生すれば、だれもが正確に予測できないタイミングで社会のバランスが完全に崩壊するであろう。このような言葉があった。「百万個のゼロはゼロの集合体にすぎないが、もしその先頭に「1」を加えれば、この数字は有意義になる」。土地を失った億にものぼる農民の数は決して無視できる「ゼロの集合体」ではない。歴史は然るべきタイミングでこれらの蓄積されたゼロの前に1を加えるはずだ。

 (※)浙江省楽清市蒲岐鎮寨橋村の元村長・銭雲会さん(53)は、土地の強制収用について長年陳情し続け、3回逮捕されて懲役刑に服した。昨年12月25日、トラックの下敷きとなって死亡したが、その死については、当局が故意に仕組んだみせかけの事故との説がある。

(翻訳編集・叶子)


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