モンゴル相撲「ブフ(力士)」

2006年06月16日 19時37分
 【大紀元日本6月16日】モンゴル相撲界から抜擢されて初陣の旋風を巻き起こした旭鷲山(初土俵平成4年)は、モンゴル相撲で鍛えた投げ技のレパートリーを日本の相撲界に披露し、あっ!といわせました。日本の決まり手にはない技も次々に飛び出し、技の軽業師として脚光を浴びました。平成13年には昭和35年以来、40年ぶりに決まり手の見直しが行われ、新たに12の決まり手が追加されたのです。

 2500年もの歴史を持つモンゴル相撲は、日本の相撲のルーツといわれています。日本の相撲では、見合って「はっきょい!のこった」の掛け声が丸い土俵に響きます。足を大きく振り上げて四股を踏み、大地の神々を請来して力士の体に栄光の加護を呼び込みます。突っ張りや打っちゃりなど土俵があるからこその妙技が繰り広げられ、日本の土俵ファンを沸かせてきました。そして日本の土俵には特筆すべきオマケの精神(徳俵)があり、土俵の瀬戸際と間合いの日本的なメンタリティーを見事に組み込んでいます。

 しかし草原の大地で行われるモンゴル相撲には土俵がありません。モンゴル国のブフ(相撲)では手のひらがついても負けにはなりません。膝や肘や頭や背中などが大地に触れると勝敗が決まります。いわゆる土がつく(大地の神に祝福される)と負けになります。レスリングと柔道をミックスしたような投げ技や足技、足と手を器用に駆使した技が決まる一瞬にヤンヤの喝采が上がります。土俵がありませんから、寄り切りや押し出しなどの決まり手がない分、600種類といわれる多彩な投げ技が編み出されました。なかなか決着がつかず持久戦(3~4時間)になることもあり、水入りは馬乳酒(アルコール度数の低い健康飲料)で体力を補給することも……。

 モンゴルの大小の祭りに、国技としての相撲は絶対欠かせません。トーナメント形式の対戦相手が決まると、それぞれの選手にザソール(セコンドでもある行司)が一人ついて、ツォル(選手を称える謡)が朗々と吟じられ、それに合わせて大鷹が羽ばたき降り立つ舞が選手によって演じられます。この時に胸にはライオンをイメージして舞うのです。いわば空飛ぶライオン?の力を身にまとった聖なる力士として戦う準備が整えられます。日本のお相撲さんがシコ名で身に着ける「海や龍や嵐」など神々しい威力と同じなのかも知れません。

 
日本で活躍するモンゴル出身力士のポスター(写真提供=駐台北ウランバートル貿易経済代表処)

ともあれ、習わしも稽古(すり足、鉄砲、股割り)のやり方もまるで違い、モンゴル相撲にはない仕切りからのぶつかり合いや、押し相撲の突っ張りや土俵際の打っちゃりの技をモンゴルのブフ達が嫌がらずにしっかり身に着けて、そこにモンゴル相撲本来の技の多彩さをミックスし、日本の相撲界に新たな醍醐味と活況をもたらしつつあるといえるでしょう。横綱・朝青龍は、ウルフ(狼)といわれた名横綱・千代の富士の相撲を換骨奪胎し、蒼き狼(英雄チンギス・ハーン)と千代よろずの神のチカラを合体させ、独自の横綱相撲を日本の土俵界に確立した最初のモンゴル力士です。そして俄かに輝かしく台頭してきた大関・白鵬は、かつての大横綱・大鵬の姿を彷彿とさせながら、そこに白虎のチカラを合体させた横綱相撲を確立する資質の片鱗を、今回の初優勝で見事に示しました。朝青龍と白鵬がともに競い合い対峙する、龍虎ならぬ<龍鵬>相打つ時代が日本の大相撲界を牽引して行くかも知れません。

(ヤポンバヤル)


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