THE EPOCH TIMES

米紙「中国ストーリーは負の面に転じる」 経済刺激策にも懸念

2011年12月15日 09時10分
 【大紀元日本12月15日】欧州危機をはじめ、国内外の経済に暗雲が立ち込める中、中国指導部は12日から3日間の日程で中央経済工作会議を開催した。会議では来年も「積極的な」財政政策と「穏健な」金融政策を維持する政策運営方針を決定したが、海外アナリストの間では、中国経済は来年「負の面に転じる」と悲観視している。

 基本指針である「穏健」と「積極」について工作会議は具体的な説明はしてないが、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国指導部は経済成長を刺激する用意ができたと見ている。空前な挑戦に直面する中国は、今後の政策の軸足は「インフレ抑制」から「成長確保」に調整されるという。

 「1つの4兆元で十分」

 「成長確保」のために刺激策を講じるのは今回が初めてではない。2008年の世界金融危機の際にも中国政府は刺激策を押し進んだが、それが後にインフレと不動産バブルの襲来につながった。そればかりか、中国の経済構造をも歪めたと中央財経大学の中国銀行業研究センターの郭田勇主任は指摘する。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)も12日、「1つの4兆元で十分」との評論を掲載。2008年に中国が打ち出した4兆元(1元は約12円)の景気刺激計画が3つの弊害をもたらしたと分析する。

 その1つは深刻なインフレの発端となったことだ。インフレの本質は政府が個人の財産を略奪する合法的な手段であるとFTは主張。インフレの進行によって、家庭や民間が保有する貨幣の価値が実質的に目減りし、さらに低金利に加え、中国の銀行に預けたお金は実質、毎年1兆元を超える「インフレ税」を支払っている計算になる。

 もう1つの弊害は「国進民退(国有企業が進み、民営企業が退く)」という現象をもたらしたこと。4兆元の景気刺激策のほとんどが国有企業に行き着き、民間企業は資金繰りに窮した。民間の競争力は資金調達力の欠如で奪われた。

 3つ目は、地方政府の投資ブームを起こしたことが挙げられている。各地の地方政府は「地方融資プラットフォーム会社」を設立し、ここを窓口にして、国有銀行から巨額な資金を借り入れ、不動産やインフラ建設への投資を展開した。「中央政府の計画は4兆元だが、それが地方政府のいくつもの『4兆元』の起爆剤となり、投資大躍進を引き起こした」と評論は指摘した。

 この地方政府債務のデフォルト(債務不履行)リスクが高まっている。当局が発表した2010年末時点での地方政府の債務残高は10.7兆元に上り、GDPの26.9%に相当している。一方、スタンダードチャータード銀行の中国経済専門家のスティーブン・グリーン氏は6月30日に発表した報告で、中国政府全体の負債残高はGDPの71%に達していると予測した。

 中山大学嶺南学院の林江・財政税務学科主任は、中国の地方政府財務の規模は米国のサブプライムローンに匹敵すると指摘。その中、すでに返還不能の不良債権は3割に上る可能性があるという。

 「中国ストーリーは負の面に転じる」

 かつて投資家らを興奮させた中国ストーリーは今、負の面に転じている。通貨ヘッジファンドのための調査・顧問会社JWパートナーズのルカ・アベリーニ氏は「(中国投資の)利潤見込みが大きく変動している。市場はポジティブからネガティブに変わった」と話す。

 WSJも10日、世界中のヘッジファンド運営会社は中国経済の衰退を見込んでおり、中国に原材料や他の商品を輸出しているオーストラリアやブラジル、韓国などの通貨安をも予測している、と報じた。

 2億ドルのファンドを運営するジョージ・パパマーカキス氏(ロンドン)によれば、中国不動産業の低迷により鉄筋需要が低下し、オーストラリアの鉄鉱石への需要も下がっている。中国はオーストラリア最大の貿易パートナーであり、中国経済の鈍化は豪ドル安をもたらしたという。パパマーカキス氏は、10月に空売りした時に豪ドルはすでに年初から10%下がっていたと話す。

 WSJはニューヨークにあるヘッジファンド運営者の話として、「中国にいま問題が起きている」とし、預金準備率の引き下げなどの金融緩和策は「ある種の恐慌のシグナル」であるとの見方を伝えた。

 FTの評論ではさらに中国の「もっとも暗黒な時期はまだこれからだ」と悲観視する。投資、輸出、消費は中国経済を牽引するトロイカ(3頭立て馬車)であるが、そのうちの消費はそもそも好調ではなく、輸出もこのほど息切れし、残りの投資のみが突き進むとなれば、ますます経済構造が歪み、深刻な危機を引き寄せるという。

 中国経済への悲観的な観測から、世界最大の投資ファンド運用会社ブラックストーン・グループは9月に、保有する中国上海のショッピングモール「チャンネル1」の95%の株式を売却した。10月には、10数人の米国投資家は上海で保有するホテルの70余室を約1.26億元で売り払った(第一財経日報)。11月、米バンク・オブ・アメリカは保有する中国建設銀行株の大半を売却する方針を明らかにした。同行は8月に中国建設銀行の株式保有を半分に縮小したばかりだ。同じ11月に、ゴールドマン・サックスは中国工商銀行の24億株を120億香港ドルで売却している。

 中央経済工作会議において経済成長の確保を唱える中国だが、「成長の確保は経済構造の調整を遅らせる。経済構造の調整が遅れると危機に陥る可能性が高くなる」と8日付の国内メディア・財経網も危機感をにじませた。

 (翻訳編集・張凛音)
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