高市早苗総理は12月16日、自身のXアカウントにおいて、総合経済対策の裏付けとなる令和7年度補正予算が参議院で可決・成立したことを報告した。高市総理は、予算成立に向け尽力した自民党と日本維新の会の議員、さらに賛成票を投じた国民民主党と公明党をはじめとする議員に対し、心から感謝の意を表明している。
コロナ禍後最大規模の経済対策
今回成立した2025年度補正予算は、一般会計の総額が18兆3034億円に上る大規模なものであり、24年度補正予算と比べると31%増加し、新型コロナウイルス禍後で最大規模となった。
高市総理が投稿で示したように、予算の柱は「生活の安全保障・物価高への対応」「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」「防衛力と外交力の強化」の3本だ。
物価高対策には8.9兆円が充てられ、最優先の課題とされた。今回の補正予算では、夫婦と子供2人の4人家族の場合、標準的に年間8万円を超える支援額となることが見込まれている。具体的には、26年1〜3月の電気・ガス料金の補助に5296億円を充当し、一般的な家庭では合計7000円程度の負担軽減となる見込みだ。また、地方自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」に2兆円を計上し、このうち食料品の価格高騰への対策として、おこめ券や電子クーポン券の配布に4000億円が組み込まれている。さらに、医療機関・介護施設等の経営基盤強化や処遇改善、中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備に対しても大胆な措置が講じられた。
危機管理投資と成長投資には6.4兆円が投じられ、造船業の再生・強化、宇宙戦略基金、人工知能(AI)研究開発などにそれぞれ1000億〜2000億円規模が振り向けられた。
また、防衛力強化には1.1兆円が積まれ、当初予算と合わせた25年度の防衛費はおよそ11兆円となる。政府は27年度に国内総生産(GDP)比で2%という目標を2年前倒しで達成することを目指している。
政治的な攻防と賛成の動き
この予算は、与党と国民民主党、公明党などの賛成多数で可決、成立した。政府・与党は、国民民主党や公明党の賛成を得るため、両党が求めた予算を取り込んだ。
自民党との連立を離脱し野党となった公明党は、経済対策に子ども1人あたり2万円の給付金が入ったことなどを理由に予算に賛成した。国民民主党はガソリン税の旧暫定税率の廃止などを評価し、同党が求めた自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の特別会計への借入金返還も予算に含まれた。
一方、野党第1党の立憲民主党は、防衛費や基金の増額は差し迫って必要な支出に当たらないと主張した。同党は減額を求める組み替え動議を公明党と共同提出したが、衆院予算委員会で否決されている。
また、米国の関税措置への対応として4023億円が割り振られたことも注目すべき点である。これは、日米両政府が合意した、日本から米国への5500億ドル(約80兆円)の投資を促すための金融機関の財政基盤強化に充当される。
さらに、自然災害やクマ被害の拡大などに備える予備費として7098億円が確保されている。
今後の予測と政府の姿勢
高市総理はXの投稿で、こうした施策の効果を一日も早く国民が実感できるよう、迅速な執行に努めていくことを明言している。巨額の補正予算が成立したことで、政府は公約した物価高対策や賃上げ環境整備を急ぎ、早期の経済効果発現を目指すことになる。
この大規模な経済対策の執行が迅速に進めば、平均的な家庭での物価高による負担軽減や、中小企業での賃上げ促進など、国民生活の安全保障を強化する効果が期待される。また、危機管理や成長分野への投資(AIや宇宙戦略など)は、日本の長期的な経済構造の強化に寄与すると見られている。
今後の焦点は、政策が現場レベルでいかにスムーズに実行され、国民にその恩恵が届くかという「執行力」にかかっていると言える。予算規模の巨大さゆえに、その効果が広範に及ぶ一方で、税金の使い道に対する野党からの継続的なチェックも続くことが予測される。
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