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2011年の中国経済、インフレ抑制のパラドックス

 【大紀元日本1月5日】「年内にCPIが10%まで上昇する可能性もある。このまま続くと、歴史的教訓から見ても、政権の安定に影響しかねない」。北京大学の経済学者は年明け早々、こんな警告を発した。また、社会科学院が昨年末に発表した社会情勢に関する報告書『社会青書』(2011年度版)によると、市民の物価上昇に対する受け入れ能力が低下しており、社会リスクが今後一段と高まり、政府と民衆との間で表立った衝突を引き起こす可能性もある」という専門家の分析も伝えられている。いかに物価高騰を抑え、市民の生活に対する満足度を回復させるかが2011年の当局にとっての急務となった。

 物価高騰の引き金となった過剰流動性(資金のだぶつき)とインフレを解消するために、政府は2011年からの通貨政策をこれまでの「適度に緩和」から「穏健」に転換し、温家宝首相も12月26日、中央人民ラジオ放送局のリスナーとの交流番組で来年の物価を安定させる自信があると表明した。しかし、インフレの抑制による経済成長への影響や、誤った対策から、更なるインフレを引き起こす可能性もあり、専門家は楽観視していない。

  今年のインフレは10%に迫る

2011年の上半期、インフレはさらに悪化すると専門家は見ている。北京大学国家発展研究院の黄益平教授は、経済雑誌「新世紀」の最新号で、中央銀行は年明けから厳しい通貨政策を取らなければ、インフレは上半期に10%に迫る可能性があると示唆した。

 過剰流動性や過度な貸付など、物価の押し上げ圧力を解消するためには、利息や人民元を引上げ、貸付を厳しくコントロールするなどの引き締めの通貨政策を打ち出すことが有効とされているが、過剰資金がコントロールされると同時に資本コストが上昇し、経済成長に大きな打撃を与えかねない。経済成長とインフレ抑制のパラドックスの間で、中国政府は二者択一の局面に立たされている。

 黄教授は「インフレによる政権安定への打撃は、歴史上の教訓があった」とした上で、急速な金融引き締め政策は、投資家やローンを抱える世帯に一段と厳しい状況をもたらすと懸念する。

利上げサイクルに突入

中国人民銀行(中央銀行)は2010年12月25日、定期預金の基準金利と貸出の基準金利(1年物)をそれぞれ0.25%引き上げることを発表し、昨年2度目の利上げを行った。中国人民銀行は去年金融機関の準備金率を6回も引き上げたのに対し、利上げは2回だけ。しかし、今回の利上げでアナリストの間で「中国はすでに利上げサイクルに入った」との見方が広がっており、中央銀行は今後も利上げや準備金率の引き上げを繰り返すだろうと見ている。

 中国国内では昨年12月12日に閉会した中央経済工作会議で、2011年の金融政策を「適度に緩和」から「穏健」へと引き締め方向に転換することが決定された。また、その直前に発表された11月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比5.1%と28カ月ぶりの最高値となった。

 インフレがさらに深刻化し、「実質マイナス金利」が続くと、利上げの必要性が一段と高まる。

 人件費の高騰

一方、インフレの深刻化に伴い、労働コストが高騰した。中国社会科学院の劉煜輝氏は「新世紀」最新号の掲載記事で、だぶついた資金が資本市場に流れ込んだため、土地価格、不動産価格、生活コストもそれに応じて上昇し、労働者の実際の消費力が低下したと指摘。生活維持のため、賃上げは避けられない。

 「インフレによって中国の労働者賃上げは10年早まった」と同氏は言う。しかし、昨年末の中央経済工作会議が打ち出した金融引き締め政策は、全面的におよぶものではないと見ている。

 中国政府は金融政策より財政政策を通してインフレを抑制する可能性が大いにある、と劉氏は指摘する。中国政府の2011年からの第12次5カ年計画は経済成長方式の転換を軸に行っていく方針が定められた。積極的な財政政策が柱となり、税制の調整、民間サービスの供給拡大、低所得者の支出能力の高まりと中小企業の経済発展を推進するなどの政策も含まれている。

 しかし、インフレと資本市場のバブルを先に抑制しないと、財政政策は効果を収めかねる、と劉氏は懸念している。たとえば低所得者への補助金政策は、短期的に低所得者のインフレへの忍耐力を高めることができると同時に、インフレを加速させかねない。

(翻訳編集・張俊徳)


 (11/01/05 09:47)  





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