THE EPOCH TIMES

上がる国内人件費 中国企業、ベトナムで低賃金労働力探す

2011年07月13日 07時44分
 【大紀元日本7月13日】「経済成長著しい中国では、安い賃金と引き換えに工場であくせく働いていたブルーカラーの時代が、もはや過去になろうとしている」。フランス語圏のスイス日刊紙「ル・タン」は、かつて田んぼの広がっていたベトナムの地方都市が、中国資本によって変化していく様をレポートしている。

 近年、実質GDP成長率が6ポイント前後で推移する東南アジアの新興国ベトナム。2011年初めから4月末までのベトナム・中国間の輸出総額は、前年同期比36.2%増の18億6500万ドルに達し、うちベトナムの中国向け輸出額は同2倍増の7億8100万ドルとなった。中国国内での製造費が高まる中、中国企業は低賃金労働力を求めてベトナムでの経済活動を活発化させている。以下は同記事の抄訳。

 ベトナム北部のモンカイ市と中国南部の江西省南寧を結ぶ、全長約150キロの荒れた道路。ベトナムから来る大型トラックに山ほど積まれた衣類や靴、ゴム製の靴底は、中国南部の広東省や、近隣の都市へ売られていく。中国人ビジネスマンの張さんは両国国境近くでこう述べた。「中国では人件費がますます高くなっているから、ベトナムではすべてが安いと感じる」

 中国では近年、ブルーカラー労働者と管理側のトラブルが目立ってきている。昨年は、深センや北京、広州にある外資系企業の工場で、労働条件に反発する工員による大規模ストライキが発生した。

 それでも「労使現場の状況は改善した」と、中国の労働者の人権を監視する米国非営利団体「中国労使監督(China Labor Watch)」の創設者・李強氏は説明する。李氏によると、2010年度は85%ものブルーカラー労働者の賃金が上がったという。

 2010年度の工場労働者の平均月収は約1万1130円で、昨年比で21%上昇した。「ストライキなどの労働者の行動が大きな変化をもたらしたと言える」と李氏は見ているが、「これに見合う労働条件とは言い難い」と加えた。

 工業地帯にかわるベトナムの田んぼ

 現在、多くの世界的企業や中国企業は、より安い人件費を求めて、東南アジア、特にベトナムに顔を向けている。ベトナムの工業地帯での最低賃金は、1カ月約6800円にも満たない。

 ベトナムの首都ハノイから北に40キロ行くと、バクニンという省がある。数年前までは田んぼが広がっていたこの地域は今、多国籍企業と地元の下請け企業の手により、工業化が進んでいる。

 バクニン省を主要な生産拠点とする電気機器メーカー、サムスンは9600人もの工員を抱えている。カメラ製造メーカー、キャノンは8500人、フォックスコンは5600人の労働者をここで雇用している。

 「ベトナムは、他国と競合できるダイナミックな国になった」と、フォックスコン台湾本社のメディア・コンサルタントは言う。2000年以降、ベトナムは急速な産業成長を遂げてきた。近年、実質GDP成長率は6ポイント前後を推移している。最近は多くの中国企業がバクニン省やベトナム最大の経済地域・ホーチミン市に生産拠点を移しているが、正確な数を知ることは不可能だ。

 しかし、確実なことが一つある。約30年前の中越戦争以来、長らく休止状態にあったベトナムと中国との貿易取引が、最近、急速に動き始めている。2011年1月、中国系企業がハノイ拠点の2つの大型プロジェクトに投資した。その額は数億円とも言われ、ベトナム市場でも有数の投資とされている。

 2010年度のベトナムの貿易赤字は約1.03兆円であったが、同年に施行された中国ASEAN(東南アジア諸国連合)自由貿易協定に期待するベトナムは、6月までの12カ月間に、対中国輸出を前年度比で49%も増加させた。

 小・中規模のベトナムの企業は、この「中国ブーム」に心を惹かれている。カロン川を挟んでモンカイ市のわずか100メートル先に位置する中国の都市・東興市に先日、ASEAN最大の越境マーケットが完成した。総面積52ヘクタール、230億円かけて建設されたマーケットは、中国の企業や商人がベトナムで安価で生産できるあらゆる製品を売買することができるという。

 中国企業は、ベトナムの市場でますます強い足場を得ている。国営の公共事業建設会社・中国建築工程総公司(CSGEC)は、モンカイで巨大コンビナートを建設している。広東など他の都市から来る中国企業も、自身のオフィスをそこに構える予定だという。

 ここでは、インフレ抑制のため大幅な通貨切り下げが図られ、不安定要素を含むベトナム通貨ドンの替わりに、中国人民元が使われている。電子製品から生活用品、鋼、石油製品など主要な供給を揃えるベトナムは、中国にとって最高の生産拠点といえる。

 続く反中デモ 黙認しなくなったベトナム政府 対中印象の変化

 一方、地元モンカイの輸出入監督局は、拡大する中国の勢力範囲内に自国がますます入り込んでいることに懸念を示している。ベトナム紙「ベトナムデイリー」が最近、「われわれの地元地域のマーケットにさえ、メイドインチャイナが溢れている」と、国産製品の生産減少の危機を報じている。

 経済評論家、伊藤洋一氏は日経BPに投稿した記事で、ベトナムは「政治的・軍事的には大成功した国のシステムゆえに、それが替え難く残っており、政府の経済運営に素人っぽい危なっかしさが抜けない」「長老たちはおそらく市場経済を分かっていない」と指摘する。

 この事実を受けてか、当局は現在、ワインなど1万5000種類の特定の製品の輸入を停止させる貿易関連法案を審議している。ベトナム政府は今年に入ってようやく、国民にベトナム製の製品を買うよう奨励する運動をスタートした。

 中国がベトナム船の資源探査活動に対する妨害を行ったことをきっかけに、ハノイ、ホーチミンなど主要都市では学生らが多く参加する反中デモが、6月初旬から6週間続いている。ベトナムのタイン国防相は妨害事件について、「中国は毎回、『平和的解決の重要性』を口にするものの、実行が伴わない」と厳しく指摘していた。ベトナム政府、そして若者の間で、「メイドインチャイナ」の印象に確実な変化が起きている。

(翻訳編集・佐渡道世)


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